37:喰われた
――ひょろり。
ミゼーアに向かって投げ込まれた矢は、大きな放物線を描き、……奴のだいぶ手前にカランカランと落ちた。
……ん?
なんだ……どうした?
おおよそ、その辺にいる一般人に矢を投げさせれば、こんな軌道を描くだろうというような投擲だった。
脳筋エルフよりも【こうげき】が高いやつが? なんで? 油断を誘ってるのか? ……あの絶好の攻撃チャンスに?
アルテミスも驚きに瞳孔が散大している。
わざとじゃないようだ。
敵は……余裕綽々といった様子で、服のホコリを払っていた。
追い詰められていたというのに、ポーカーフェイスは得意なようだ。
「マズいでござるよ、アギト殿」
「あっ、バカこっちくんな!」
「あいたーっ!?」
俺の横に飛んできたアルテミスの頭を思わず殴りつけてしまった。
いやこっちきたら俺まで攻撃のターゲットにされそうだし、つい。
それにテンパってたんだ。死んだと思ったらお前生きてるし、桁違いに強い相手と結構いい戦いしてたし。
アルテミスは――滝のような汗。顔色も青白く、よく見れば全身が小刻みに震えていた。
は!? 何をされた? 敵が攻撃を仕掛けたようには……! まさか、最初に貫かれた時か!?
「お、おい! 大丈夫なのか!?」
「いや、相当ヤバイでござる。ちょっと手を――ふんっ!」
すっと手を差し出されたので、握手の要領で握る。何かと思えば、途端にアルテミスは掛け声と共に、その手に最大限の力を込めた。
――脳筋エルフよりも強大な【こうげき】ステータスでもって。
「うおおおおい!?」
思わず手を引く。なんで俺の手を握り潰そうとした!?
すぐさま確認。手……無事! 痛みもなかった。
あっぶね! フェイントかよ! なんで今ふざけた!?
「なにすんだよバカ!」
「いたっ! すぐ暴力に訴えるのは止めるでござる! ……しかし今、拙者は全力で握ったでござるよ。それなのに、アギト殿の手は無傷……これが、答えでござる」
あ? あれが全力だと。
驚いて瞬時に引き離したが、あんなのせいぜい、アルテミスの見た目通りの女の子ぐらいの握力しか感じなかったぞ。だから簡単に手が離れたわけで。
【こうげき】が10000以上もあるバケモノの全力とは、到底思えない。
まさか、ミゼーアは弱体化のスキルか魔法を持っていたということか? それも、スーパーマンを女子中高生並にまで劣化させるほど、強力な……!
「違う。アギト殿、そうじゃないんでござる。……そんな、生易しいものではござらん」
「いや、弱体化じゃないってんなら、一体なんだよ?」
青い顔して、アルテミスは突き付ける。
きっと、あの攻撃を受けたアルテミスにしか分からない感覚なのだ。それを、思うままに口にする。
「喰われた……としか、言いようがござらん……!」
お読みいただき感謝でございます。
少しでも面白いと思ったなら「ブクマ」「いいね」「☆での評価」お願いします!
ランキングに載ってこの作品をもっと広めていきたいです。よろしくお願いします!




