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女神・ザ・クッキークリッカー! ―女神を殴るごとにレベル上がるんですがそれは―  作者: 八゜幡寺


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73:笑い声は三つ

 正面に目を向ける。

 女王がいる。


 背後に目を向ける。

 女王がいる。


「……双子?」

「違うよアギト君。前方が魔王。後方が女王だよ」


 いや意味わからん。

 魔王と手を組んでいるご様子だが、操られているのか自らの意志なのか……。


 てっきり魔王が女王を殺してそれに成り代わり、内側から人間界を崩壊させていた張本人だと思っていた。

 しかし女王は普通にいるし、ならなぜ魔王はそんな姿をしているのか。


 とりあえず、今はあの二人を引き合わせるのはまずい。


 魔王側をぶち殺すのは骨が折れそうなので女王を先にやっつけるつもりで方向転換。

 途端に、ミゼーアの抑止が入る。


「まあ見てなよアギト君。大丈夫、これからものすごく面白いことが始まるよ。あはっ」

「いやいやいやバカが! 相手が強くなっても俺別に面白くないから! あーもうほら! 揃っちゃったじゃん! 死ね!」

「いどぇ!」


 くっそ! ミゼーアとコントを繰り広げていたらあっという間に女王と魔王がセットになった。


 一体何が始まるというんだ。

 俺の力量の大体は把握されているはず。つまり、ステータスだけで相手を蹂躙できるだけの力があるということは見抜かれている。

 それでもなおあの余裕。

 勝利を確信したような優越感すら見て取れる。


 そして二人の女王は――俺を刺し貫いた【千年王剣エクゾディア】をそれぞれ手にした。


「ずっと、これが欲しかったのだ。勇者よ、貴様の体液がだ」


 王女は剣をうっとりと見つめた。

 正確には、剣に付着した赤黒くドロッとした――俺の血液をだ。


「唾液や糞尿ではダメだ。血か……精液が望ましかった。最初はゾンボルトが手傷でも負わす事ができればよいと考えていたが、あそこまで力の差が歴然なら不可能だ」


 ……だから、女を侍らせたわけか。

 精液を採取するために。


 ああっ! もしかして、毎回食事に混ぜられていた毒キノコ!


 あれ、媚薬だったのか!?


 というか……。


「やり方が回りくどいわ! 結局それも失敗してるし、最終的に強行作戦かよ! これだって俺がもう少し戦い慣れてたらきっと破綻してたぞ!? そもそも……」


 女王。

 確かに高齢ではあるが、老齢ではない。

 熟女ではあるが、その肌のハリはスキンケアやアンチエイジングの賜物だろう。


 うん――抱ける。

 そもそも俺だってこっちの世界である程度の地位はほしい。


「……あんたから夜の誘いがあれば、俺は別に断らなかったからな」

「んなっ!?」


 俺の一言に動揺してみせる女王。

 さては……ご無沙汰だな。


 どうやって魔王と連絡を取り合っていたのかは定かではないが、きっと気を張り詰めた生活だったろう。

 それに国の長としての仕事だって少なくない。


 年も年だし、いろいろな積み重ねから、男女のまぐわいなど遠のいていったに違いない。


 そんなセカンドヴァージンに突入した熟女には、そんな下ネタすら、初心な乙女のように心をかき乱すほどの効果があったようだった。


「何をうろたえておる、ジゼル・アダムス。貴様と妾は一心同体。貴様がいて、妾がいれば、他に何もいるまい」

「わ、わかっておる!」


 そこへ女王と全く同じ姿をした魔王の叱責。

 ここへきて感情のコントロールを失った女王は声を荒げるが、しかし次の瞬間にはまた元の平静な姿勢を取り戻していた。

 流石は一国の主。ポーカーフェイスはお手の物だな。


「ふふふ、いまさらそんな嬉しいことを言われたところで、貴様は最早用済みなのだ」


 嬉しいって言ったぞこいつ。

 心の平静はまだ取り戻していないらしかった。


 魔王は頭を抱えてため息をつくが、何も言わない。


「おかしかろう? なぜ圧倒的なレベル差があるにも関わらず、我らが強気でいるのか。――おしえてやろう! その真意を、身をもってな!」


 女王はその言葉の勢いのまま、手にした剣を舐める。

 すなわち、俺の血を舐めたのだ。


 狂ったようにペロペロ、ペロペロ……。


 後ろのほうで魔王もペロペロしている。


 ――咆哮。


「スキル【泥沼と落雷と(スワンプマン)】……発動!」


 そして、空に漂う瘴気の雲を突き破り、女王に向けて落雷が轟いた。

 光と衝撃で目を瞑ってしまう。

 しかしそれは瞬間的に収まり、すぐに女王を視認できた。

 魔王も、元いた場所から動いた形跡は無い。


 ……なんだ、何も変化ないぞ?


 理解できなかった。

 ふとミゼーアを振り向くと、口元を押さえ……震えていた。


 それは数秒の沈黙だった。

 しかし俺だけが何も理解できていない。

 それはとても不安で、過ぎ行く時間がとても長く感じた。


 ようやく口を開いたのは、女王だった。


 高笑い、自信に満ち溢れた表情で、力を滾らせていた。


「ふはははははは! ついに、ついに手に入れたぞ! 勇者のステータスを! スキルを! 全てを我が身に映し出した!」


 なっ……!?

 こいつ、本気で言ってるのかよ!?


 俺のステータスとスキルを!?


 勇者としての全てを……! そっくりそのままコピーされたってのか!?




 ――ゴミだぞ!?




 魔王と女王と、ミゼーアの大爆笑が辺りに響き渡るのだった。

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