「むかしのまま」
20分くらいして展望台への山道に着いた。
山には雪がずっしりと積もっていたけど、山道の雪は足跡で平らになっていた。大量の足跡がある。私は気を引き締めて山道に入った。
「なんかあるかな?」
展望台には確か古い建物があった。そこに何かあるのかも。
·····足音が聞こえた。人が来る。
「あら、こんにちは。咲ちゃんやないの」
「こんにちは」
来たのはよく真弓と散歩してる時に会う夫婦だった。普通に散歩してる様に見えた。
でも、この人達は多分コピー人間だ。
「今日は公園じゃないんですね」
私はそう問いかけた。
「そうなんよ〜。今日は久しぶりに山道歩きに来てん」
「そうですか」
確信に迫るためもう一つ質問する。
「前、山道歩くときストックは絶対持つって言ってましたよね。持ってないですけど、どうしたんてますか?」
「なに〜、今日はちょっと忘れただけよぉ〜!」
「そうです·····か!」
私は見逃さなかった。夫婦の後ろからナイフが飛んできていたのを。
それを間一髪で避ける。
私は拳を構えて周りを再確認した。
多分物陰に8人くらい隠れてる。
「今降参したら悪いようにはせんからね。ほら咲ちゃん、やる事は一つやで」
「そうやねっ!」
思いっきり踏み込んで相手の懐に入り込む。
「はっや?」
私は拳を打ち込もうとした。
でも嫌な予感がした。
「パンッ」
物陰から撃たれた。幸い私ではなくおばさんに当たった。撃たれたおばさんは灰になって消えた。
「仲間関係なしかい」
私はナイフで襲ってきたもう一人の腕を折って、弾除けにした。
10発くらい撃ち込まれて銃声が聞こえなくなった。
弾除けを捨てて、銃声のした方に走った。
するとクロが飛び出してきた。
ナイフを振り下ろそうとしていた。それをいなして顔を打った。
「つぎぃ!」
私は殺し続けた。腹にナイフが刺さろうと、腕に弾が当たろうと。そうして10人ほど殺っただろうか。攻撃が止んだ。
「ハァハァ、もう·····おらんな」
呼吸をする度に血の味がする。冷たい空気が体に染みる。どんどん息が荒くなった。
私はそれを吹き飛ばうように胸を殴った。
「ふぅ·····やるぞ」
展望台に近づくにつれて、敵は多くなった。
クロは弱かったが、コピー人間の方は強かった。やたらとそいつが多いから、展望台に着くまでかなりかかった。
「昼過ぎに病院出たのに、着くんが夕方って·····。もう日ぃ沈むで」
私は展望台の廃墟へと向かった。
展望台 廃墟内部
「······リン、ダーリン!」
目が覚めた。
·····最悪の目覚めだ。前にはユルハが居るし、寒くて手足の感覚が鈍くなってる。
「チッ、拘束外せや」
「駄目ぇ、今からダーリンの呪いを解くから!大丈夫。すぐ終わるし、呪いが解けたらダーリンもきっと幸せになるよ!」
そう言って奥に行った。
「くそっ、外れん」
縛られた縄を解こうと腕を動かしていると、ズルッズルッと音がした。何か大きな物を引きずる音。
嫌な予感どころじゃない。体がそれを拒んでいる。血の気が引いて気持ち悪くなる。
「じゃじゃーん!ダーリンを誑かしたクソ魔女です!」
「お·····おい」
呼吸を忘れるくらい、目の前の光景を目が焼き付ける。
「ご·····めん」
真弓は細い声で言った。裸に剥かれても震えもしない身体。皮膚は赤と白になっていた。
「この塵、ちゃんと殺すからね!解放してあげるから!」
そう言って水の滴る髪を後ろに引っ張った。
「や·····いやや·····やめろ。やめてください。大事な·····何よりも大事な家族なんです」
懇願することしか出来なかった。
でも現実はいつだって思い通りにはならない。
「そっか。可哀想に·····。そんなに強い呪いをかけられたんだね。でも大丈夫、これで終わるから」
真弓の喉にナイフが突きつけられる。
「グッ」
真弓がそんな声を出す。
「やめ·····」
真弓の喉に深々と刺さる。
血が滴る。ナイフから、喉から。でも、それでも、真弓は声一つ上げなかった。
「ハハハハハ!魔女が、お前が悪いんだよ!お前がお前がお前がぁダーリンの寵愛を受けるからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「あ·····ああ」
言葉にならない声がでる。
「もう大丈夫だよ。ダーリン!これで終わるから、終わらせるから。ね!」
ユルハが微笑む。また気持ち悪い笑顔で。
その顔がどんどん近づいてくる。
真弓を遮るように顔が近づいてくる。
唇が唇に当たる。
ねじ込むように生暖かいのが入ってきた。
んっ、と甘い声が聞こえる。
ああ、そっか。またか。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。
情報の一切を遮断して無になる。
またあのころみたいに
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