「始まり」
どうやら病院まで車を使って行くらしい。普段は歩いて行っているので、どうしてか結さんに聞いた。
「なんで車なん?」
「咲が免許取ってねぇ。翔と雪に自慢したいんやって」
「なるほど〜」
どうやら高校を卒業してすぐ免許合宿に行ったそうだ。不安しかないけど、結さんいわく事故の心配はないとのこと。
「みんな行くよ!」
咲ねえの運転する車は結さんや芳弘さんの運転する車とあまり変わらない、いい腕だった。
でも、本人は死ぬほど集中してるから、自分の運転スキルは良くないと思っているようだ。あとで良かったでと伝えてあげよ。
病院に着いて雪の病室に行った。俺はうっきうきでドアを開けた。
「ただいま、雪」
「おかえりお兄ちゃん!」
そこには、満面の笑みの妹が·····可愛すぎる!
今すぐ抱きつきたい!!!が、欲を抑える。
「雪ちゃぁぁん、久しぶりぃぃぃぃ」
咲ねえが雪に飛びついた。
雪は待っていたかのように抱き返す。
元気そうでよかった。
そこからはとにかく色々なことを話した。俺の北海道での生活や咲ねえの自慢話。雪の病院での話もし、雪の笑顔も皆んなも笑顔も見れた。
面会時間はあっという間に過ぎた。
「それじゃあ俺たちは帰るから。いい子にしてるんやで〜。ほなまた明日!」
「うん、今日は来てくれてありがとう!バイバイ·····」
雪の顔は少し寂しそうに見えた。
家に帰ってくると芳弘さんがいた。
「おぉ、翔!おかえり、会わん間にこんなおっきなってぇ〜」
「ただいま、って半年しか会ってないのに成長もクソもあるかぁ!」
この家のムードメーカーだけあって、相変わらず明るい。
「とりあえずみんな手洗ってき。今日はピザパーティーや!」
流石は芳弘さん!皆んな速攻で手を洗い、食卓についた。
「いただきます!」
こうやってみんなで食卓を囲むのも久しぶりだ。やっぱり家族と食べるご飯が一番美味しい。
すげぇ楽しい!
皆と食べるご飯、明るい顔、声、そして笑顔。
そんな場のノリに酔ったのか、それとも今まで言えなかったことを言おうと決意できたのか、俺は素直な気持ちを言った。
「俺、ほんま帰ってきてよかったわ!めっちゃ幸せ!ずっとこれが続いてほしいわぁ·····」
引き取られて初めて直接幸せだ、と言ったと思う。すると、突然結さんと芳弘さんが泣き出した。
「最初はあんなに心を開かなかったのに·····今では立派な息子になって······!」
「父さん······うれしいぞぉ!」
「母さん······うれしいわぁ!」
恥ずかしかったが、そんなふうに思ってくれていて嬉しいとも思った。だから言うなら······今だ!
「俺も母さんと父さんに育ててもらってほんまにうれしい!!!」
めっちゃくちゃ恥ずかしかったけどやっと言えた。父さん、母さんって。
そんな嬉しさと恥ずかしで、もじもじしていると、なんと咲ねえも真弓も裕太も泣き出した。
「お姉ちゃんもうれしいよぉぉぉ!」
「私もぉぉぉ!」
「俺もぉぉぉ!」
おっと、まさかこんなことになるなんて。でもなんだか安心した。俺はここにいて良いんだって、ちゃんと家族なんだって。
「あれ、な······なんか目から水が」
泣いていた。色んな感情が流れ出ていた。嬉しさや認められていたという幸福感。俺を思ってくれていること。
思えば当たり前のことだった。でもこうやって、言葉で、その笑顔で皆んながで俺を家族だと表してくれた。だから泣いたんだと思う。
「ありがとう、みんな」
今日のことは絶対に忘れない。大切な思い出だ。
ご飯も終わり、食器は片付けられ、皆各々の部屋に行って明日に備えた。
俺は今日を振り返っている内に、いつの間にか寝ていた。それはそれは、幸せに。
次の日起きると家には誰もいなかった。
連絡をしたけど、どうやら家にスマホをおいていったらしい。
父さんも母さんも咲ねえも真弓も裕太も、みんなスマホも財布も持っていかずいなくなっていた。
「散歩行ったんかな?」
真弓が毎朝散歩しているからそれについていったのだろう。
「しょうがないなぁ、飯作って待つか」
一人暮らしでスキルアップしてるから美味しいはずや!皆んなどんな反応をするだろう。喜んでくれるだろうか。俺は気合いを入れてご飯を作り、皿に盛り付けた。それはそれは豪華な朝食ができた。
俺は皆んなの帰りを待つため、ソファーに座ってテレビを見ていた。10分、30分、1時間と時間が経っていく。
帰りが遅すぎる。外を見ようと玄関に向かった。
すると·····鍵が開けっぱなしになっていた。
寝ている俺だけを置いて、開けっ放しで行くか?
嫌な予感がした。
普通は鍵を閉めていくはずだ。居てもたってもいられず皆を探しに行くことにした。朝食にラップをして、顔を洗い、着替える。
「どこから探そう······」
真弓について行っているはずたから、不規則に散歩しているはずだ。
「これは·····大変やなぁ」
そこそこ田舎だから道が入り組んでいる。とりあえず、人通りの多いところから探そう。
まずは商店街に来た。ここは昔ながらの店が多くて、皆んなとよく駄菓子を買いに来た。
「お?もしかして翔くんか?」
声をかけられた。
「おぉ!松本さんやん」
この人は生花店をやっている松本さんだ。よく母さんと父さんにここで買った花をプレゼントしていた。
「久しぶりやな、いつ帰ってきたんや?」
「昨日帰ってきました」
「そうか、元気そうでなによりやわ!」
そう言って肩をポンポン叩いてきた。本当元気な人だ。挨拶もすんだところで真弓たちのことを聞いた。
「真弓ちゃんたち?真弓ちゃんと咲ちゃんと裕太くんか?」
「それプラス父さん母さんもです」
「すまんなぁ〜、見てないわ」
どうやら通っていないようだ。
「ありがとうございます。後ガーベラください。雪にあげに行きますわ」
「そうか、みんなによろしく伝えといてな!」
花を買い、商店街を見回った後、俺は次の場所に向かった。次は黒百合公園だ。そこそこ大きくて、よく散歩コースにされているからだ。というか後ここぐらいしか目星がない。早く見つけて帰ろう。手が悴んできたし寒い。
公園に着いた。
「とりあえず1周するか」
散歩コースがあるのでそこを歩く。散歩コースの隣には森があり、よくキツネが出てくる。とても自然豊かだ。
雪がそこら中に積もっている。雪を踏む「ギュッ」という音が気持ちいい。そんなことを考えながら歩いていると森のほうから音がした。
「パキッ」
音の鳴る方をみる。そのには真弓らしき人がいた。
「真弓?」
話しかけたが返事がない。
「あの〜」
見た感じは、完全に真弓だ。
しっかり確認するために近づいていった。
そのとき、頭に衝撃が走った。
「ゴンッ」と鈍い音を立てて。
「痛ったぁぁぁぁ」
あまりの痛さにうずくまっていた。手が少し温かい·····血が出てる。
視界がぼやけて意識が遠のいていく。そこで意識が途絶えた。
「お〜い、お〜い。起きてますかぁ?」
俺は誰かに起こされた。頭が痛い。視界がぼやける。
「んん…痛ってぇ」
手を動かそうとした。でも動かない。というか足も動かない。拘束されてるみたいだ。
「どうも〜こんばんわぁ。今回ゲームマスターを勤めるハズです〜。いやぁ今回のゲームの参加、ありがとうございます!」
誰かが話しかけてきた。
何言ってるんやこいつ…てか誰や?
視界がハッキリしだす。
「ヒュッ」
間抜けな音がでた。目の前には仮面をした大柄の男が立っていた。
は?どうなってんねん······。
状況が理解できない。
確か、俺は皆を探しに行って·····急に気を失って······。
「まぁまぁそんな難しい顔せんとぉ〜。メール送りましたよね?ゲーム委員会って件名で」
ハズと名乗る男はそう言った。確かにそんなメールがきていた。でも迷惑メールだと思って大して覚えていない。
それに今は、そんなことどうでもいいぐらいヤバい状況だ。
小屋のようなところに椅子に括られ監禁されている。とりあえず冷静になって、次に自分が取るべき行動を考える。
俺は、とりあえずハズの話を聞くことにした。
「確かにそんなメールきてましたね。で、ゲームマスターが何の御用で?」
「おぉ、ちゃんと理解してますね。この状況を。やっぱり翔くんを主人公にしてよかったわぁ。で、本編のゲーム説明をしにきたんですよ。まぁ説明しますね」
ハズが言うにはこうだ。
・ルールはメールの内容と同じ
・新たなループポイントに進めばどんな怪我でも治ること
・自分と同じ記憶を持ち、同じ姿をするコピー人間がいること
・クロと言う、雑魚敵がいて、そいつの武器などを奪えること
こう説明された。現実味が無さすぎて、俺は信じられなかった。そんな顔を見たハズがこう言ってきた。
「う〜ん、ゲームのこと信じてると思ってたけどそうでもなさそうですねぇ。あっ!そうや、ちょっとでも現実味だす為にここでご家族殺しますか!」
言葉の意味が分からなかった。家族を殺す?馬鹿にもほどがある。そんなことできるわけ······。
朝から皆がいない、何処を探してもいなかった。
目撃情報もなかった·····。
「やめろ」
こいつは多分殺る。そんな気がする。絶対にさせない。俺は全力で拘束を解こうとした。
「いや〜その反応やっと気づきましたねぇ。でもねぇ······もう遅いですよ」
ねっとりした気持ち悪い声でそう言った。そしてハズは、椅子に縛られた意識のない父さん、母さん、咲ねえ、真弓、裕太を俺の前に並べた。皆んな、俺と同じように拘束されていた。
ヤバいヤバいヤバい!
俺は腕に血が滲むぐらい激しく動いた。
「それじゃあ殺しますね」
そう言ってハズは、大きな斧槍を振り上げる。
「まてまてまてま······」
そして躊躇なく振り下ろした。
「シュッ······グチョ」
一瞬すぎた。だが、理解するのにそう時間は掛からなかった。
目の前に、半分になった皆んながあった。椅子には下半身、床には上半身、大量の血、臓物。鉄のような生臭い匂いが鼻の奥にこべりつく。息が荒くなっている。俺は糸ぐらい細い声で皆の名前を呼んでいた。
「······い、お〜い。聞いてますかぁ〜〜? 流石にやりすぎたなぁ。まぁ体験版やからいっか!」
ハズが喋っていたが聞こえただけで何を言っていたかは頭に入らない。
「翔くん、これからが本番ですからねぇ!それじゃあ頑張って私を楽しませてくださいねッ」
「ゴトッ」
ハズは死体の前にガーベラを供えた。
この作品を読んでいただきありがとうございます!
エピソードの更新が不規則になるかもしれませんが、これからもよろしくおねがいします!




