「家族として」
「久しぶり、ハル·····」
「久しぶり、裕太」
ハルは雪の恩人·····というかもう一つの人格だ。冷静で冷たい様に見えて、優しい。それがハルだ。ストレートの髪をひとつ結びにするとハルになるらしい。
会えて良かった。これで皆、安心できる。帰ろう。
「なんでハル?いやそれより帰ろ。みん·····」
そう言っているとき、ハルの赤くなった腹が見えた。
ナイフが、深く突き刺さっていた。
非現実的なそれは、何度見ても、それは深く深く刺さっていた。急いでハルに駆け寄り座らせた。
僕は、心がぐちゃぐちゃになって、発狂しそうになった。
そんな頭をなんとか整理してた。
「大丈夫?えっと·····そうや、救急車!」
僕がスマホを持ち、電話をかけようとした。
「だめ。私はもう助からないし、生きてもいない。だからこれでいいの」
ハルがよくわからないことを言い、僕の手を押さえた。
「どういうこと?そんなことより血が·····血がめっちゃ出てっ」
ハルが僕を抱きしめた。何やってんだと慌てたが、何故だか身体から力が抜けた。暖かくて、優しくて、安心する。
大丈夫、大丈夫と囁きながら、優しく、でも強く抱きしめてくれた。
「落ち着いた?ひどい顔してたよ」
そこでようやく気づいた。顔が不安で歪んでいたこと、身体が震えていたことに。僕は、もう大丈夫と答えた。
「それじゃあ私の話を聞いて。これから話すことを皆に伝えて」
真剣な顔でハルは言った。
「わかった」
そこから聞いた話はあまりにも非現実的だった。
まず、兄ちゃんが参加させられているゲームのこと、コピー人間がいる事、黒い人型はコピー人間の元となる物。本物の雪は病院の地下にいること。
そしてハルはコピー人間だと言うこと。でもハルはボスの支配が効かず、雪のために戦っていること。
信じるのは簡単だった。だってこの目で見たから·····。
僕はそれを皆にメールで送った。
「送っ·····てくれた?ゴホッ·····もう、そろそろ限界·····」
弱った声でハルは言った。僕は何かできないかと、考えて考えて考えて·····。結局何も思いつかなかった。何もできない。只々、無力さを感じるだけだった。
「ゆ、うた、また酷い·····か、おしてる。大丈夫。雪は生きてる。私は·····さ、偽物やから」
「でも、偽物でも大切な家族や。やから最後にできることがあったら何でもする」
僕はそう言うことしか出来なかった。
「じゃあ·····そばにっ、いて·····ほしい」
苦痛に歪んだ顔に笑顔を精一杯つくってハルは言った。
「うん、分かった」
僕は泣くのを我慢して、ハルを抱きしめた。
「ありがとう·····。だい·····す·····き」
ハルは僕を抱きかえしてくれた。最初より力が弱い。それは死が近いことを意味していた。僕はまた守れなかったと酷く悔やんだ。
ハルの息はどんどん静かになり、抱いていた腕の力がどんどん抜けていった。
でもそんな身体を動かして僕の方に顔を向けた。
「ハル?どうし·····」
ハルは僕にキスをした。少し冷たい、でも暖かい唇が僕の唇にあたる。
そして、事切れたように、バタッと倒れて灰になった。
最後の顔は多分一生忘れない。
嬉しそうで、切ない顔をした、そんな笑顔だった。
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