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女神・ザ・クッキークリッカー! ―女神を殴るごとにレベル上がるんですがそれは―  作者: 八゜幡寺


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65:賑やかなパーティ

「はい、というわけでお前ら。服着ろ。モンスターの軍勢がいるってことはここが最前線の紛争地帯だ。味方のキャンプも近くにあるだろうから、ちゃんと普通の人間がするような行動を心掛けろよ。だから服着ろな?」

「ワン!」


 元気よく吠えたシンディの頬を平手打つ。

 スパーン!


「返事もちゃんと人間の言葉でェ!」

「もうしわけごじゃいましぇん! ありがとうございます!」


 感謝されるいわれはないんだけど。

 まあ言動はおかしいが、一応これでもみんな俺の言うことは聞いてくれてるからまだ扱いやすい。


 服はちゃんと着るし、そもそも一流の礼儀作法を身に備えた貴族のご息女と王宮に仕えるほどの侍女らだからな。

 普通にしてればマナーとかモラルは一級品なのだ。


 ――そのタガが外れたギャップが凄まじいがな。




――――




「ルシファーがやられたようだな……」

「フフフ……奴は魔界四天王の中でも最弱……」

「モンスター如きにやられるとは悪魔のツラ汚しよ……」


 そんな話し声が聞こえたのは、こんな荒れ果てた地には相応しくないほどに原型を留めた風車小屋の中からだった。

 辺りを見渡せば同様に、石材と木の家並みが不自然なまでに整然と立ち並ぶ。


「ふふん。我輩の【時間逆行プライドマーズ】のスキルがあれば、こんな片田舎の寂れた村など容易く復興できるわ! ふははは!」


 羊のような巻き角を耳の上辺りに生やした幼女が得意げに叫ぶ。

 漆黒の髪は闇を統べる悪魔の証。金色の眼光で常に悪巧みを考えていそうな目つきをするこの幼女の正体こそ――魔界四天王の中でも最弱と専らの噂であるルシファーさんである。


 俺達の特攻で他のモンスターと一緒に塵あくたと成り果てたはずのこの悪魔だが、【時間逆行プライドマーズ】のスキルによって死ぬ直前まで自身の時を戻したのだと言う。


 なぜか、幼女の姿で。


 言ってることは怪しいが、別に敵地へと誘導されたとしても俺達の戦闘力ならば問題ないということで奴に追従してきたのだが、どうやら本当に俺達の仲間だったようだ。

 俺が召喚された国の国旗と軍の紋章を記した旗がいたるところに掲げられている。


 そしてこの風車小屋は作戦本部ということらしい。


 さっきまで高笑いをしていたルシファーは表情を怒りに染めてそこへ飛び込んでいく。


「おのれ貴様らー! 我輩があの程度で死ぬわけなかろうがー!」


 先ほどの会話への文句だった。

 開け放たれた扉からは禍々しいオーラとでもいうのか……目に見えるほどドス黒い邪気があふれ出す。

 その発生源は、長方形の木製テーブルに腰掛ける三体の悪魔だ。

 幼女姿のルシファーを確認すると、今度は笑い声が大いに吹き上がった。


「ぐははは! なんだ貴様! そのみすぼらしい姿は!」

「ケケケー! なんにせよ、貴様の底は知れたな! モンスター共に奥の手を使わされるとは、情けない!」

「全く、魔界のツラ汚しよ……グズッ」


 仲良いなこいつら。

 みんなルシファーの生存にホっと胸を撫で下ろしたように表情が和らいだ。

 最後のなんか骸骨頭の騎士みたいな悪魔なんかは涙ぐんでるし。


 そんな騒ぎ立てる悪魔共がやかましかったのか、その女は、眉根をひそめて部屋の奥から現れた。

 ――俺が一番に会いたかった女性だ。


「皆さーん! 無駄話してないでちゃっちゃと動いてくださーい! ルシファーさんが戻ってきたなら次はベルゼブブさんですよ! しっかりローテーション守ってくださいね! サタンさんとアモンさんはさっさと寝る! 少しでも体力温存してください!」


 まるでお母さんが子供を叱り付けるように。

 エプロン姿にフライパンを持ち、調理の真っ最中だったのだろう。

 そして玄関先の俺と……目が合った。


 ねぎらいの一つでも、掛けてやらずにはいられない。


「おう……頑張ってるな。ベル」

「うそ、アギトさん……? どうして……ここに……!」


 なんと言えばいいのか、気恥ずかしさに俯いて頭を掻いた。

 その隙をついてパタパタと走り寄ってくる気配を感じたと思うと――。


「あ、ずいぶんと賑やかなパーティメンバーですねー」

「え?」


 瞬間、声のトーンが二つくらい下がった冷め切った様子で、ベルは俺の目の前で立ち止まった。

 最悪の事態が咄嗟に頭をよぎりそれを確かめるべく振り向いてみれば、案の定――。


 女どもがベルに睨みをきかせていた。


 全裸で。


「ああ、気にすんな。こいつらは野良犬みたいなもんだ。……おらァ巣に帰れ!」


 俺はなんの躊躇いもなく奴らを蹴り飛ばし、平然とドアを閉めて内鍵をかけた。


 視界の端で悪魔達が、悪魔でも見るような目で震えていた。

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