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、ゲームへ  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
24/32

「理想」

「2人とも怪我はないか?」

「はい、ありません·····」

「無傷や」

全員が教会に駆けつけた。


「お兄ちゃん!大丈夫?」

「おう、大丈夫や。どこも怪我してないから」

俺は体は元気だった。でも心はドロドロに溶けて「何か」に変形しつつあった。


「でも、アゼルも言ってた!怖い顔してる·····。あの日と同んなじ」

雪は真っすぐ俺を見た。


アゼルがさっき言っていた「昔の顔」が今も続いているのだろう。

それに今まで気づきもしなかった。


せっかく家族が、アゼルたちが、如月さんが、色んな人が普通の生き方を教えてくれたのに。

普通に笑えたときにどれだけ皆んな喜んでくれたか。


自分のことのように、家族のように·····。

でも俺はそれを無駄にしてしまった。

それがただ申し訳なかった。


「大丈夫や。お兄ちゃんは絶対帰ってくるから。昔みたいにはならんよ」

大丈夫。俺は平気だ。そうだ、平気だ。いつも通りの朝倉翔。


「ほら、そうやって平気な顔に笑顔、貼り付けてるやん!」

·····やっぱりバレるものなのか。

「そんなことないよ!な、雪」

そう言って頭を撫でようとした。


その手を払いのけ、雪は声を荒げた。

「誤魔化さんといて!お兄ちゃんはいっつも自分で背負いすぎてる!ちょっとは私たちには分けてよ!お兄ちゃんの苦しみも思いも!」


返す言葉はいくらでも思いついた。でも多分どれも結局は誤魔化す、言い訳のように言ってしまうのだろう。それなら本心を·····。

「俺さ、誰も死んでほしくないねん。やから皆んなが背負える分だけ背負わせてるつもりや」


「じゃあなんで?なんでそんな顔してるの?」

「それは覚悟や、勝つための」

殺すための。


「翔、私たちも覚悟できてる。やから背負わせて?」

「いや、この覚悟は俺だけで背負える。やから真弓たちは·····今のまま一緒に来てほしい」

皆んなが傷つかないように。


俺は今、そのままでいい。そのまま昔みたいに堕ちればいい、と堕落しようとしていた。

だってそのほうがいいだろ?


クロを殺して、コピーを殺して、ボスを殺して·····。殺して殺して殺して続けて、その先に俺たちの勝利があるんだ!そのために、皆んなの為に·····俺は堕落しよう。


俺が殺さないといけない。俺が·····俺が!

母と父と誰かにしたように·····。

俺は真っすぐ前を向いた。


「でも·····」

「やから俺は大丈夫やって!皆んなも心の中で色々背負ってるやろ?それと同んなじや。やから俺から1つ頼む」


人はそう変わらない。魂に染み付いたものは、どれだけ擦っても、洗っても落ちない。

「何?」

「俺を助けてくれ」


しばらくの沈黙の後、咲ねえが返事をくれた。

「分かった。そのかわり私が絶対翔のこと守るから」

俺はそれを分かったと答えた。


自分を偽ってこそ、俺は発揮される。守るんだよ、皆んなを。どんな手を使っても。

それが例え、家族を騙そうとも。


そうじゃないと皆んなを死なせることになる。

だって俺は今回、死に戻り前提でやっているからだ。


ユルハはきっと今、コピーを作っている。

そう仮定すると敵は増えるし、ユルハの強さも不明瞭だ。もしゲームマスターと同じくらいなら多分俺たちに勝ち目はない。


だからこの周回で、できるだけの情報を持って死んで、次に繋げる。


そんな事皆んなには言えない。止めるだろうし、全力で俺を守ろうとするだろう。

でもそれだったら、俺は今まで通り守られてばっかりだ。


皆んなが俺に協力してゲームの手助けをしてくれているみたいに、俺も皆んなが死なないようにしないといけない。


俺がどうなろうが関係ない。自分の甘さが皆んなを殺すんだ。俺は俺を殺す。そして勝利を勝ち取ってやる。


どうか、届きますように。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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