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女神・ザ・クッキークリッカー! ―女神を殴るごとにレベル上がるんですがそれは―  作者: 八゜幡寺


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57:サンパウロ閣下

 王宮内は広い。

 だがこの一ヶ月で殆ど歩き回ったので、一先ずの目的地とした場所へは迷わず行けた。

 俺が探検すら飽きるほど見て回った城内において、まだ行ったことがない場所。侍女達が意図して俺を遠ざけていた場所でもある。


 おそらくそこに、ベルはいる。

 何せあの日以来、ベルとは一度も顔を合わせていないんだ。向こうから訪ねて来る事もなければ、バッタリ出くわすなんてこともない。

 所在を聞いても多忙だとか出張だとかはぐらかされ続けた。まあ、それを疑いもせずに信じていた俺がバカなだけだが。


 もしやベルこそ幽閉されているのかもしれない。

 それがこの、地下への階段。その奥……!


「申し訳ございませんが、これより先には陛下の許可が必要となります。勇者様、申し訳ございませんが、お引取り下さい」


 入り口には番兵が二名、佇んでいる。

 彼らの前に立つと、怪訝な顔でそのような事を言うのだった。問答無用というわけか。

 ならば、俺にも考えがある。


 ゆっくりとした所作で両手を合わせる。

 肘を張り、顎を引く。視線は奴らを見定め――。


 ゴキッ……ボキッ……!


「ひっ――!?」


 なんてことはない。

 指を、鳴らしただけだ。

 しかしたったそれだけの行動に、番兵はひどく狼狽した。


 なぜならそれは、明確な威嚇行為。

 その音を聞いた瞬間、彼らは一ヶ月前の風景をまざまざと思い出しただろう。

 その場にいなかったとしても、確実に伝聞されたその光景が脳裏に焼き付いている。


 ――最強の男を一撃で倒した破壊力。


 彼らは、瞬時に理解したことだろう。

 武器を持たず、その拳一つで、全てを黙らせた男が目の前にいるということを――!


 結果。

 番兵は予想通り、恐怖に戦慄する。

 そして彼らが、思った以上に――仕事熱心であるということは、予想外だった!


「うおおお! や、やってやるぞおおお!」

「我々とて一兵卒ながら、アダムス王国軍が一員! ぼぼ、暴力には屈しない!」


 あれー!? なんで好戦的!?

 ただの番兵かと思えば、なかなかどうして、肝が据わっている。そんな奴らを挑発したらそらこうなるのか。……後学のために覚えておこう。畜生!


 悔しいが、こいつらはまんまと職務を全うした。

 危機を煽る大声によって、野次馬ができてきた。こんな状況で無理に押し通れば、みすみす悪党に成り下がる。勇者としてそれはできない。

 くそ。やってくれたな。


 だが……ここで引き下がれば、もしベルが囚われていたとしたらより警備が厳重になるだろう。

 そもそも俺を警戒しすぎじゃないか? 勇者だぞ? この世界を守るために召還された善良の塊だぞ? なんでそこまで敵視してきたんだ。いや挑発はしたけどさ。いきなりあんなこと言われれば少しくらいカチンとくるもんだ。


「おお、勇者殿。今日はお一人ですかな。いかがされましたか」


 ふと背後から声がして、咄嗟に振り向く。

 その人はでっぷり太った体型に白いひげを蓄えていた。高そうな衣装はオーダーメイドでしっかりとサイズが調節されていて、パっと見の印象は小難しい性格の富豪といったところ。

 俺がゾンボルトに勝利した矢先、真っ先に俺にコンタクトをとってきた人物だった。


 彼のことは敬愛を込めてサンパウロ閣下とお呼びしている。

 見た目の割りに物腰が柔らかいこの人には、色々とこの世界のことを教わった。俺はその見返りとして元の世界の話なんかを提供したり、女神やダンジョンの話も包み隠さず、最終的には王宮仕えの侍女で一番かわいい子は誰かという話題で朝まで盛り上がる仲となった。

 この世界において、彼は親友と言っても過言ではない。


 ――閣下に迷惑はかけられない。

 この状況で俺に加担したとあれば、彼の立場が悪いのになるかもしれない。


「いえ、別に大したことでは……。失礼します」


 友に背を向けそそくさと退散する。

 しかし――手を掴まれてしまった。

 友の温かい手を、引き剥がすことなんて、俺にはできなかった。


「何か、訳があるね。……後で、うちに来るといい。なに、またいつものように語らおうではないか。ただの、世間話だ」

「閣下……! 感謝いたします」

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