「ぶっ殺してやる」
病院
思ったより早く病院につけた。とりあえず私は受付に行こう。
「大丈夫?とりあえずお姉ちゃんは受け付け行くから」
「う·····うん」
受け付けには雪ちゃんを担当してくれている百合さんがいた。
「雪ちゃん朝から居なくて·····今院内を捜索中です。どこか、雪ちゃんが行きそうな場所とかありますか?」
「雪が行きそうな場所にはもう翔と真弓がいったから…そこは心配せんくっても大丈夫です。とにかく探しましょう」
私達は手分けして探すことにした。中庭、屋上、雪の友達の病室。隅々まで探し回った。それでも雪ちゃんは見つからない。
手がかりすら見つからない。なんで?どこにいったの?頭を抱えて悩んでいるとスマホが鳴った。裕太からだ。
「雪の家行ってくる」
裕太は翔と雪の実家に行くようだ。
「分かった、場所覚えてるよね?」
「うん」
もしかしたら······そこにいるかもしれない。昨日、翔に会えなかったし。でも私は、そこにいてほしくないという気持ちがあった。気分が落ち込んだり、少し不安定な時に行ったりするから。
死んだような顔をするから。
私は百合さんと合流して地下に行く事になった。
地下は関係者以外は立ち入り禁止になっているので百合さんと一緒に行動することを条件に許可してもらった。地下一階には関係者の更衣室、休憩所、二階には安置室がある、三階は物置きになっているらしい。
私達はまず地下一階を探した。
「雪ちゃん見ましたか?」
百合さんは出会ったスタッフに聞いていったが、誰も雪ちゃんを見ていなかった。部屋も探し回ったが痕跡すら見つからなかった。
地下二階に来た。
二階は静寂に包まれ、暗闇でひんやりしていた。
「あ、あの百合さん·····お化け出ませんよね?」
「大丈夫ですよ〜、一回しか見たことないので大丈夫です」
「え?」
「電気つけに行きますね〜」
私は百合さんの背中に隠れながら付いていった。
電気がつき、かなり明るくなった。
「安置室は六部屋あります。手分けして探しま·····」
「一緒に探しましょう」
一つの目の部屋にきた。
「すみません百合さん、ドア開けてください·····」
「しょうがないですね〜」
百合さんがドアを開けた。
その狭い部屋にはただ台があるだけでそれ以外は何もなかった。
「·····ここには居ませんね」
「ですね、次行きますか」
2つ目の部屋も空。3つ目も、4つ目も。
ただの台が置いてあるだけの部屋だ。雪はいなかった。
「後は下の物置き部屋だけですね」
「·····そうですね、いますよ!きっと!」
私と百合さんはエレベーターに向かった。
「そういえば、昨日雪ちゃんが変なこと言ってたんですよ」
エレベーターのボタンを押して待っていると百合さんがそんな事を言った。
「なんて言ってたんですか?」
私は食い付くように返事をした。もしかしたら、雪を見つけるヒントになるかも。
「えっと、私に誰?って聞いてきたんですよ。最近はずっと普通に過ごしてたのに急にそんなこと言って·····」
私はそれを聞いた瞬間、昨日のことを思い出した。
ドッペルゲンガーがいた事だ。声も形もそっくりの人間がいたことを。
そして私は最悪な状況を想定した。
百合さんがドッペルゲンガーかもしれないということだ。でも様子はいつも通りだし、特に気になるところはない。
それに雪は本当にコピー人間だと分かっていたのだろうか?不安定になっていただけかもしれない。
「·····」
とりあえず、私達はエレベーターに乗り込んだ。
私は百合さんの後ろ姿を睨みつけながらある質問をした。
「百合さんはドッペルゲンガーっていると思いますか?」
実際にどうか·····本人に探りを入れてみた。
「ドッペルゲンガーですか?う〜んいないと思いますよ。あぁ言うのは、大体、自分のそっくりさんだと思ってるんで!もしかして私のことドッペルゲンガーやと思いました〜?」
百合さんはこっちをみて笑いながら答えた。
「そうですよね、ドッペルゲンガーなんているわけないですよね。疑ってすみません」
百合さんは至って普通だった。いつも通りの笑顔、仕草、返答。
私の知る百合さんだった。
じゃあなんで雪ちゃんは誰?って聞いたんだろう。
エレベーターは地下3階に着いた。百合さんが明かりをつけに行き、私もそれについて行った。
大量の埃が、誰も来てないことを表していた。
私は声を張って雪ちゃんの名前を呼んだ。
「雪ちゃ〜ん、いる〜?」
百合さんも一緒に呼んでくれた。
手前は百合さんに任せて、奥へ進んでいく。廊下には沢山の段ボールが積み重なり、その上には埃が積もっていた。ドアノブにも埃は被っていて、払ってドアを開けた。いない。この部屋にも。あの部屋にも。
諦めかけていた時、ふとその部屋が目に入った。ドアノブに埃がかぶっていない部屋に。
私はドアノブに手を掛け、少しひねった。すると
「ガタッ」
と、音がなった。
「雪ちゃん?」
静かな間があいて、か弱い声が聞こえた。
「咲·····ねぇ?」
ドアを開けると部屋の隅で縮こまっている雪がいた。
私をみると雪ちゃんは泣きながら抱きついてきた。
「くうっ、ひぐっ、お姉ちゃぁぁぁん」
私は胸を撫で下ろした。見つけた。今度は、今度は間に合った。よかった、よかった、よかった。
私は雪ちゃんを抱き締め、頭を撫でた。
「もう大丈夫だよ、私がいる、一人じゃないからね」
できる限りの優しく声をかけ続けた。
数分して雪ちゃんが泣き止んだ。
「もう大丈夫?」
「うん·····」
「じゃあ戻ろっか。皆心配してるよ」
私は手を引いて戻ろうとした。
でも私の腕を引っ張って離さなかった。
「だ····だめ、な·····ハルが帰ってくるまで待たんと·····」
「え、ハル?それって·····」
「見つかりました〜?」
百合さんが叫んでいる。あっそうだ、見つかったことを伝えないと。
「みつかフゴッ!」
雪が私の口を塞いだ。そして部屋の奥に引っ張られた。
「ごめん咲ねぇ、あの人は駄目やの」
口から手が離れたので雪ちゃんになぜなのかを尋ねた。
「どうして?」
「·····あの人、人じゃない」
人じゃない?もしかしてドッペルゲンガーってこと?でも百合さんにおかしい所はなかったし、どういうこと?
「あっ、こんなところにいたんですね〜。雪ちゃん」
私はビクッとなって後ろを見た。そこには百合さんがいた。
「あ、あぁ。見つかったんですよ」
なんでだろう、目が離せない。鳥肌?百合さんに意識、神経の全てが集中している。
百合さんが目の前まで来た。震える雪ちゃんに手を伸ばしている。その手が雪に触れようとしていた。
私はいつの間にか、その手を跳ね除け、こう言っていた。
「あなた、誰ですか?」
その人は目を丸くし驚いた顔をしていた。
「はぁ、なんで気づいたんですかぁ?気づかんかったら2人とも楽に死ねてたのに」
私は困惑した。百合さんじゃない?それに死ねたのにって·····。
そして気付いた。これは昨日のドッペルゲンガーと同じ。翔に害を及ぼす敵、そして雪の敵でもある。
私は拳を構えてこう言った。
「絶対にお前だけはぶっ殺してやる」
どうもヒトです!楽しく読んでいただけたでしょうか?
誤字脱字とうありましたら報告いただけると幸いです。




