「地獄」 前
配置は思ったよりも順調に進んでいる。
1階は、咲ねえと如月さんで決まりそうだ。
咲ねえは言わずもがな、とんでもなく強い。
如月さんも強い。冷静に状況を判断して、咲ねえと息ぴったりに動いている。これは多分、2人だから取れる連携だ。
そして2階は、俺、真弓、ハルだ。2階に逃げてきた奴らを真弓がアサルトで一掃する。殺し損ねたやつらをハルと俺で殺る。
それと俺は、戦況を見つつユルハのもとに向かう。できれば如月さんと一緒にだ。
「それじゃあ待機で」
俺たちは別れて、それぞれ絶好の場所に身を潜めた。しばらくは戦いはないだろう。
今のうちにあの人に連絡をしよう。
「クロとコピーの数が減ったらユルハ探しに行くって話でしたよね?」
メールを送ってしばらくして既読がついた。
「そうやね、どうしたん?」
俺はあることを思い出していた。
それは、深夜の襲撃のことだ。あの時、俺は頬を切られた。
あの攻撃は、思い返してみたら殺気のない攻撃だった。それじゃあ、なんで攻撃したのかを考えた。もちろん逃げるためでもあるだろう。
でも、いろいろな情報を照らし合わせてみると新たなものが見えてくる。
コピーは体液を使って生まれる。それを考慮すると、俺は血という体液を奪われていたのだ。
真弓のコピーは、俺の血を取るために攻撃して逃げたんだ。そうなれば、俺のコピーはいるはずだ。それも、ユルハの近くに。
「ユルハと戦う時、多分俺のコピーがいると思います」
先ほどの推測を説明しながら目的を伝える。
「ユルハの相手をしてほしいんです。俺は俺の相手をしたいんです」
ユルハをクリアするには、ユルハと戦って実力を知る必要がある、と普通は考えるだろう。
でも、俺にはラクがいる。だから、コピーをラクに変えることができるのか·····。コミュニケーションを取ってみようと思った。
「それはラクのことが関係してる?」
「そうです」
ここでラクにできなくても次には繋げる。そのためにも。
「分かった。済んだら参戦してね」
「了解です」
これで準備は整った。
俺はスマホの電源を落とす。今は楽にしていられる。
何も考えなくていい。ゆっくりすればいい。
薄暗い部屋の天井を見上げて、俺は力無く床に座った。時間だけが過ぎていった·····。
スマホの電源をつけると、時計は4時になっていた。
······遅くないか?あまりにも遅い。
前回はもっと·····
「うわぁぁぁぁ」
突然叫び声が聞こえた。それも廃墟の外。
急いで確認すると、そこには人と思われるものが3体の巨人に追われていた。
「ハル。あれ人か?」
ハルは目を凝らす。
「黒いモヤはない·····。人だよ」
その言葉を聞き、思いきり如月さんと咲ねえの名前を叫んだ。
「如月さん!咲ねえ!」
すると、待機していたであろう咲ねえが飛び出す。
襲いかかる巨人に飛び蹴りをかまして、救出に成功する。
「ありが·····あれ?咲さん?」
「え?蒼汰くん?」
俺は顔をよく見る。
そいつは本当に蒼汰だった。一番仲の良かった友達で、とにかく素直なやつで·····。
って、今はそんな事はどうでもいい。
「翔もおる·····なんで?」
蒼汰をハルに任せて、俺たちは巨人と戦う。
複数同時に相手するのは初めてだ。かなり厄介だろう。
なら·····
「咲ねえ、好きに暴れてくれ!俺と如月さんで援護する!」
これでいい。道を切り開く!これが俺の役目だ!
咲ねえが巨人たちに突っ込む。
「うおぉぉぉぉぉぉ」
防御の上から拳を全力で振り抜く。
巨人1が蹌踉めく。
追撃をしようとするがそれを、巨人2、3が防ごうとする。そこを俺と如月さんで対応する。
「この2体相手します!如月さん、咲ねえと協力してトドメ!」
「了解!」
全員がその場の状況を理解して行動している。互いに信頼しているからこその芸当だ。
俺が2、3の相手をしていてヤバい時は、真弓の正確な射撃によって助けられる。
2は腕を切り落とすと、後退していった。
「真弓ぃぃぃ!」
腕を再生するより速く、真弓の放った弾丸が心臓を貫いた。
3は俺が至近距離で頭を弾いて、ふらついたところを真弓の射撃で殺した。
咲ねえのほうは言わずもがな、処理は完了していた。
「助かっ·····た?」
蒼汰の力ない声が聞こえる。安堵したのかと思ったのもつかの間、蒼汰は地面を殴り、暴言を吐き始めた。
俺が死ねばよかったと、なんで生きてるんだと。
「落ち着け!蒼汰、蒼汰!」
俺がなだめて、なんとか正気に戻した。
「何があった?」
俺の問いに蒼汰は何処か遠くを見つめて、虚ろに答えた。
「町が·····襲われたんだよ。バケモノに」
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