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、ゲームへ  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
34/34

処理中·····

さっきから翔たちの戦闘音が聞こえない。

あんなに甲高い音を響かせていた鉄の音も聞こえなくなった。

ここを真弓たちに任せて私は移動する。


私は本当は分かっていた。最初から知っていた。でも、自分で決めたことだし、そうじゃないと次にも繋げないと思った。


それは翔のため

私は翔のためにも、翔を見捨てた


でも、それは正解だったの?本当に?

誓ったんじゃないの?守るって?


確かに、次の翔を守る為に見捨てる必要もあったかもしれない。邪魔はしちゃいけない。

そう考えていた。


······でも違う。そんなのは正解じゃない。だって、また1人じゃない。1人で戦って、背負うんだ。私たちを守るために命をかけるんだ。


私は翔と如月の下に到着する。

白いカーペットには赤いシミがついていて、そのシミは広がっていく。

私は間に合わなかった。


嗚呼。ほら、まただ。また救えなかった。血を流して力無く横たわる翔。如月だって死なせてしまった。何度も刺された跡がある。

「翔·····如月·····」


膝から力が抜けて崩れ落ちる。

死んでいる。

その事実が私を支配する。


守るべきだったんだ、どんな形であれ1人にさせなければよかったんだ。

私なら出来たはずのいい選択があったんだ。私はそんな事も考えずに見送ってしまった。


防げたことかもしれない。防げなかったとしても、1人にさせることはなかった。

これは罪だ。命1つじゃ足りないほどの大罪だ。


罪を悔やんでいる暇はない。私は罪人。

罪人には償いが必要だ。とびきりきつい罰が必要だ。報いなければならない。


翔の傍にいたあいつが叫ぶ。

「おい、そこのクソアマ!邪魔なんだよ。私とダーリンの邪魔をするな」

その声は全身に響いた。


私は伸ばしてきた髪をナイフで切り落とす。

ごめんね、駄目なお姉ちゃんで。

虚無のような目でユルハを見る。

「ウダウダうるっさいんじゃ。ボケッ」


怒りを力に変える。

地面を割るほどの力で踏み込む。

右腕を振りかぶり、相手が防御態勢をとる。


「防御なんて弱気やな」

相手の裏をかき、拳ではなく蹴りを入れる。

勢いの乗ったいい蹴りだ。


「ガハッ!うっ·····おえぇぇぇ·····」

うずくまったところに踵落としをする。

しかし、避けられる。


「反撃ぃぃぃぃ!」

斧を前線全霊の力で振り下ろしてきた。

怒りに任せた単調な軌道だ。


その斧の刃をぶん殴って軌道を変える。

ガラ空きの顔面に1発、2発と拳を叩き込む。

そこにユルハは、苦し紛れにナイフを刺そうとする。


それを思いきり力を込めた腹で受け止める。

深々と刺さるそれは内臓まで到達した。

本来なら避けられた攻撃だ。

でも、この痛みは翔が味わった痛みだ。


自分は楽したのに、苦しまないなんて償いじゃない。身体に、心に刻み込め。そして苦しめ。

楽な復讐なんて償いじゃない。もっともっと償いらしく苦しめ。


締めに思いっきり顔を殴って、距離を取る。

そして腹に刺さったナイフを抜いた。

「馬鹿なの?ナイフ抜くなんて」

「黙れ。これでええねん」


そこからは、血に塗れた戦いだった。ユルハはタフで幾ら殴っても気絶はおろか、倒れ込みもしなかった。


私もこいつを殺すまで死ぬ気はない。互いの血と血が混ざり合っている。それほど激しい戦いをした。

切り傷も、致命傷も何度も受けた。


それでも、倒れない私にユルハは恐怖しているように見えた。

「お、お前何なんだよ!なんで死なないの?なんで立ってるの?立てるの?」

ずいぶんと簡単なことを聞いてくれる。


「そんなもん気合やろ。どんだけ攻撃させても死なんかったら地べたを這いつくばっていい理由にはならん。殺すって決めたんや」

私はここで引けない。引けば死んだも同然。罪人として、武人として、翔のためにもここで死んでたまるか。


「死んだって呪い殺してやる。それでも無理なら地獄で殺してやる。やからお前は一生殺される覚悟でいろよ」


見下しながらユルハを睨みつける。

気持ちではこいつには勝っている。戦況も五分五分。あいつも折れた骨が内臓にいくつか刺さっているはずだ。


なら、後はどこまで踏み込んで戦えるか。冷静に状況を見て、攻め続けるか。それが鍵になる。

その点、私は有利だ。今の私に後退の二文字はない。


「ユルハ。お前見るに耐えんな。ダーリン、ダーリン言ってた翔まで死なせて。何がしたいねん」


次で殺す。そのために少し息を整える。

「五月蝿い黙れぇ!私はダーリンを誰よりも愛してる。だから私がダーリンを殺すわけない!殺したのはお前らだぁぁぁ!」


会話にすらならない。というか無駄ね。

「構えろゴミ。殺したる」

互いに攻撃態勢に入る。


「ユルハぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「クソアマぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


腹から声をひねり出して、体が一気に力む。

足の筋肉がブチブチと千切れる程の踏み込みを決める。


速さは五分。後は·····威力!

「ガァァァァン!」

斧に拳が当たり、刃に亀裂がはいる。


その刃は私の腕を切り飛ばした。

そして粉々に砕け散った。

現在、両者共にガラ空きの状態。


根性が強い方が·····勝つ!

同時に動きを開始した。やる事は同じ。

武人らしく殺意を込めた拳で。

全体重を乗せた拳が互いにめり込み合う。


「バキバキッ!」

もう、頭の骨なのか手の骨なのか、折れた骨が分からないくらい殴った。


一つ一つの拳が何処かの骨を折っている。

そんな攻撃が続いた。骨も内臓もぐちゃぐちゃ。頭がクラクラして気持ち悪い。

私は血を吐いた。だが、立っている。


そしてユルハはやっと地面に倒れた。

私は·····まだ殺れる。トドメを刺しに行こうとするが、足元がよろけて倒れてしまった。

しかし関係ない。這いつくばってユルハの下に進む。


翔·····やったよ。敵は取るから。やからね、安心して。私が勝てたんや。翔やって勝てる。

やからね·····どうか1人で·····戦わんと······い·····てね·····


          処理終了


     プレイヤー「翔」の死亡を確認

       第1ステージ 2周目終了

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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