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草魔法の怪談

 ある日。学校に行けと言われた。

 は? 私もう19歳。17歳? それ家出てきた年。いつの間にか二年て。いやだなぁ、この間、誕生日過ぎたよ。脳みそ幼児で止まっているとかひどい。否定できないかなぁと思う瞬間はあるんだけど。

 一応、私には前世一つ分の賢さがっ! あったかな? 悪知恵だけはある。確かにある。ライフハックとサバイバルには強い。前世の私はどこで野戦してたのかな? ブラック企業かな。

 それはともかく、学校に行けと言われた。なぜか、次期当主予定だったのに学校行ってなかったのがバレたから。

 うん? と首を傾げた私に父が説明したことは貴族のご令嬢は廃業したと思っていたら、休職していただけだった。ということだった。

 え? マジ? 政略結婚とかしなければいけない? と父に問い詰めたら、別に気が向いたらでいいと。なんでも遠縁にいい感じの水魔法使いがいるそうだ。血縁にこだわると死滅する土地があるそうで、水魔法使いが本家からいなくなると遠縁から呼んでくるのだそうだ。そのうち養子縁組するので、義理の兄ができる。この人に家を継がせるつもりだそうだ。私は好きにしてよいということになる。

 お兄ちゃんって呼んだら喜ぶかなと言うと真顔でやめとけと言われた。なんだよ。溺愛してくれる義兄できないのかよ。

 それはさておき。

 次期当主は私ではなく、別の人になる予定があるのに私が学校に行かなければならないのはなぜなのか。

 王様が口出ししてきたんだって。正確にいうと議会で私のこと(というより栄養剤)が話題になり、作者を調べたら、学校行ってないことが判明したと。次の継承者が指名される予定だけど、今は継承者なんだから学校行ってこい、という無茶な理論をごり押しされた。

 半年ほどの滞在でいいらしい。なんなら数か月でもということ。

 それって珍獣見たいからさぁ王都おいでよ。ということでは? そういえば限りなく近いということ。さらに草魔法を使って収穫量をふやしたりとか、荒れ地でも育つものを増やしたりとかできる品種の制作を依頼されるかもしれないそうだ。

 それについては魔女が嫌な顔をして、断っとけと言っていた。変に生態に干渉するとひどい目にあうと。個人で少しならさほどひどくならなくても、量が増えると思わぬことが起きる。

 もし、そういったことに手を出すようであれば、あたしが始末をつけなければならないとはっきりと言う。

 この場合の始末というのは限りなく血なまぐさいやつで……。

 私と父は絶対にしませんと返事をした。だって、魔女泣くじゃん。泣かせてはいけない。この間だって、お茶を二つ用意してぼんやりと一人で外を見ていた。

 私に作っておいてくれといった茶の葉で作った初めてのお茶を。


 さて、血なまぐさいことは回避したい王都行き、学校寮生活が始まることになった。

 この学校、8~16歳までの子女が全寮制で生活することになる。そこに成人済みのお姉さんが乗り込んでいくのである。場違いも甚だしいと思っていたのだが、意外と慣れた。

 ほら、精神年齢低いからと魔女が笑いそうである。


 頼れるお姉さんというより、頼りないお姉さんとして年下に世話されることもあるのである……。あとお花のお姉さんと虫がいる木がわかるお姉さんもしている。それから薬効の高い薬草のお世話係。

 お勉強については、まあ、ほどほどだ。貴族の常識、赤点、計算や国語系は高得点、歴史などは並。実技系はへっぽこですね、と言われた。

 そんな日々をしているうちに子供の中でしか出回らない噂を聞くことがあった。


 この学校には七不思議がある。

 学校の怪談ッ! 異世界にもあった! はやる気持ちをおさえて聞けば、聞き覚えのあるような鏡の向こう側の誰かや音楽室の肖像画、動き出す樹、うん? 動き出す樹?

 これだけ引っかかった。

 いや、池の鯉が純金製とかそれも気になるけど。純金重いから沈むのでは? 軽い金は金ではないしメッキ? そういう色の人面魚? ……それはさておこう。夜に網でさらってみればいいかな。


 動く樹は目撃情報が多いらしく、怯えている子もかなりいた。

 植物のお姉さんとしては看過しがたい。というわけで、ドライアドを召喚した。

 あらぁ、やっぱり、ワタシがいないとダメねぇとおねえなヤツに抱きつかれた。うむ。性別不詳でもちょっとドキドキするぞ。

 みどりのおねにーさまにお願いだと付近のドライアドをさがしてもらった。


 わんさかいた。

 元々、この学校、森の中にあったらしい。それが王都の拡大とともに王都の一部に吸収されたそうな。そういう歴史を現地の樹に聞いている。のんびりしているので、一夜明けた。池の鯉、見たかった。

 そこから動く樹をさがすこと一週間。寝不足を心配されながら、ついに、やつを発見した。


 虫に襲われて逃げ回る樹を。


 なにあれ?


 ちょうど網を持っていたので、虫を捕まえる。カブトムシだ。前世ではヘラクレスなんちゃらって言ってたようなヤツだ。

 クワガタもなんか強そう。

 色々捕まえて、ようやく話を聞けば、昼間に子供が来てペタペタとなにかを塗っておまじないしていったらしい。


 ……。


 待って。ちょっと身に覚えがある。

 夏に人気の昆虫。集めたいと男の子たちに言われてた。なので、特製の塗り薬とおまじないを教えたのだ。草魔法の中に虫呼びと虫よけがある。本来は違う分類に入れられるべきなのだが、活用法でこの分類に。簡単なものなので素質がなくても同じ言葉を繰り返せば効果は出る。

 そ、それがこんなことに!?

 誰か資質がある人がいるかもしれないがそれにしたって……。


 なかなか見つからなかったのも一つの木だけでなく日替わりだったから。

 挙動不審な私に疑いの眼差しを向けられる。もう、おまえ、なんかしただろ? という視線が痛い。もちろん平謝りした。そんなにドライアドいると思ってなかったんだよ。


 その次の日から私は虫のお姉さんになった。普通の木にほどほどに塗布し、おまじないは封印した。

 そして、そのおまじないとやらが、秘密の魔法として学校に伝わってしまうとは思わなかったのである。

鯉がみつからなかった無念と帰宅する弟子に微妙な顔をする魔女。

百年くらい前にいたずらしたような気がしないでもないが、黙っていることにした。

七不思議は他、歌い出す校長の銅像、夜中になりだす鐘など色々があるが、最後の7つ目は誰も知らない。

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