46:暗黒ピンポン玉
アルテミスの口調が一変したかと思えば、その喋り方……ミゼーアか!?
こ、この野郎! こいつこそ、死んだと思っていたというのに! だってしっかりと経験値を得て、レベルだって上がったんだからな! どういうことだよ!?
畜生、アルテミスの体を乗っ取りやがって!
拳を振り上げる。
友の肉体を弄ばれた怒りが、鉄拳を炸裂させる。
後頭部の分厚い骨と俺のゲンコツとのぶつかり合いは、鈍重な音を響かせて、肘の先まで痺れるような衝撃を放った。
「ええっ!? 痛っ……! な、何をするんだ!」
「黙れよミゼーア! この死に損ないの下衆野郎! さっさとアルテミスを解放しやがれ!」
ちっ、【ライジングインパクト】は発動しなかったか。
だがあのミゼーアとはいえ、元がアルテミスのステータスじゃ大幅なパワーダウンは避けられまい。【こうげき】のステータスに至っては自分で喰っちまったからな、女子高生並みだ。
速攻でぶち倒せば、勝機はある――!?
んん?
アルテミスの、いやミゼーアの様子が変だ。
落ち込んでる……ようにも見える?
「え、もしかしてアギト君、怒ってるの……?」
「いや、馴れ馴れしくすんな。マジで。キモい」
「なっ……!」
なんだいきなり、こいつ。敵の罵倒をいちいち真に受けすぎだ。ただの悪口が精神攻撃として作用してるならこちらとすれば儲けもんだが、気味が悪い。
情緒不安定かよ。
「もしかして、アルテミスなんかでファーストキスを奪っちゃったの、そんなに嫌だった? だったらごめん……分かった、出るよ」
分かったって、一体何を――!?
――にゅるん。
身構えた刹那。アルテミスが白目を向きながら身震いすると、耳の穴から黒い粘液が流れ出てきた。
それはプルプルとゼリー状で、地面に垂れることなく耳たぶに溜まっていく。ピンポン玉くらいの大きさになるとようやく、熟れた果実が自然落下するかのごとくぽとりとそれは落ちた。
暗黒のゼリーは、プルっと震えて……。
「これでいいだろ? だから機嫌を直してくれよ」
……ごめん、意味がわからない。
このゼリーがミゼーア? でもこれって、まんまミゼーアの本体から流れ出たドロドロの体液だろ。
まさかあの狼顔も、アルテミスのようにただ寄生されて操られていただけなのか?
いや、それで奴の本体が姿を表したからといって、俺が機嫌を直す意味も分からん。
ん……!? おい、待て待て!
「アルテミスが、息してる……!?」
ミゼーア本体が抜け出た後に崩れ落ちたアルテミスだが、てっきりバラバラにされた体を適当に繋いだだけで、生きているように見せていただけだと思っていた。
だが服は切断された箇所から千切れてはいるが、その下に見える肉体は傷一つ見当たらない。
「ああ、僕は寄生対象の能力を最大限以上に活性化させることができるからね。こんなガワだけのハリボテ神だろうと、僅かばかりの不死性があればマックス以上に引き上げて、この通りさ」
……いや、うん。それはいいんだけど。
……なんで?
「何が目的だよ、お前……。不気味すぎる」
「何って……当たり前だよ! 敵であろうと、こいつはアギト君の仲間だよね。なら、これまでのことは水に流すし、不本意だけど助けもするさ。だって――」
プルンと震えるミゼーア。
黒く淀んだ色合いがキリッと表情を持った気がした。
そして、言い放つ。
「だって僕達は――友達じゃないか!」
「え?」
あこいつ狂ってるわ。
アルテミスの狂気属性に理性が崩壊したんだ。
そんな哀れみすら感じる暗黒ピンポン玉。
ふと女神は、思い出したように手を叩いた。
「あ、そうだアギト様。ちょっとステータスを見てみて下さい」
「あ? なんだよ。……まあ見るけど。ステータス・オープン」
用紙を広げてみれば、何やらユニークスキルがアンロックされていた。
――
本名:大鰐 顎斗
種族:人間
称号:狩猟神の盟友にして雷帝八龍の勇者 ←new!
レベル:1280 ←new!
HP:79/328
MP︰22/32
こうげき︰54
ぼうぎょ:120
とくこう:1
とくぼう:27
すばやさ:98
残高:5238 new!
【ユニークスキル】
・沈まぬ太陽
・不死王眼
・神々の食卓
・円卓の騎士の招集 ←new!
・???
・???
・???
・???
【スキル】
・ステータス
・ライジングインパクト:A
【備考】
これほどまでに、神々を手懐ける人間がかつていただろうか。主神と狩猟神はともかく、つい先程まで命のやり取りをしていた邪神にまでも、彼は友情を芽生えさせてしまった。
――
【円卓の騎士の招集】
・MPを10消費。全長10cm以下の生物は最大十二匹まで友好的になる。※使役・奴隷化などの主従関係にあるわけではない。
――
なんか新しいスキルを覚えていたようだ。
10cm以下の生物が友好的になるだと?
使役などでは無いから命令を聞かず、そもそもそれだけ小さい生物なら知能が無いに等しいから言い聞かせることもできない。
なるほど。ゴミスキルだ。
「おい女神。まさかとは、思うが……」
「ええ、アギト様。驚きですが、そうとしか考えられません」
目の前の暗黒ピンポン玉は10cmに満たない。
いやでも……こいつ、神だぞ?
虫や小動物はおろか、人間よりも知的な存在なはずだろ?
「アギト君。僕達はかけがえのない親友だろ?」
ミゼーアが仲間になりたそうな目でこちらを見ている!
仲間にしますか?
【はい】
【いいえ】
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