「覚悟」
先の戦いもあり、少し落ち着いてから、展望台に行くことにした。
「翔。ちょっといい?」
如月さんが俺を部屋に呼んだ。2人で話がしたいそうだ。
ドアを開け、互いに向かい合って、ベッドに腰を掛けた。
「翔さ、今回死ぬ気やろ?」
如月さんは突然そんなことを言った。
気づいていたんだ。予想はしてた。如月さんは感づくんじゃないかと。でも、突然言われると驚くものだ。
「よく分かりましたね」
「そりゃね。今日の予定が全く練られてなかったから。それに」
如月さんは落ち着いている。その落ち着きが、俺の死をどうでもいいと思っているわけではないと分かる。
「それで·····呼んだ理由は?」
顔色1つ変えず、俺たちは、異常な会話をしている。でも、それが今はなんの変哲もない、ありふれた会話のように口が軽かった。
「僕も君について行く」
如月さんは本当にいつも通りだった。朝の挨拶をするように普通に言った。
「それは死ぬってことですよ?」
「それでもいい。僕は翔の手助けがしたい」
俺はこの提案を断ろうとした。
だって如月さんは、俺に生きていいと、生きろ言ってくれた人だ。
俺が母親を殺して、父親を半殺しにして、赤の他人を殺して。それを知っても尚、普通に接してくれた。それどころか生きる活力をくれた。
いわば恩人だ。
「それはでき·····」
「僕は家族じゃないぞ?」
遮った言葉は自虐も甚だしいものだった。
俺は怒りを覚えた。
「何言ってるんですかっ!貴方が家族じゃないからって軽んじていい訳ないじゃないですか!?」
声色1つ変わらない声で如月さんは言った。
「君は、家族を1番に思ってるやろ。やからこそ、今回でできるだけの多くの情報を持って、次に繋げようとしてる」
確かにそうだ。でも·····それよりも、如月さんも守らないといけないんだ。
「君は今回、咲たちを死なせないよう立ち回るから、厳しい戦いになるだろう。そこで僕が手伝う」
「·····確かにそれで得る情報は増えるかもしれないです。でもやっぱり死なせる訳には行きません。有難いですけど無理です」
ここで、俺は完全に断ったつもりだった。でも如月さんは関係なかった。
「じゃあなんで最初、誤魔化さんかったんや?」
如月さんは迫るように聞いてきた。
俺はその質問に言葉が詰まる。
「僕になら知られてもいいって思ったんやろ?僕を信頼してるから言ってくれたんやろ?」
畳み掛けるような言葉に俺は口が開かなくなる。
でも、それだけが理由じゃない。如月さんの言っている通り、俺はこの人を信頼しているからこそ正直に話したんだろう。
「僕も翔と同んなじや。皆んなを守りたい。死んでほしくないねん」
俺の心は揺らぐ。
この人なら·····俺を望むところまで連れて行ってくれる。自分の命を投げ出してまで·····。
そして如月さんは笑って最後の言葉を放つ。
「それにさ·····僕は次の僕に託すから!」
俺はその言葉に思わず体の芯から震えてしまった。恐怖なんかじゃない。興奮のような武者震いに近いものだ。
だってこの人は死んだら終わる命を、なんの躊躇もなく捨てる気でいるのだ。しかも如月さんは、俺と違って次に記憶は持っていけない。
それを理解していながら、笑って言いのけたのだ。その覚悟が俺の心を動かした。
「分かりました。ご協力お願いします」
そして続けて言う。
「でも絶対死なせません。守る人の中に貴方も入ってるんですから!」
如月さんは「おう!」と返事をした。
そして互いに拳を合わせてこれからを誓った。
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