「ハルの訪れ」
僕は病院をぬけて走ってあそこに向かった。雪が居なくなるのは初めてじゃない。1人になりたいからと居なくなることがよくあるからそこまで心配はしてない。でも咲ねぇと兄ちゃんは、毎回死にそうなくらい必死に探している。
1人になりたいって気持ちもわかるから、毎回ゆっくりまゆねぇと探しているんだけど、今日はなんか変な感じがする。咲ねぇも兄ちゃんも凄い剣幕で探し回っている·····。だから今日は出来るだけ早くみつけないと·····。でも僕が行くあそこには居てほしくない。
あそこは兄ちゃんと雪の実の両親と暮らしいでいた家だ。
2人は両親から虐待を受けていた。小学生のときの兄ちゃんと雪はいつも死んだ顔をして、痣だらけで、それはもう酷い有り様だった。でも突然、母親が死んで、父親は病院送りになったらしい。それで家に雪と兄ちゃんがきた。でも雪は精神を病んでしまって病院にいる。
そんなクソみたいな思い出がある家だ。
僕は息が荒れて、喉が血の味がするくらい必死に走った。家が見えてきた。でも薄っすらでみえるくらいだ。どんどん近づいていくと人影が見えてきた。2人?の人影が見えた。もしかしたら雪がいて近所の人が話しかけているのかもしれない。そう思い少し期待した。
「ドンっ」
ホッとしているのもつかの間、横からきた人にぶつかってしまった。
「いてて、すみません。大丈夫ですか?」
僕はその人が大丈夫か見た·····。
そこにいたのは、黒い人型のなにか。あまりにも非現実すぎて理解が追いつかなかった。
「え?な、なにこれ?」
黒くて大人くらいの大きさで、服を着てて、目も口もなくて·····ナイフを持っている。
その黒い人型の何かはナイフを僕に振り下ろしてきた。
「うわっ」
それを間一髪で避けた。やばいやばい、逃げないと。
「あれ?あ、足が·····」
僕は恐怖で動けなくなっていた。
黒い何かはまた僕にナイフを振り下ろそうとしてきた。その腕を大きく振りかぶらせ、僕に突き刺そうとしている。ここで死ぬ。そう覚悟したとき声が聞こえた。
「あれ?裕太くん?」
その声は近所のおばさんだった。
人が来たと安心したが、それは簡単に消え失せてしまう。
黒い人型がおばさんの方に歩いていった。
「お·····おば·····さん····げて。逃げて!」
僕は大声で叫んだ。でもおばさんはなかなか逃げない。なんなら、いたずらは駄目だと注意し始めた。
でもそんななものは当然無駄だった。
「ちょっと聞いてます?やからそのナイフをすて·····」
振り下ろされたナイフが首に深く刺さった。おばさんは必死に首に刺さったナイフを抜こうとしている。ナイフを握った手が切れるのもお構い無しに。呼吸するたびにゴボゴボッと音をたてている。でも黒い人型はナイフを押し込みグリグリと捻じっている。グチュグチュと音が鳴るたびにおばさんの声にならない変な悲鳴が響く。
だんだんおばさんの力が抜けていって最後は血まみれで動かなくなった。
赤黒い人型がこっちに向かって歩いてくる。僕は這って逃げる。できるだけ遠くへ、遠くに、遠くに、遠くに遠くに遠くに遠くに。
僕は足を掴まれた。
「あっ、うわぁぁぁぁぁやめろぉぉぉぉ」
振りかぶったナイフが僕に向かってきている。僕はこれで死ぬだろう。ごめん、みんな、雪。
でも僕は死ななかった。
「ドンッ!」
誰かがそれを蹴り飛ばした。
「裕太、大丈夫?もう安心して。私がいるから」
そこには雪がいた。その雪は神様、いや救世主そのものだ。
でもその雪はいつもはストレートの髪がひとつ結びになっていたり、静かだけど力強い声だったり·····。もしかして·····
「うん、大丈夫·····。ありがとう、ハル」
そう答えるとハルはにこっと笑い、黒い人型に向かって行った。
「ハル、危ない!逃げろ!」
僕が叫んでもハルは歩みを止めない。
「大丈夫勝てるから」
そう言ってハルは振り下ろされたナイフを上手くさばいて奪い、それを頭に突き刺した。
「ね、勝ったでしょ?」
そう言ってハルはにこっと笑った。
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