「終わりの始まり」
廃墟の中はぼんやりとしか見えない。慎重に探索していく。
割れた硝子や枯れた枝が廊下に落ちていた。それが潰れる音と風以外の音は聞こえない。
待ち伏せとかはなさそうだ。
一つ一つの部屋を確認していくが、何もない。少し足跡の様なものがあるだけだった。
私は不安に押し潰されそうになる。
また·····また間に合わなかったん?
「·····いや大丈夫、きっと翔は無事や」
崩れ落ちそうな心と足を立て直す。
そうして一階の全ての部屋を確認し終えた。
何もなかった。
大丈夫。まだ二階がある。私は二階へと向かった。
二階も確認していった。一つまた一つと。
でも何もなかった。何の痕跡もなかった。
頭のに何度も最悪の状況が想像された。その度に大丈夫だと言い聞かせ、捜索していった。
すると、半分くらいの部屋を確認した時、奥から音が聞こえた。
ハァハァと荒い呼吸音の様なものが。それと共に甘い声が漏れている。
喉から出かかったものを飲み込む。
私は音を立てない様にして出来るだけ速くその部屋に向かった。
そうだ、もしかしたら真弓と翔が一緒にいるのかもしれない。きっとそのはずだ·····。
部屋に近づくにつれて酷い臭いがした。鉄錆の様な臭いが風に乗って漂う。昔に同じ様な臭いを嗅いだことがある。最悪の記憶の一つに。だからすぐ分かった。
あ、これ血の臭いや·····。
全力で走った。速く速く行かないと。相手に気づかれても関係ない。
助けないと。翔を·····翔を助けないと。
部屋の中が見えた。出かかった言葉が失せる。
そこには、翔に知らない女が絡んでいた。
私の体は勝手に動いた。ただ怒りをぶつけるために。
「クソがなにしとんじゃぁぁぁぁぁ」
私は全力で殴りかかっていた。
その拳は当たり、そいつは飛んでいった。
翔は·····翔は?
「翔、助けに来たよ?」
返事がなかった。私がいくら名前を呼んでも返事がない。体をよく見てみる。
虚ろな目をして、抜け殻みたいに体からは力が抜けていた。
あの時と一緒だ。
私はまた、また間に合わなかった。守るって誓ったのに、命に代えても守るって言ったのに。
蹌踉めいて、地面に跪く。
「ペチャッ」
ついた手から音がした。冷たい液体がついた。様な感覚。
手が赤くなっている。血だ。床に血が溜まっている。
血が流れてきた場所に目をやる。
「ま·····真弓?まゆちゃん?」
返事がない。返事をしないとわかっても呼んでしまう。理解したくない。
なんで·····なんで急に?翔も真弓も?
落ち着かない頭を整理していると声が聞こえる。
「いったいなぁ。まあいいや、これでもう一人邪魔なやつを殺せるから!」
さっきの女が言った。
私はそいつに殴りかかった。今度はちゃんと殺意を込めて。
「どうしたんですか?そんなに怒って」
嘲笑うかのようにそいつは避ける。
私は冷静に相手の反撃を待った。
そうしてそいつがナイフで反撃してきた。
そのナイフを腹で受けて、思いっきりぶん殴った。
「痛ったぁ〜」
そいつは壁に打ち付けられた。そして足が蹌踉めいているのを見て、私は翔を持って逃げた。
走って、走って。教会に行こうとした。
でも途中でコケてしまった。雪のせいで滑って崖から落ちてしまった。
痛む体を黙らせて辺りを見る。
でもそこは見覚えがあった。ここから教会には行けない。だから私は記憶を辿って翔とある場所に向かった。
「ごめんね、助けてあげれんくて」
私はそのある場所に向かいながら翔に話しかけた。
「翔がゲームに巻き込まれたのを、昼くらいに知ってさ」
自分の思いを伝えようと思った。翔を目覚めさせるために。
「遅かったわ。気付くのが。昨日あんな事あったのに気付けんかった」
「私も、真弓も、裕太も、みんな翔の味方やからさ。翔も私たちを頼って?貴方の幸せが私たちの幸せやねんから。笑って、泣いて、怒って、喜びあって。ぶつかって受け止めて分かち合って、それが家族やから。私たちは貴方の一部やから」
そうやって私の思いを伝えた。
しばらく歩いて、やっと着いた。
そこは湖だ。表面は薄っすら氷がはり、ところどころ積もった雪が月明かりに照らされて、キラキラと光っている。
私は木に寄りかかった。手足の感覚がない。力が抜けて、意識がグラグラと揺らぎだした。
「色々あってん。今日」
雪ちゃんが見つかった事、百合さんのこと、ハルちゃんがいた事。色々最後に話した。
「ごめんね。ゲホッお姉ちゃん·····そろそろ限界」
お別れだね。
「守れなくて、最後までいれなくてごめんね」
その時ほっぺに何かが触れた。そこで翔が起きていることに気付いた。
そして意識が切れるその時、翔の声が聞こえた。
「お姉ちゃんありがとう。大好き!」
あぁ、良かった。
「うん!」
これで笑顔で逝ける。
咲ねえが教えてくれた。家族のことや気持ちとか。そのほかにも大事なことを知れた。
次はみんなを頼ろうと思う。俺だけが戦って傷ついても、みんなはきっと幸せじゃない。だからみんなを、家族を頼ろう。きっと、きっと受け入れてくれる。
咲ねえの腹に刺さったナイフを貰って、それを喉に向けた。
大丈夫、俺に家族がいる。そう、俺を大切に思ってくれる人たちが。大切な存在が。
幸せになるために。
その人たちの為に。
第1ステージ 1周目終了
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