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女神・ザ・クッキークリッカー! ―女神を殴るごとにレベル上がるんですがそれは―  作者: 八゜幡寺


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53:女王様も人が悪い

「うあっ! あれ、私……寝てました!?」

「ちょっとな。どうせその性格じゃ、俺が目覚めるまでろくに寝てないんだろ?」

「えへへ。勇者様には敵いませんね。ですが、立場的にも私個人としても寝ている場合じゃないんです。勇者様には早速ですが、陛下に謁見して頂きたいのです」


 断る理由もない。

 二つ返事で了承すると、ベルはキリっと真面目な顔でそそくさと部屋を出て行ってしまった。しかし子供の様にパタパタ走る姿が、不覚にも真面目な顔と似つかわしくなく、そのギャップにちょっと胸がキュンとした。かわいい。


 そういえば、着替えをベッドのわきに用意してあると言っていたな。

 前の世界から来ていたものは埃まみれの傷だらけ。みすぼらしく見られたのかもしれない。

 それにこんな格好で王様と対面するのもおこがましいというものだ。

 よし。着替えるか――。


「勇者様、謁見の準備もう出来てたみたいです! では参りましょ……あっ」

「あっ」


 あのね。ノック、しようね。

 自分で着替えろって言ったんだからさ。

 そんな赤くなられると、俺までなんだかすっごい恥ずかしい。


「誤解してはいけないけど……オークと比べたら、ダメだからね?」

「くくっ比べてません! というか、オークのだって見たことないですよ! 勇者様のが初めてです!」


 何これはっずい。少女にいけないこと言わせる背徳感に顔が火照る。

 癖になりそう……。



――




「異界の勇者よ。よくぞ召喚に応じてくれた。アダムス王国一同を上げて、其方を歓迎しよう」

「ありがたき幸せ」


 堂々とした振る舞いの淑女が威厳たっぷりに仰るので、俺は深々と頭を下げた。

 てっきり、王様と言えばふくよかなおじいちゃんか、厳格なおじさんかと思っていた。

 だが王笏を手にし、小さな頭に不釣り合いにも見える王冠を引っ提げて、玉座に座っているのだから彼女が王様なのだろう。


 思い返せば、ベルは陛下としか呼んでいない。

 女王陛下だったわけだ。名をジゼル・アダムス。夕焼けのようなオレンジ色の髪は王家の証だそうだ。


「既に知っているとは思うが、其方を召喚した理由は他でもない。魔王が現れ、世界が滅亡の危機に瀕しているためだ」

「存じ上げております。このままでは全ての生物が根絶やしにされるとか」

「その通りだ。魔王は存在するだけで世界中のモンスターを増強させるスキルを持ち、それらを従えることができる。そしてもう、何ヶ国もその手にかけてきた……人類の明確な敵だ」


 既に墜とされた国が何個も……。

 いや俺の到着が数週間早かったとしても止められはしなかった。無駄な責任を感じることはない。

 だが、ここから先は俺の責任だ。

 早急に魔王の行軍を止めなければな。


「分かりました。このアギト・オオワニ。勇者として、必ずや魔王を打ち滅ぼしましょう。では直ぐにでも、現在魔王が潜伏している居城へと向かいたいのですが……」


 この発言の途端、謁見の間に集まった者たちが一斉にざわつき始めた。

 ざわめきに耳を傾ければ、「なんと豪胆な」「勇者の勇は蛮勇であったか」「口先だけは勇ましいな」「都合のいい言葉を並べて甘い汁を吸おうという魂胆か」「殺す」などなど……。


 全然歓迎されてなくない!?


 余りのアウェー感に気持ちがゴッソリ削られた。俺のどんより俯く顔を見てもうそろそろ話やめて? 落ち込んでるの分からない? 声聞こえてるの気付かない?

 そんな願いは、女王様が王笏で床をコンコンと叩いたことにより、叶えられた。

 皆が一斉に口をつぐむ。


 ――いや、黙らない男がいた。

 男は俺と女王様の前に立ちはだかり、己が想いを叫ぶ。


「陛下ァ! 私は反対ですぞ! このような素性も分からぬ輩を……! 大方、そこの召喚士が失敗だと認めたくないが故に連れてきた偽物でしょう! 奴を即刻捉え、陛下を偽った罪を罰するべきです!」

「ほえええ!? ち、違いますよゾンボルトさん! 勇者様はちゃんと勇者様ですよ! 私がオークに殺されかけた時に駆けつけてくれたんです! 嘘じゃないです!」

「ふん! ならば貴様の目には勇者どころか、王子様にでも見えたことだろう! しかしだとしてもこの偽勇者の罪は変わらん! 打ち首になっても文句は言えまい!」


 ヒートアップしてベルをも巻き込んで、どうやっても俺を処罰したいらしい。

 こういう輩はうるさいので、手っ取り早く勇者だと信じてもらうためには、俺のステータスを見せるのが一番だ。


「ゾンボルトよ。我が国最強の騎士よ。お主の言い分は最もだ。確かにそこにいる者が本当に勇者なのかは、知る由もない。ベルが嘘を言って二人で口裏を合わせている可能性だって否定できない。……なんせ、王宮に到着した時は都合よく眠っておったからな」


 俺とベルに不信感を抱いたかのような女王の発言に、ゾンボルトは満足げだ。

 ベルは開いた口が塞がらないといった様子で、涙目になっていた。

 俺はというと……。


『済まない。少しだけ茶番に付き合ってほしい』


 そんな女王様の声が聞こえたことにより、この場は静観することにした。

 俺にしか聞こえていないらしいな。……魔法か。

 女王様を見ると、確かに俺に向かって、ウィンクをしてみせた。


「では、こうしよう。ゾンボルト。そこの勇者と手合わせしてみてはどうだ?」


 呆れて、嘆息してしまう。

 実力で黙らせろってことですか。女王様も、人が悪い。

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