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精霊を絞め殺す悪魔を撃退するための魔法について

 あれは朝一だった。

「てめぇのとこの弟子がうちの集落殺しにかかってんだけどぉっ! なんとかしろよぉっ!」

 マジギレした植物精霊ドライアドが床から生えて叫んだ。


 ぼーっと見返して、とりあえず、水かと栄養剤を振りかけた。お腹がすくとイライラすると言う。

 な、なに、すんのよぉとさらにキレそうなドライアドだったが、へにょっと床に突っ伏した。床に上半身だけ生えて、そのまま突っ伏している。

 何か事件の匂いしかしないが、寝込みを襲われたのはあたしだしな。


 あたしには弟子がいる。四大魔法とか言って火水風土の魔法を優遇する世の中にありながら、最底辺と言える草魔法使い。不遇でかわいそうと言いたいところだが、その草魔法を最悪な形で使いこなす弟子である。

 生まれも母が早くに亡くなり、後妻&義妹にいびられたり、婚約破棄されて、家を追い出されたりと散々な境遇。

 全部並べるとかわいそうな子が想像できるのに、現物はアレだしな……。


 で、その弟子がなにかやらかしたらしい。また、というのも生ぬるい。一か月くらいさぁ、平和に過ごせないもんかね? と話したところだったんだが。


 そう思いつつ観察していたら、びくっと動き出した。

 なにこれ、生き返る、ぴっちぴちっ!? と驚愕している。


 それは普通に流通しないものだ。

 弟子とその父との合作、栄養剤。水魔法の水って液体ってこと? と弟子が気がついてしまい性質の変容実験をしていたりする。意外と気がつかないものなんだ。例えば、火魔法は火を使う魔法じゃなくて、燃焼魔法だったりするし、風魔法は空気魔法である。土魔法だけ定義が微妙で固体じゃね? ということになっている。

 砂粒、かもしれませんと弟子が言っていたが、魔女学会には報告する気はない。

 魔女というのは時々マジもののヤバいやつがいて、やばいんだ、という表現しかしたくないことをしでかす。そういうきっかけにはなりたくない。


 やだぁ、私、苗木ちゃん肌。って。

 そっか、ドライアドは赤ちゃん無いから苗木ちゃんなのか……。いや、そうじゃなくて、うちの弟子がどうしたって? ツタ状生物をさっさと引き上げろ? どのあたりに生息?

 そこ山奥っていうんだが。

 飛んでいくにしても距離ありすぎだろ。人間、そんな森の奥まで歩いていけないぞ。熊とかイノシシとかいるしな。行き帰りに死にそうになるようなミッションするタイプじゃない。

 魔女だって空飛ぶタイプでも墜落しなきゃいかない場所だよ。

 弟子、空飛べないし。恒久的に飛ばすつもりないし。あれは、自由な移動手段を手にしてはいけないやつだ。


 じゃあ、誰がって知らないよ。困っているなら、弟子を送るけど。弟子だけだと心配だからもちろんあたしも行くよ。

 ああ、弟子が、心配なんじゃなくて、やりすぎるんじゃないかって心配。


 支度して、朝ごはん食べてから行くよ。うん? 待っているからさっきのもう一杯? ちびちびとやるといいよ。量がそんなにないんだ。集落の他のドライアドにも……独り占めはいかんぞ。

 定期的出荷、って、これ臨床中なんだよな。レポート出すとか、まあ、相談してみるよ。


 弟子、あたし、ドライアドの一株と二人は山奥に分け入ることした。

 ドライアドは短い時間なら分体を用意することができる。サイズと知性は比例するが、道案内だけを頼むだけなので小さいのにしてもらった。

 緑のもじゃもじゃ毛玉、うねるよ、が出てきた。

 弟子が、これはこれで名状しがたい、さんちちょくそう、と言っていた。深く聞いてほしそうな顔をしていたので、受け流した。

 おまえのする怖い話は、本気で怖いんだ。思わず、魔女仲間に手紙送ったわっ! あたし一人怖いのとか不満だからっ! 今は不幸の手紙とか言われて魔女間で流行ってるよ。


 現地につくと確かにツタ状生物がはびこっていた。

 ああ、寄生植物ですね。と弟子は言っていた。すぐに減らすのはできますよ。結構、蔓延ってますからなんか原因ありそうですが、そのあたりは全くわかりません。

 それにしてもまさかの異世界で縄文杉を拝むことになるとは思いませんでしたって、つるっと言いだした。

 いせかい? と首をかしげるドライアドに別の話題を振っておいた。栄養剤で忘れろ。

 全く、油断しまくりの弟子である。その話は秘密にしておけといっているのに。ドライアドなんて暇なんだから、なんかの真実にたどり着いちゃうんだぞ。世界樹なんて……いや、それは今はいいか。


 え、栄養剤はあとで? あ、持ってったぞ。

 ぎゃーっという悲鳴の元に量を増やすツタの葉っぱ。襲い来るツル!


 最初に枯らさないとダメじゃないですかーっ! 最初に言えっ! と言い合いながら、格闘し、結果的に刈り取った。

 弟子は地面の方も枯らしておきます。みんなちょっと元気なくなるけど、ごめんねっ! と容赦なく、地面に干渉していく。

 ぐああとかぐへぇとか聞こえてくるけど、まあ、耐えろ。痛みはそうだな、足つぼマッサージくらいらしいぞ。あたしは見てる側でやったことはないが。

 その後、大盤振る舞いした栄養剤のおかげで友好関係は激的回復を遂げた。


 さて、ツタ状生物が蔓延った原因についてはわからなかった。しかし、弟子にたどり着いた理由はわかった。浅いところで葛の採取を行い、うちの弟子に送ると言う話を木が聞いていたのだ。そこからの謎の伝言ゲームの結果、弟子が主原因ということになり、あたしの睡眠が妨害されたわけだ。


 損ばかりの山奥行きだった。とおもっていたのだが、この件で弟子が植物界のレジェンドに祭り上げられることになろうとは思わなかったのである。

栄養剤の発注が世界中から!? と驚愕することになり、裏取引のように世界中の珍しい植物が集まっていくまであと少し。


魔女。

魔女っぽいローブととんがり帽子装備、金髪で肩までの長さ、前髪はぱっつん、スタイル良で気だるげに煙草ふかす系。ああん? とかいうガラの悪さと雑なやさしさがある。良識担当。一応300年生きてるしなと本人は語る。周囲では怖そうだけど怖くないよと噂されているとか。

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