表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/36

プロローグ

 王都の最高級宿屋の一室。Aランクパーティ『深紅のグリフォン』のリーダー、マルスは祝杯のワイングラスを傾けていた。来月に迫った王城での叙勲式典。長年の夢だった貴族の地位がもうすぐ手の届くところにある。


 魔術師のエララが不機嫌そうに吐き捨てた。


「……本当にあの荷物持ちまで連れていくのか? 叙勲前の最後の稼ぎとはいえ、足手まといなだけだろう」


 マルスは口元に冷たい笑みを浮かべた。


「だからこそだ、エララ。我々が貴族になるという晴れの舞台に、『ハズレスキル持ち』の薄汚い荷物持ちの席などない。彼には我々の輝かしい経歴の最後を飾る『礎』になってもらう」


 盗賊のカインが影の中から静かに問う。


「……『事故』の準備は?」

「ああ、抜かりない。あのダンジョンは落盤も多い。適当な場所で『不運な事故』が起きるだろう。彼が背負うリュックの宝さえ回収できれば、我々の最後の稼ぎとしても申し分ない」


 神官のセラフィナが祈るように目を伏せて呟いた。


「彼の魂に神の御慈悲があらんことを……」

「慈悲か。それも我々が英雄であり続けるために必要な小道具だな」


 マルスはワインを一気に飲み干した。

 明日、彼らの最後の「仕事」が始まる。邪魔なお荷物を処分し、完璧な英雄として新しい人生を始めるための簡単な仕事が。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ