67:地獄のトレーニング
この世界ではレベルアップによってステータスを得られるために、自らの肉体を鍛えるという概念が存在しないらしい。
練兵場はあるが、それはあくまでも型の稽古のような動作確認を主としていると聞いた。
剣術のスキルも身につけたらあとはもう実戦実戦実戦。
この世界の住人は、気づいていないのだ。
ステータスを強化する方法が、レベルアップ以外にも存在するということを。
そして何を根拠に、俺のトレーニングが甘っちょろいなどとほざくのか。
「いいだろう、そこまで言うなら教えてやる。あの変態共がなぜあそこまで強くなれたのかをな」
首を伸ばして俺の話を聞き入る悪魔共のごくりと唾を飲む音が聞こえそうだった。
教えてやる。
まず大切なのは――スタミナだ!
「俺のスキルを一つ……教えてやる。その名も【百鬼夜行】」
「な、なんて恐ろし気な字面だ……! 一体どのような効果があるというのだ!」
「わ、分かったぞ! 百鬼の行軍がごとく魑魅魍魎を呼び寄せる恐ろしいスキルだというのだな! あの娘らはその百鬼を相手に死よりも恐ろしい試練を課せられたのだな!」
各々がスキル名からどれ程までにおぞましいスキルかを考察する。
しかし違う。
そんな大層なものじゃない。
――――
【百鬼夜行】
・往年の名作PRGのごとくパーティメンバーを必ず真後ろに密着するように同行させることができる。一人につきMP1を消費。
――――
「……な、なんだ……これは……!? なんだ、この、名前に反して全くの用途を見出すことができない……ゴ、ゴミスキル――!?」
「それを口にするんじゃねェボケがァ!」
「ごえゅ!」
紅い複眼を動揺に染めたベルゼブブが禁句をしゃべるものだから、つい手が出てしまったじゃないか。
次言ったら殺すぞ。
まあそれはさておき、俺はこのゴミスキルの画期的な使用方法を思いついたんだ。
このスキルを使えば必ず仲間は真後ろについてくる。
仲間の体力とかスピードなんか関係なしに、俺がどんなに全力疾走したとしてもぴったりついてくるんだ。
それに気づいて真っ先に、俺はステータスの【すばやさ】を1000まで上げた。
この世界での通常の歩行速度は、ステータスの数値とすれば3くらい。
一般人が全力疾走すれば15くらいにはなる。
【すばやさ】数値はほとんどの場合、本人の全力疾走した時のパタメーターがステータスに反映されるようだ。
「――奴らにはまず、俺の全力疾走のペースに慣れさせるところから始めた」
悪魔達はぽかんと口をあけたまま固まってしまった。
理解できないか? でもこれが俺のスキルだ。他人の意志など関係なく強制的に巻き添えにできるのが勇者固有のユニークスキルの強みなのだろう。
ゴミスキルでなければ、本当に……いや言うまい。
「貴様……本当に勇者か?」
やっと言葉を発したかと思えば、悪魔は顔を引きつらせて俺を引き気味に牽制しだした。
なんだ、今更それを疑うのかよ。
もし俺が敵ならこの場に到着した時点で皆殺しだろうが。
「いやそもそも、【すばやさ】が1000!? 貴様、そもそも人間なのか!?」
「そこかよ。それは別に不思議じゃないだろ。俺のレベルは1584もあるんだし、まだストックしてあるステータスポイントもあるからこれくらいで驚かれても困るんだがな。ほら、ステータス・オープン」
――――
本名:大鰐 顎斗
種族:人間
称号:狩猟神の盟友にして雷帝八龍の勇者
レベル:1280
HP:1000/1000
MP︰100/100
こうげき︰500
ぼうぎょ:500
とくこう:200
とくぼう:500
すばやさ:1000 ←new!
残高:2208 ←down
【ユニークスキル】
・沈まぬ太陽
・不死王眼
・神々の食卓
・円卓の騎士の招集
・ミニッツ・ラヴァー
・百鬼夜行
・???
・???
【スキル】
・ステータス
・ライジングインパクト:A
【備考】
神々の牢獄から抜け出し地上へと生還した最強の勇者。ステータスの暴力だけでこの世界の頂点にたてるほどの存在である彼が、今後どのようにしてこの世に何をもたらすのかは分からない……。ただ、奴隷商の才があるのは確かである。
――――
「レベルせんにひゃっ――!?」
「な、なんじゃこりゃあ!?」
「うげェ! おろろろろろろ!」
「こここの程度でうろたえったえなどど魔界のツラよごよごよご」
うろたえまくってんな。
魔界に住む悪魔にとっても規格外のステータスなのか。あのダンジョンのすさまじさが今一度確認できた。
やっぱクソ女神だわあいつ。




