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、ゲームへ  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
22/32

「温もり」

俺と咲ねえは一睡もせず、ずっとリビングのソファに座っていた。会話はない。ただ自分の時間を過ごしている。

静かな時間が過ぎていった。

そうしていつの間にか夜が明けた。


「おはよう!おぉ、2人とも早いな」

父さんと母さんが起きてきた。

「おはよう、なんか目ぇ覚めてもてん」


ずっと起きていたなんて言ったら、心配するだろうし嘘をついた。

「そうか、まあ早起きはいいことや!今日も頑張ってこう!」

「うん」


そうして先に朝食を済ませて、また2人で、ソファに座っていた。

そんな俺たちを見かねたのか母さんが紅茶を作ってくれた。


「体、冷えるで。2人ともこれ飲んで体温めて!」

優しい声で、頭も撫でてくれた。そこで今まで張り詰めていた何かが少し緩んだ。


俺はカップを取った。カップから伝わる温もりを手のひらで感じた。

咲ねえのほうに目がいった。咲ねえもカップの温もりを感じていた。


咲ねえと目があった。俺も咲ねえも同じ様にしていた。それがなんだか安心して、2人して笑顔が溢れた。

「温かいね」

「そうやな」

今度は張り詰めた時ではない、暖かい時間が流れていった。


時間は7時。家族全員が起きてきた。雪も真弓も裕太も眠そうに朝のあいさつをしていた。3人が朝食を食べている時、父さんと母さんから出張で家を空けることを聞いた。


それを知っているので俺と雪は驚くこともなく、分かったと返事をした。

そして、俺たちもしばらく家を空けるかもしれないと言った。


「そうか、遊びに行くんか?」

父さんも驚く様子もなく、聞いてきた。

「そう、遊びに行くねん」

「分かった、遊びすぎるなよ」

父さんは顔を洗いに洗面所行った。


食器を洗い、全員が身支度をして、あっという間に時間がたった。

「それじゃあ行ってくるわ!そっちも行ってらっしゃい」

「父さんたちも行ってらっしゃい。仕事頑張って!」


そうして俺たちは如月さんと合流するために山道の入り口に向かった。

「如月さんに連絡ついてる?」

「うん、もうすぐつくって」

「はやっ」

全員、急ぎ足で合流地点に向かった。


合流地点にはもう如月さんがいた。

「待たせてすみません」

「いいよ、今来たとこやから。皆んなおはよう!」

そう言って微笑んでくれた。


「おはようございます。ほんと協力、感謝します」

俺は深々と頭を下げた。こんな命がけで、危険な事に協力させてしまう。謝罪の様なものだった。


でも如月さんは頭を上げてくれと言った。

「大事な後輩の頼みやからね、それに皆んなが困ってるなら助けたいから」


やはり如月さんは寛大だ。この人には感謝してもしきれない。

「とりあえず行こっか」


あいさつも済ませて、俺たちは教会に向かった。山道には夜に降っていた雪が積もっていた。そのおかげで足跡を確認できる。

「·····いくつか足跡ありますね」


そこからは、全員が辺りを見回しながら警戒して進んだ。しばらくして如月さんが口を開いた。

「そういえば雪ちゃんはコピーを見分けれるん?」


そうだ。雪は百合さんをコピーだと見分けれた。

「えっと、多分?なんかぼんやり黒いとこが見えるくらいやけど·····」

雪が自信なく答えるとハルが代わりに説明してくれた。


「うん、雪はコピーを見分けられる。私が雪の時、他のコピーが黒く見えたから」

なら、雪は必ず勝利の鍵になる。でも、戦場に雪をいさせるのは危険だ。


死んでしまうかもしれないし、殺すところを見せたくない。

「それじゃあ、ハルちゃんはコピーを見分けられないん?」


如月さんが鋭い質問をした。

確かにそうだ。ハルも見分けがつくかもしれない。

「どうなんや?」

ハルに問いかけた。


「·····多分見分けられる。雪ほどはっきりは、はっきりしないけど黒く見えたから」

「それでも十分すぎるわ」

2人も判別できる人がいるのは、有利どころの話じゃない。


これで戦闘に出ている間、ハルがコピーを判別。教会では雪が判別できる。これなら勝率が上がる。

·····勝てるかもしれない。口元が少し緩んだ。


「ギュッ」

山道から少し外れた場所から雪を踏む音が聞こえた。

全員がその方向を見た。

何もない、ただ裸の木があるだけ。


すると如月さんが急に後ろを向いて、持っていた刀を抜き、振り下ろした。

「裕太!無事か?」

振り返ると、クロが真っ二つになっていた。


「全員警戒しろ!来るぞ!」

するとぞろぞろとクロと人らしきものがでてきた。

「雪、あれ人か?」

念の為、確認する。

「いや·····違う。黒く見える」

「了解」


そこからは、如月さんと咲ねえがクロとコピーを蹴散らしていった。

俺は、ハルとあとの3人を守りながら戦った。

順調に戦っている。こちらが優勢だ。  


如月さんと咲ねえの安全を確認していた時、前から足音が聞こえた。

正面を向いたと同時に、パンっ、と音が聞こえた。

頬に血が滴る。


ライフルを持ったクロが立ちふさがっていた。

「横に飛んで頭下げろ!」

クロは無差別に乱射し始めた。狙いは定まっていない。


だからといって攻めればいいってもんじゃない。

どうするか考えている、

「誰か銃とかどっか落ちてない?それがあったら私、殺れるかもしれへん!」

真弓が大声で叫んだ。


「あった!そっちに投げるから受け取って!」

そう言って、如月さんがピストルを真弓に投げた。

ガチャッ、と音を立てて、真弓の前にピストルが落ちる。それを素早く取り、真弓は立ち上がって乱射するクロに向かって撃った。


弾丸は見事に命中し、クロは消えた。

そうして戦いが終わり、辺りには武器だけが残されていた。

全員、無傷での生還だ。


残された武器を選別して道の外に捨てる。

ライフルとピストルの銃器は、これからも役に立つので取っておいた。掃除を終え、周囲を警戒しつつ教会に向かった。


先ほどの襲撃から攻撃はなく、すんなりと教会に着くことができた。

教会の前にはアゼルと暁音がいて、雪かきをしていた。

「おはよう、久しぶり」

2人にあいさつをした。


「おはよ·····って翔!お久しぶりですね。皆さんもおはようございます」

暁音が元気が良すぎほどのあいさつをしてくれた。

「皆んなおはよう。今日は揃いに揃ってどうしたんだ?」

アゼルはやや困惑ぎみで聞いてきた。


「ここで裕太と雪を保護してほしい」

そう言って事情を話した。

アゼルと暁音は最初は落ち着いて話を聞いてくれた。

しかし話を進めていくと、2人を見ると大いに困惑していた。


「えっと·····つまりそのコピー人間?から裕太と雪を守ってほしい、それとゲームが終わるまでここを拠点にしたいって事か?」

「そうです」


現実味がないし、疑われても仕方ないことだ。とりあえず信憑性を増すために、ハルを呼んだ。

「この子、ハルです。雪にある人格のハルです」


2人はハルのことを知っている。だからコピー人間がいることを証明して、信じてもらうという算段だ。

「色々あったけど、俺たちの仲間になりました」


2人はもっと困惑し始めた。そしてハルに色々質問して、本当にハルなのかを確認していた。

やがて質問が終わり、本物のハルだと驚いていた。


そして2人で話し合い始めた。どうなるか祈っていたが、1分も経たない内に話し合いを終え、アゼルは分かったと言って教会に迎え入れてくれた。


俺はありがとう、とありったけの誠意を込めて深々と頭を下げた。

アゼルはそんな俺を見て、友達が困ってるなら助けることは当然だ、と言ってくれた。

その言葉を聞いて、俺はもう一度感謝を伝えた。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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