「巨人」
休憩も終わり、俺たちは展望台へと向かった。
「それじゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい。生きて帰ってくるんだぞ」
「お兄ちゃん行ってらっしゃい。·····帰ってきてね」
俺はまた歩き始めた。いつも通っていた道が今では別のものになっている。
雰囲気も空気も、景色すらも違う気がする。
今はそれが綺麗に感じられる。
死がすぐそばにあって、守らなきゃいけないものがそばにあって。今から死ぬという現実と、絶対守り切るという願望が、世界を白と黒に分けたような気がした。
「·····皆んなストップ」
如月さんが小声で言った。
耳を澄ますと音が聞こえた。
俺はその音のする方に、如月さんの制止を無視して歩いていった。
少し山道から外れた雪が赤く染まっている。
音は、その直ぐそばにある木の方から聞こえる。
俺が近づいていくと、烏が飛んでいった。
「·····死体」
額に触れるとまだ温かみを感じた。死んでそれほど経っていなそうだ。
少し周りを見ると、かなり大きい足跡を見つけた。
人の足跡だということは分かる。でも明らかに普通の人間のサイズじゃない。
如月さんもこれを見て、目が点になっていた。
「ヤバいヤツいますね」
「うん·····」
憶測だが身長は2メートル·····いや、3メートルにも届くかもしれない。
しかも足跡は展望台の方へと続いていた。
「·····行くか」
足跡を気にしながら、また歩き出した。
展望台の近くまで何事もなく、スムーズに行けた。
しかし、足跡が突然途絶えた。
足跡を消すにしてもどうやって·····
「ドサッ!」
全員が音の方に視点を合わせ、警戒した。
音の正体は·····雪だった。
多分木の積もった雪が落ちてきたのだろう。
俺は上に視線をやる。
そこにはクロがいた。それも3メートルにも届きうる大きさの。
クロは俺の前に着地して、思いっきり振り被った拳を放った。
全力で防御したが、腕を押し切られ、体がメキメキッと音を立てて吹っ飛んだ。
痛がってる暇はない。奴が走ってくる。
「いってぇぇぇ!」
震える手で銃を構えて撃った。しかし、腕で胴体を守りながら構わず走ってくる。
放たれた拳を避け、後ろにアサルトを構える真弓を発見し、射線から外れた。
それと同時に真弓が撃った。しかし奴は少し怯む程度。
「真弓、私が行く!」
そう言って咲ねえが走る。
右の拳を振り被りながら、勢い良く走る。
体重と助走の乗った拳を放つ。奴も拳を放ったが結果は見るまでもない。
相手の腕がグシャッ、と曲がった。
そこに間髪入れず、如月さんの刀が首を飛ばした。終わった、と思った。
しかし、奴はまだ動いていた。
2人は急いで距離を取っていた。
「いつものクロとは違いますね」
「首飛ばしても死なんてまじか·····」
初めての敵だ。怪力で、首を落としても死なない。
おまけに·····
「ゴリゴリッ、グチャッ」
再生しやがった。頭も腕も元通りになっている。
頭を抱えていると、咲ねえが口を切った。
「彼奴の弱点は心臓のはずや」
訳を聞いた。
「彼奴、銃弾を腕で胴体だけ守ってた。その腕が少し左よりやったから」
俺は咲ねえの言葉を信じた。咲ねえの戦闘における観察眼は半端じゃないから。
「俺と咲ねえが彼奴の隙を作ります。如月さんは心臓を狙ってください」
「了解」
ナタを持ち、戦闘準備に入る。
「真弓、ハル、俺たちは左右に走るから彼奴にぶっ放してくれ」
「了解!」
俺と咲ねえが走り出し、真弓とハルの集中砲火で奴は防御しかできないようになる。
2人の攻撃が終わり、咲ねえが殴る。
それは防御される。しかし防御が少し崩れ、甘くなる。
そこにナタを振り下ろし、腕をぶった切った。
「如月さん!」
積もった雪が舞うほど強烈な踏み込みで、如月さんが刺突を放った。
刀は貫通し、クロは力無く倒れて灰になった。
「全員怪我は?翔は大丈夫か?」
「俺は大丈夫です。ちょっと腕痛いくらいです」
「私達も大丈夫!」
どうやら、全員が無事の様だ。
よくあの強敵を倒したな、と思ったが、こいつが何体もいると悍ましいとも感じた。
少し嫌な予感がしたが、如月さんと咲ねえは落ち着いていた。
「大丈夫、もう弱点も分かったし倒せる」
「やね」
そんな2人を見て、自分が馬鹿らしくなった。
でもこいつが何体いても大丈夫だと勇気付けられもした。
俺のナタも通用する。
不安になることはない。次は殺せる。
それにいい情報をゲットできた。この調子でもっと次に繋げられるものを持ち帰ろう。
目をギラつかせながら俺たちは展望台に歩き出した。
どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。




