64:この世界を救いに
――凄まじいな。
大地はモンスターの血と肉片で埋め尽くされた。
とてつもない臭気が鼻を捻じ曲げる。
俺はダンジョンで死臭というものを嗅ぎ慣れていたから、めちゃくちゃ臭いなとしか思わないが……。
いやほんと、ダンジョンは臭かった。
湿気ているからカビ臭さがまずあって、それから自生しているキノコの青臭さ。
そこら中に染み付いた血やら何やらの鉄サビ臭さには「あれ? 鼻血かな?」と何度思わされたか。
そして何と言っても……モンスターが臭っさい!
近付けばもう獣臭。それと皮脂とかあとなんか酸っぱいような腐敗臭!
言っちゃ何だか、一番臭かったのはミゼーア。
ヘドロを煮詰めたってあれほどの臭気には敵わないと思わせるほどの混沌とした悪臭は最早形容できない。
まあもう慣れたし、【神々の食卓】の効果が作用するみたいだからあんまり気にはならなくなったが……こいつが俺の耳と声帯に寄生しているのかと思えばぞっとするね。
まあいい。
問題はこいつらだ。
むせ返る異臭をものともせずに飛んだり跳ねたり、初戦闘初勝利の喜びを噛み締めている四人の戦乙女。
「え? こんなの、毎月嗅いでるから! あはは!」
パーティで一番の元気娘のアナスタシアが快活に答えた。
女は強い。
ここで愉快な仲間を紹介しよう。
――俺の馬、シンディ。
鳴き声は「ワン」か「ブヒ」
女神からの通信不良を神託と勘違いした天然娘。
今では勇者である俺を神子と崇め、どんな命令をも従順に成し遂げる【変態ドマゾ女】となった。
勘違いしてはいけないが、全裸なのはこいつが勝手にやりだしたことだ。
灰を被ったような独特な髪をポニーテールに結ぶときは俺の馬になるということと、返事は全てワンかブヒの鳴き声だと調教はしたが、それ以外はノータッチだ。
我が親友の一人娘でもある。
戻ったら彼には「娘は死んだ」とだけ言っておこう……。
次に、アレンデール三姉妹。
王宮で一ヶ月の間お世話になった侍女たちだ。
危険な旅だというのに、それでも俺と共に居たいと言ってくれたとても愛らしい子たちだ。
長女のエルザ・アレンデールは白金色の頭髪を大きな三つ編みで纏めたクールビューティ。
つららのように尖った流し目で意地悪く微笑まれたらもう彼女の虜だ。
二女のアナスタシア・アレンデールは皆からアナと呼ばれ慕われている。
三女のオラフィス・アレンデールは可愛い。
背がちっこくても侍女としての一通りの作法は兼ね備えているし、無邪気な笑顔が愛らしい。
くっつきたがりの甘えん坊で、しかも【男を喜ばせる方法】も知っているではないか。
身分を笠に着た交渉などフェアじゃないと自制し、エルザやアナの【お誘い】は断っていたのだが……!
オラフィスとは【物理的な問題】で断念したのは二人だけの秘密だ。バレてる感じするけど秘密なのだ。
――まあ今は、ちょっとみんなの暴走っぷりに萎えちゃってできないんだけどな!
なんでみんな全裸なの!?
いやちょっとは俺に非があるかもしれないけどさ!
シンディに関しては調教する以前にもう最初から脱ぎたがってたからね! 「神託……神託……」って言いながら隙あらば全裸だから!
俺としてはオープンエロがまずあんまり好きじゃないし、性奴隷として調教した以上に自分で予習復習していくからもう【ドマゾクソエロAI】みたいなもんだわ。
親友の娘を【ドマゾクソエロAI】って呼んじゃってる俺も相当やべえけどな!
「アギト様はああいう格好がお好きなんですね……」
「なにー! 負けるかー!」
「わーい! オラフィスもやるー!」
いつの間にかパーティ内に【俺と行動するときは全裸】というアホみたいな規律ができた。
一番のアホは俺だけどな!
最初はエロくて従順なハーレムを築いちゃったよやったぜ。とか思ったさ。ああそうさ!
鼻穴広げて左右に姉妹を侍らせて肩組んでそのまま胸揉んで! 四つん這いのドマゾに跨って! 幼女を肩車して!
全員裸!
俺やべえド変態畜生じゃねえかあああああああああ!
でもこんな状況になったら誰もがこうするよねええええええ!
それでいて【好みのシチュじゃないから萎える】とか自分で自分が分からない。
まあ……いい。
俺は別にここまでエロ行脚しにきたわけじゃない。
結果としてエロ行脚だが、そうじゃないんだ。
この世界を――救いに来たんだ。




