47:覆される前提条件
ミゼーアのこれまでは、孤独と闘争しかなかった。
やがて闘争がなくなると、孤独しか残らなかった。
孤独に飽きたミゼーアは、新たな闘争を求め続けた。
ミゼーアはその過程で女神との戦いに破れ、この神々の牢獄へと落とされた。それでも尚戦い続けた。
やがて闘争にも飽きたので、ダンジョン深部に八角錘の塔を立て、その中で眠りについた。
もう永遠に覚めることのない夢を見るために……。
――だが、主神の気配に目を覚ます。
こんな場所に幽閉した怨敵が突然現れたのだ。
それに闘争と孤独しかないミゼーアにとって、全力で戦える相手というのはこれ以上はない楽しみだった。
ミゼーアのゴッドスキルである【時空転移】は、ダンジョンの外部へと抜け出すほどの力はないが、ダンジョンの階層を無視して移動することが可能だった。
女神が深層まで降りてくるのが待ちきれず、ミゼーアは出迎えに行く。
そして、そこにいたのは――!
「友だったんだ」
「すげえ気持ち悪い」
黒ピンポンのミゼーアの話はだいたい分かった。
つまり俺は、ミゼーアからすれば【初めてのお友達】ということだ。
「着ぐるみの上からではわからない空気があることを知ったよ。外に出て、すぐピンときた……ああ、アギト君は僕の運命の友だったのかってね」
うん、それ間違いなくスキル発動してるね。
寄生してたときはあの狼顔の身長で測定されてたようだが、元の大きさになれば10cm以下だもんな。
俺の【円卓の騎士の招集】のスキルで友好的になってるだけだね。
洗脳じゃねえか。
「死ねって言ったら死んでくれる? 俺ら、友達だろ?」
「ごめん。アギト君の頼みなら出来る限りそうしたいけど、僕はもっとアギト君とずっと一緒に居たいんだ」
やっぱり命令に忠実になるわけじゃないから拒否るよな。ここで経験値にでもなってくれれば最高なんだけどな。
「ねえねえ、今度はアギト君のこと、いろいろ聞かせてよ。……どうしてこんなダンジョンに? あと好きな子とか、いる?」
「距離詰めるの下手くそかよ」
いやでもこれ、どうすっかな。
仲間になるなら相当強いのは分かるが、所詮はスキルによってそう思い込ませているだけだ。
有効期限が過ぎれば目が覚めるはずだし、そうでなくてもこいつが10cm以上のモンスターなんかに寄生すればすぐだ。
またあんな身も心もステータスも削る勝負はしたくないぞ。
女神に目を向ける。
何か案はあるか?
ダメだ。なんかアルテミスとキスしまくってる。
「アギト様の間接キス……! これが、アギト様の味……!」
「ぬわー! や、やめるでござる! んむむむ! んむちゅー!」
――いいじゃん。
あ違う。そんな場合じゃない。
こんな事態にあいつら何やってんだか……。あのバカ二人に懸命にサインを送りつつ、ここは俺が場を繋いでおかないとダメだろうな。
「俺は、あのクソ女神に無理やり連れてこられたんだよ。そもそも強制的に最弱の勇者としてだな――」
ただの時間稼ぎ。
――そのはずだが、俺はいつの間にかミゼーアに対して愚痴を零していたのだった。
こいつの落ち着いたような口調がなんか、話しやすかったんだ。
女神はストレスの原因だし、アルテミスはバカだから言ってもしょうがないし。
こんなまともな会話をしたのは、久しぶりだった。
ミゼーアは俺の話を真面目に聞いてくれた。
相槌のタイミングがよかった。適度に質問も挟んで、内容をしっかりと理解しているのも本当に話しやすかった。
そんな聞き上手なミゼーアが、ある提案を持ちかけてきた。
「地上に出たい?」
「そりゃそうだろ。そのために攻略頑張ってんだよ」
「僕の力だったら、可能だよ」
……なぬ?
えそれマジで?
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