表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
、ゲームへ  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
8/32

「家族として」

「久しぶり、ハル·····」

「久しぶり、裕太」

ハルは雪の恩人·····というかもう一つの人格だ。冷静で冷たい様に見えて、優しい。それがハルだ。ストレートの髪をひとつ結びにするとハルになるらしい。


会えて良かった。これで皆、安心できる。帰ろう。

「なんでハル?いやそれより帰ろ。みん·····」

そう言っているとき、ハルの赤くなった腹が見えた。

ナイフが、深く突き刺さっていた。


非現実的なそれは、何度見ても、それは深く深く刺さっていた。急いでハルに駆け寄り座らせた。

僕は、心がぐちゃぐちゃになって、発狂しそうになった。


そんな頭をなんとか整理してた。

「大丈夫?えっと·····そうや、救急車!」

僕がスマホを持ち、電話をかけようとした。

「だめ。私はもう助からないし、生きてもいない。だからこれでいいの」

ハルがよくわからないことを言い、僕の手を押さえた。

「どういうこと?そんなことより血が·····血がめっちゃ出てっ」


ハルが僕を抱きしめた。何やってんだと慌てたが、何故だか身体から力が抜けた。暖かくて、優しくて、安心する。

大丈夫、大丈夫と囁きながら、優しく、でも強く抱きしめてくれた。


「落ち着いた?ひどい顔してたよ」

そこでようやく気づいた。顔が不安で歪んでいたこと、身体が震えていたことに。僕は、もう大丈夫と答えた。


「それじゃあ私の話を聞いて。これから話すことを皆に伝えて」

真剣な顔でハルは言った。

「わかった」

そこから聞いた話はあまりにも非現実的だった。

まず、兄ちゃんが参加させられているゲームのこと、コピー人間がいる事、黒い人型はコピー人間の元となる物。本物の雪は病院の地下にいること。


そしてハルはコピー人間だと言うこと。でもハルはボスの支配が効かず、雪のために戦っていること。

信じるのは簡単だった。だってこの目で見たから·····。

僕はそれを皆にメールで送った。


「送っ·····てくれた?ゴホッ·····もう、そろそろ限界·····」

弱った声でハルは言った。僕は何かできないかと、考えて考えて考えて·····。結局何も思いつかなかった。何もできない。只々、無力さを感じるだけだった。


「ゆ、うた、また酷い·····か、おしてる。大丈夫。雪は生きてる。私は·····さ、偽物やから」

「でも、偽物でも大切な家族や。やから最後にできることがあったら何でもする」

僕はそう言うことしか出来なかった。


「じゃあ·····そばにっ、いて·····ほしい」

苦痛に歪んだ顔に笑顔を精一杯つくってハルは言った。

「うん、分かった」

僕は泣くのを我慢して、ハルを抱きしめた。

「ありがとう·····。だい·····す·····き」

ハルは僕を抱きかえしてくれた。最初より力が弱い。それは死が近いことを意味していた。僕はまた守れなかったと酷く悔やんだ。


ハルの息はどんどん静かになり、抱いていた腕の力がどんどん抜けていった。

でもそんな身体を動かして僕の方に顔を向けた。

「ハル?どうし·····」

ハルは僕にキスをした。少し冷たい、でも暖かい唇が僕の唇にあたる。


そして、事切れたように、バタッと倒れて灰になった。

最後の顔は多分一生忘れない。

嬉しそうで、切ない顔をした、そんな笑顔だった。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ