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、ゲームへ  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
19/31

「儀式」

「これで手続きは終わりです。これで帰れるからね」

永遠と続いた手続きがようやく終わって、俺と雪は部屋を後にした。

「久しぶりに帰るから、ちょっと緊張してきた·····」

「大丈夫や。家族のところに帰る。それだけやろ?」

そう言うと雪は微笑み、うんと言った。


雪のことは無事に済んだ。でも咲ねえがまだ帰ってきていない。かれこれ30分はたっている。

探しに行くか?信じろって言われたし、それに雪を一人にはできない。どうする?

「コンコンコン」

そんなことを悩んでいるとドアがノックされた。


俺は警戒した。咲ねえかもしれないし、コピーかもしれない。とりあえず返事をした。そして腰のナタに手をかけて待った。

ドアが開いた。

「ごめん遅くなった!」


咲ねえだった。よかった。無事そうで何より。

それともう一人入ってきた。

「お兄ちゃん、久しぶり。それで·····雪、初めまして。私がハルだよ」

そう、ハルだった。


「ハ·····ル?」

雪は驚愕していた。だって会いたくても絶対に会えない人がいたから。

「そう、ハルだよ」

「ほんまに·····」


雪がハルの頬に触れる。

ハルはそれに応えるように微笑んだ。

自然に雪にも笑顔が表れた。


守りたい人が目の前にいる。互いが互いを大切に思うことで成り立つ。欠けてはならないが交わることのない二人が今初めて出会った。

その顔には今までの思いが溢れ出していた。


「ハルちゃんって雪ちゃんの時の記憶ってあるの?」

「う〜ん、そうやな。俺とラクみたいに記憶と感情を共有してるんじゃなくて、記憶、しかも視点だけ共有されてる感じかな?」


だからこそ、今出会ったことがどれだけ奇跡で、悲願だったのか、身に染みるほど感じ取れた。

「しばらくそっとしとこ」

「うん」


俺は二人が落ち着いた頃に話を切り出した。

「いろいろ聞きたいことあると思うけど、今は我慢してくれ。また後で話すから。やから一旦家帰ろ」

「うん!」「うん」

やっと俺たちは病院·····第一関門を突破した。


「日ぃ暮れるとやっぱ寒いな」

「そうだね〜」 

街灯に照らされた、積もった新しい雪が輝いていた。それを踏み荒らすのは憚る気さえある。

でも今はその憚る気さえ邪魔だ。守るためには、情けはいらない。守ることだけ考えればいい、それでいい。


そんなことを考えていると一つ疑問に思うことがあった。それは俺のもう一つの人格兼俺の半分のラクのことだ。感情と理性を備えたのが俺、理性だけ備えたのがラク。だから俺の半分でもある人格だ。


そしてハルという例に倣うと、俺のコピーが出てきたとしてもラクにさえ人格を変えれば仲間にできるということだ。それは大きなアドバンテージになる。


まぁ俺のコピーがいつ出てくるか分からないのがきついけど·····

「覚えといたほうがいいな」


家に到着した。

玄関を開けると父さんが出迎えてくれた。

「おかえり!翔、元気やったかぁ?雪は家に帰ってくるのはひっさしぶりなぁ!」

そう言って、頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。

「ただいま、元気やったで」

「·····ただいま!」

俺も雪も自然と笑みがこぼれた。


そうして父さんがリビングに向かった。その隙に、ハルを俺の部屋に案内した。

「すまん、ちょっと待ってて。また裕太も真弓も連れてくる」

「うん、楽しんできて」

「おう」


「改めて、翔と雪!おかえり!」

みんなの歓迎を受けて夕食を食べた。

向こうでの思い出話、そして雪も思い出話をしてくれた。平和な時間が過ぎていく。

ここで俺は一種の儀式だろうか?二人に感謝を伝えた。

「父さん、母さん、ここまで育ててくれてありがとう」


この世界では俺は初めて父さん、母さんと呼んだことになる。だから今までの記憶は俺にしかない。最初はそれが寂しく思えたが、それがこれからの勇気になる。俺に勇気をくれる。


父さんと母さんが驚いている間に雪も感謝を伝えた。

「えっと·····私もお母さんとお父さんに会えて育ててもらってほんまよかった!」

少し恥じらいがある。まぁそれが母性というものをくすぐるのだろう。

二人は泣き出した。


「ほんと·····よかった!」

そう言って笑ってくれた。涙でぐちゃぐちゃになった顔に最高の笑顔で。

それが今の俺にはとても眩しくて·····嬉しかった。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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