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、ゲームへ  作者: ヒト
第ニ章 骨の髄まで
18/32

「勇気」

私は百合さんと廊下を歩き始めた。

言葉は何も交わさず、寒く薄暗い廊下をただ歩く。

着いた先は休憩スペースだった。


互いがベンチに腰をかける。

「今年は寒いですね」

向こうが先に静寂を切った。

「そうですね」


私は目を離さないかった。出来るだけ体全体が見えるようにして。

「それでどうしたんですか?急に呼んで」

少し緊張しながら聞いた。


「えっと·····雪を連れて帰るの止めて欲しいんです」

そう、百合さんは言った。

「なんでですか?」

「·····最近雪の状態が良くなってきたんです。このままいったら退院もあり得るんです。やから今の間はそっとして、変に刺激しないであげてほしいんです」


最もらしい事は言っているけど、要するに雪を連れて帰ると都合が悪いってことか·····。

「すみません、それは出来ないです。お気遣いはありがたいんですけど·····。

雪の事はしっかり見ときますから、連れて帰ってもいいですか?」


私は怪しまれないよう、普通に答えた。

「····そうですか。分かりました」

そう言って百合さんは立ち上がった。

「戻りましょうか」


そうして部屋を出ようとした。

「タッタッ·····」

足音·····!待ち伏せか!

前に飛び込んで奇襲を回避した。


なんで?百合さんは前にいた·····。もう一人いる?

そうして奇襲をかけた敵の姿が目に入る。

「ゆ·····き?」

そこには雪がいた。手にナイフを持って。

······聞いていた話と違う。翔は、雪のコピー人間はハルになっていると言っていた。どうして·····?


「咲さんねぇ·····わかりやすいよ。警戒してんのバレバレですよ?」

百合のコピーがメスを取り出す。

「あぁ、やっぱり気迫ってやつですかねぇ?」

それに応えるように拳を構える。

とりあえず、百合のコピーは殺す。

雪のコピーは·····殺さずにどうにかするしかない。


百合のコピーが飛び出した。

·····速い!咄嗟に攻撃を腕で庇った。

そして蹴りを入れようとするが、躱される。

スピードが速く、力もある·····。かなり厄介だ。


今度は私が仕掛ける。

顔面目掛けて右拳で打つ。それは華麗に避けられる。しかしそれも予想済み。

左に避けたのを確認した、振り下ろされるメスを左手でいなした。

体勢を崩したところに右の肘を入れた。


百合のコピーはフラフラしながら後ろに下がる。

「く·····そ!誘ったな」

「そうやね」

私は思いっきり踏み込んで腹を殴った。

そしてうずくまって、隙だらけの頭に蹴りを入れ、頭と首を壊した。

「バケモンが·····」

そんなセリフを吐いて灰になって消えた。


ふぅ·····。一息つき、雪のコピーに目をやる。

雪のコピーは震えていた。それは恐怖している様に見えた。

ナイフを震える手で持って、コピーが走ってくる。

拳を構えて、攻撃の準備をする。


薄暗い廊下をコピーが走る。覚悟を決めた様に一歩一歩が重々しく。

そしてそこから光る何かが落ちている。

·····私は構えを解いた。そして走ってきた雪を抱きしめた。


「やっぱり」

ナイフは腹に当たるだけで刺さりはしなかった。そして、雪の顔には涙が溢れていた。

雪は最初っから私に倒されるつもりで来ていた。


「お姉ちゃんくうっ·····ごべんなさい」

「大丈夫、やっぱり優しいね。雪ちゃんは」

雪ちゃんと少し話をした。

頭に私を殺せという命令が聞こえること。

でも家族は殺せない。大切な人を殺したくない、傷つけたくない。言う事の聞かない体を頑張って抑えて殺されよう、と。


そうして最後にこう言った。

「私をハルにしてほしい」

理由は本当に雪がずっとハルに会いたがっていたのと、もしかしたらハルなら支配を受けないからだと。

それを支配に苦しむ体で一生懸命伝えてくれた。


「·····分かった」

私はそう答えた。

「雪は優しいね。支配に打ち勝って、最後までみんなのことを思って·····」

そう言って、私が結んでいたヘアゴムを取る。


雪は少し顔を下げて、髪を差し出す。

「これで·····少しは近づけ·····たかな?」

私は労いの言葉をかけた。

「うん。ほんとよく頑張ったね。お疲れ様」

綺麗な髪を束ねてくくった。

「えへへ、ありがとう」

最後に雪は満面の笑みそう言った。

それはそれは良い笑顔で。

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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