愛されて」
「貴方が見本になってくれた!私を助けて、愛を教えてくれて、恋をさせてくれた!だから、私は貴方に愛されるように、努力した!愛をちゃんと知るために、いろんな人と愛し合った。それで、ちゃんと愛を学んだの!」
俺はこいつの話が、耳を塞ぎたくなるほど聞きたくなかった。自分の言葉が一人の人生を狂わせたんだ。自分も知りもしない愛をその場しのぎで唱えて。
こいつの根源は、「初めて大切にされた」ことと「愛」を知ったことにある。そのすべてが俺の行為であり、罪だ。
「愛っていうのは、相手を自分に染めること!やりたい事を何でもしてくれる、優しい人になることなの!」
実感したこともないことを、浅はかな知識で教えたこと。それを真実のように教えてしまった。
「そのためなら、嫌なことも我慢して、愛されるようにする!そしたら相手も愛してくれる!それが相思相愛って知ったの!」
同じような境遇だった。だから、どうしても助けたかった。楽になってほしかった。幸せを願った。でも、俺があいつの人生を変えてしまった。
それほどの影響力があるとも知らずに、言葉という力を使ってしまった。
罪は俺にある。そして、罪には報いがある。
それは、懺悔して償うことだ。
だから償うよ。人生をかけて。
「また聞いてくれ、アゼル。俺の懺悔」
「だからね、ダーリン·····。私を愛し·····」
ユルハがもじもじとして、下を見る。
そこに思いっきり力んでナタを振るう。
傷口から血が噴き出すが、関係ない。
驚いたユルハだったが、すかさず防御する。
「駄目だよ!まだ、話が終わってない!」
俺はナタを捨て、腕を掴む。
奴は今、斧も振れず、身動きも取れない。
「痛っ!」
俺の力は今、万力にも及ぶほど強かったと思う。でも、不思議と身体が楽だった。心も波一つ立たず、穏やかだった。そのおかげで力みやすい。
「パンッ」
如月さんの撃った弾丸が、肩を貫通してユルハの頬を抉る。
「翔!いけぇぇぇぇぇぇ!!!」
後退したユルハに拳を放った。
抉れた頬に拳がめり込んだ。肉の感覚が強く手に残った。
まともに当たったはずだ。
ユルハは吹っ飛んでいった。そして、手をつきながらふらつく体を起こす。
如月さんが、そこに突っ込んだ。
ユルハの斧はまだ、地面を這っている。
その隙に、如月さんが刀を振り下ろそうとした。完全な隙だ。攻撃は当たる、と思った。
しかし、ユルハはボスだ。上手くはいかなかった。
ふらつく体を無理矢理動かして距離を詰め、隠し持っていたナイフで如月さんの腹を刺した。
「ま····じか」
力が抜けて倒れ込んだところに、何度もナイフを振り下ろしている。如月さんは抵抗もせず、刺されるだけだった。助けに行こうとした。
しかし、体に力が入らない。立てない。何もしていないはずなのに息が切れる。心臓の動きに怠さを感じる。
嗚呼、終わりか。
今回は結構進められたはず。次はどうしよっかなぁ。どうやったら······償える······やろ。
あー頭がまわらへん
意識が遠のいて行く。
体が楽になっていく。眠るように、瞼が重くなる。蕩けるような感覚だ。
そしたら声が聞こえたんだ。
「救ってあげるからね。愛してるよ、翔」
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