ホントは怖い草魔法
異世界転生やったー!
と思ったら使えるの最下層の草魔法でした。
生まれは良かったが、役立たずと罵られながらのくらし。逆に良くなかったのでは?
さらに良くなかったのは、ひとつ下の妹がいたこと。あと、母が実は実母でなく後妻だった。
わかりやすく虐げられる前妻の子。
なお、父は空気。じゃ、なければ捕食される小動物系。ぷるぷる震える中年が何故か加虐心を煽る。あてにすると可愛そうなので、時々、嫌味を言う程度にしてる。
草魔法、食べられる草の判定や急成長など使えたので野草で生きる毎日。庭師付きの庭があったので、雑草を枯らしたり、果物の木を元気にしたりで、食べ物をもらうこともあった。
肉が食べたくば近くの魔女宅に押しかけて労働力と薬草でしのいだ。なんかいつの間にか弟子とか言われたけど、こちらは生きるのに必死でね。
そんな私ですが、なんと! 婚約者がいた。
初めて聞いたときに驚きすぎて白昼夢かと思ったくらい。
幼い頃に亡くなったらしい実母の友人の息子だそうだ。曖昧すぎて何だそれな話である。
そして、その婚約者に一回もあったことはない。まあ、良家の子女は結婚相手の顔も知らないということもあるので、そんなもんかと思ってた。
ところが今日、なんか広いホールに連行され、婚約破棄されている。
曰く、草魔法を隠して婚約し、なんと妹を蔑ろにしたと。
バカらしくなって、ハイそうですね。じゃあ、破棄します。で済ませた。
周囲がぽかーんとしていたが、知るものか。実家も出て行けと。半分魔女宅に住んでるの知らなかったんだろうか。それも了承し出ていった。
それからの私は呆れる魔女と家を一緒に出てきた父と暮らしている。
意外なことにびくびく生物な父を魔女は気に入ったらしくそれなりに平和だ。
ただ、まあ、イラつきはしたので。
実家の庭にある木と草を生やした。
魔女はそんなのでいいの? と怪訝そうだが、現代日本を生きてきた私は知っている。
花粉症というものを。
この世界にも杉やヒノキ、ブタクサに相当するものがあり、花粉症が発症することがある。
だから、置いてきたのだ。
いっぱい花粉が出るように改良したものを。
何年後に発症するか楽しみである。
そうしたら。
意外に早く成長し、予定外に近隣にも大被害。
なお、庭師は退職済み。