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「これで分かった? 寄生してもアギト君の意識は保持できるし、体のどこにも異常はない上に、普段よりも格段に能力を上昇させることができるんだ。僕を寄生させるとお得だよ?」
まるで敵意は感じない。
それどころか先程までと同じく、俺の役に立ちたいと心から思っているのだろう気迫がある。
何より、何度も確認するが、こいつはそんな姑息な手を使わずとも俺たちを蹂躙できる実力があるのだ。
「ちょっと聞くけど、お前俺に殺意とかない? 友情冷めきってない?」
「いや、全然? それに仮にもし、僕達の意見が食い違って喧嘩することがあっても、殺すなんてあり得ないね。友達だもん」
なにこの子、ピュア過ぎる……!
今は友情なんて欠片も感じてないはずなのに、スキルで友達だと思わされていた時の名残で、いつまでも俺を友達だと信じ切っている。
その友情が、スキルによって洗脳された結果だとしても同じことが言えるだろうか?
そんなこと、どうでもいいけど。
……あ。今更ながら気づいた。
こいつ、アルテミスの体で俺にキスしてきた時だって【円卓の騎士の招集】の効果は解除されてたはずだな、そういえば。
なんだよ、今までの心配は全部杞憂かよ。
まあだからといって、寄生されてもいいってことでは無いのだが……うーん。
とりあえず、手順を最後まで聞いてみるか。
「後は簡単さ。主神に僕の元宿主をスキルカードにしてもらう。十中八九で【時空転移】になるから、君がそれを使う。君に寄生した僕が【時空転移】の能力を限界以上に引き上げる。ゴッドスキルを、神の力でさらに強化するんだ。流石にこのダンジョンだろうと、地上に繋がるはずだよ」
なるほど……。こいつは自分がスキルを使用する分には能力強化を行うことはできないけど、他人のスキルという形でなら可能なのか。
「拙者は? 拙者の役割はなんでござる?」
わくわくした様子でアルテミスがミゼーアに訪ねた。さっき『みんなの力を合わせれば』と言っていたのを耳聡く覚えていたようだ。
女神はスキルカードを作る役目があった。ミゼーアは実行犯。アルテミスは……。
「さっき寄生の見本になってくれただろ? ご苦労さま」
「えええ!? 拙者それだけ!?」
俺もそれしか思いつかん。
「冗談だよ。といっても、もう役割は完了してるんだけどね。それは、君のゴッドスキルをアギト君に授けること。これは女神がまだスキルカード持ってるだろうから、君自身がカードになる必要はないよ」
アルテミスにもちゃんと役割あったんだ。良かったね。
でも、何でそれが必要なんだ?
「おい、このバカに気を使って適当なこと言わなくてもいいんだぞ。要は、俺が使ったスキルカードをお前が強化してくれれば成立するんだろ?」
「いや、はっきり言って、【唯一無二の妙技】がなければこの作戦は通用しない」
……ダメだ。何の因果があるかさっぱりわからん。
「簡単な話だよ。転移のゲートが開いたとしても、このダンジョンの強力すぎる結界はそれをすぐに修復してしまうんだ。それこそ、【唯一無二の妙技】を僕の能力で更に底上げした超神速でなければ、通り抜けることは無理だね」
ははーん、ようやく合点がいった。それほどこのダンジョンが規格外過ぎるってことも、再確認したよ。
よかったなアルテミス。ちゃんと役割があって。
――唐突に突きつけられる。
それってつまり、俺しか……脱出できない?
ミゼーアを見る。
黒い弾性を孕んだ球体は、こくりと頷く。
「そうだよ。この方法は裏技中の裏技。一度きりで、一人きり。まあ瀧君には僕が寄生してるから実質二人なんだけど……。そうすると、主神とアルテミスはこのダンジョンに置いていくことになるね」
この方法だと、確かに俺は脱出できる。
俺だけは、生還できる。
……アルテミスと目が合う。
きょとんとした表情は、俺の視線に気付くと、にひひと八重歯を見せた。
「アギト様……」
女神の声に振り向く。
両手を合わせて祈るように……。いつもの優しい微笑みを浮かべている。
こいつらを置いて、俺だけでこのダンジョンを脱出する……。
もう二度と会えないかもしれない。
本当に、それでいいのか……?
俺は――!
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