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女神・ザ・クッキークリッカー! ―女神を殴るごとにレベル上がるんですがそれは―  作者: 八゜幡寺


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48:理論上の話

 いや、そんな見え透いた慰めはよせやい。お前さっき自分のスキルではこのダンジョンを抜け出せないって言ってただろ。

 不信感が顔にでていたようで、ミゼーアは慌てて弁明してきた。


「あ、確かに僕だけでは無理だよ。でも、ここにいるみんなの力を合わせれば、理論上可能だよ」

「ええー? 本当かよ。女神ですら脱出不可能なんだぞ」

「だから、一人じゃ無理なんだって。特に僕の力が重要なんだけど……まあとりあえず、準備だけでもしてみようか?」


 まあ、ものは試しにやらせてみるのもありか。

 別に急いでるわけじゃない。気分転換の余興としては十分だろう。


「そうだな、まあやってみろよ」

「ありがとう。それでは早速だけど、今からアギト君に寄生するね」


 なるほど、ミゼーアが僕の体を操って作業を進めていくのか。手足ないもんな、こりゃ一本とられた。

 殺すぞ。


「絶対嫌だわ。むりむりむり」

「えっ! 大丈夫だよ! 寄生すると言ってもちょっと中身を弄るだけだから!」

「尚更体は貸せねえよ。こわいこわいこわい」


 中身を弄られて何が大丈夫なんだよ。

 言ってることもやろうとしてることも気持ち悪い。


「アギト殿! 今すぐそいつから離れるでござる! ミゼーアの狙いは言葉巧みに体を乗っ取ることだったのでござるよ!」


 いつの間にか俺の背後で弓矢を構えていたアルテミスが、ミゼーアを牽制する。【こうげき】がなくなったものだがら弓を持つことにしたらしい。

 そんな指示に……従わないがな。

 息巻いているアルテミスを無視していると、ミゼーア本人の口からその理由が語られた。


「あのさ、アルテミス。そんな回りくどいことをしなくても、僕が少しその気になればアギト君なんて意のままに出来るんだよ。分かるだろ?」


 その通り。

 だから奴の提案は、本当に俺の為を思っての善意からだろう。

 ようやくそのことに気がついたアルテミスは「ぐぬぬ」と唸って、弓矢の構えを解いた。


 しかしやっぱり、寄生されるなんてちょっと……。生理的に厳しい。

 あ、それに俺に寄生した場合も全長10cm超えるからどの道無理案件だわ。


「うーん、寄生されるってそんなに悪いものでもないんだけどな。……あっ、じゃあアルテミスちょっとこっち来てよ」

「む、なんでござるか。全く」


 ミゼーアの頼みを素直に聞いて奴の元まで歩き出すバカテミス。

 このバカほんとお前バカ! なんでそうあっさりとそっち行っちゃうんだよ!

 どう考えたって「寄生されても大丈夫だよ。ほらこの通り!」って実践して見せるために呼んだんだろが!

 だからバカテミスって言われんだよ!


「うひょっ! にゅるんってしたでござりゅ!」


 もう寄生されたあああ!

 耳の穴から侵入されたあああ!

 その光景だけでゾクッと身震いする。

 いやそんなことはいい。問題は、ミゼーアが【円卓の騎士の招集(アーサーフレンズ)】の対象外になってしまったこと!

 どうする! くそ! アルテミスを、この手でぶち殺すしか、ないのか……!?


 アルテミスがブルっと白目をむいて身震いする。

 そしてこちらを見て、にやりと笑った。


「おお……! 何でござるかこの溢れるパワー! エルフ達に慕われていたあの頃に戻ったような気分でござる! うひょー! これは凄い!」


 ……あれ?

 え、アルテミスの意識はあるのか? 狼顔のように完全に体を乗っ取った訳じゃなく、本当に、力を引き出しただけ?

 いやまさか、だってあいつはもうスキルの効力はなくなってるんだぞ。何か裏が……いや、そんな回りくどいことしなくても、ミゼーアがその気になれば俺達は紙切れのごとく吹けば飛ぶような存在だ。


「おひょっ!」


 にゅるんとアルテミスの耳からひょっこり顔を出すミゼーア。

 いや顔はないんだけど、その立ち振る舞いはどこかドヤ顔を思わせた。

お読みいただき感謝でございます。

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