おまけ 義妹と
それは突然のことだった。ある日、領主より迎えがやってきた。後継者に指名したいと。
平凡な魔法使いと言われていた僕の激変の日。
「お兄ちゃんができてうれしいです」
無邪気にそういう新しい義妹は、普通の少女に見えた。地味で役に立たないと言われる草魔法の使い手であるらしい。先にそう説明されているが、それだけではなさそうな気配を感じていた。
自慢の庭があるんですと案内された先は、人外魔境である。
見たことのない植物とその精霊が多くいた。
植物精霊というのは、あまり、人前に顔を出さない。山奥にいるか、見えぬように種族魔法を使う。そうでなければその場から別の植物にうつる。
あまり人と関わらない一族だ。
そうだというのに、ここには普通にいた。見知らぬ人の姿を認めて彼らは蜘蛛の子を散らすように消えたが、一人だけ残った。
「あらぁ? どちら様?」
そう聞く精霊の一人は微笑んでいるが、ぞわぞわした。
「お兄ちゃん! うちの領地を継いでくれるの。これで私に継がせたいなんて誰も言わなくなるよ。ほんと嬉しい」
「ふぅん? 結婚相手ではないの?」
「へ?」
「違います」
僕の方からすぐに否定しておいた。その件については事前にくどいほど念押しされていた。普通の男には荷が重いとか、恨みを買うとか。
それはこれかと気がつく。
植物に愛されすぎている。人の子のもとに残したくはないだろう。
「そう? それならいいけど」
「お兄ちゃんには領地を共に支えてくれる奥さんがいるよ。私みたいな遊び歩いている不良はダメ」
「それは、そう。
ちゃんと弁えていてよかったわ」
「そこまでバカじゃないので」
「ところで、君も水魔法使いなのかな」
「はい」
「栄養剤には興味ないかな」
「そ、それは、あとにしよっ!
お兄ちゃん、魔女は紹介されていますか?」
「いえ、ご本人から話があればと」
「じゃ、お茶しましょ。
魔女ーっ! 新領主候補連れてきた」
そう言って、近くの菜園に声をかけた。
「……うるさいな」
その声と共に姿を見せたのは、とんがり帽子の魔女だった。
「やあ、来訪を歓迎するよ」
にこりと笑う魔女が、ド緊張していたと知るのは随分あとになってからのことだ。その時は、おっかない人だなと思えた。
それでも三人で囲んだテーブルは悪いものではなかった。
それどころか少しばかり居心地の悪い領主の屋敷よりも落ち着けた。そうなると良く訪れることになり、庭の植物精霊たちと少し親しくなり、栄養剤の件に巻き込まれるようになるのはもう少し先のことである。
転載ばかりなので、一つ新作を。
この後、歴代領主は栄養剤外交で、土地の安定をもたらすことになります。そのため、一部土地を沈めた件はあれこれ言うわけにもいかず、不問というか、ただの不幸な災害扱いに。
堅実な一族ではありますが、ある事件により貴族籍を抜けて一般国民として後々まで残り、魔女の残した遺産を守ることになります。という余談が。




