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女神・ザ・クッキークリッカー! ―女神を殴るごとにレベル上がるんですがそれは―  作者: 八゜幡寺


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19/77

19:長い付き合い

「ええええええ!? 貴方は、この世界を救う為に召喚されたんですよ!?」


 うん。与えられた使命をただひたすらに邁進するのは立派だと思う。

 でもな、神よ。

 お前が召喚したのは聖人君子じゃねえ。履き違えるな。

 そもそもこいつ……!

 自分の趣味でクソザコ勇者を召喚したくせに、よくも人を非難できるな!?


「もうこうなったら、地上に出してもらうまで俺は何もしないからな。モンスターに殺されたって構わん。どうせ出れなきゃどの道死ぬんだ。この世界も勇者がいないと滅ぶんだろ? お前は天界でのんびり世界の終焉を眺めてろ」


 ごろんと寝転がると岩肌が痛い。

 それでも突き放す素振りを見せつけてやらねば、この女神はいつまで経っても事の重大さを理解しようとしないんだ。

 奴に背を向けて目を瞑ると……、女神はすすり泣きながら、話し始めた。


 ――懺悔だった。


「ごめんなさい……。でも、本当に出来ないのです。ここは堕天した神々の牢獄。故に神の力では絶対に脱出は不可能です。ごめんなさい、ごめんなさい……」


 目を開けることができない。

 そんなことをしたら、――その顔を見てしまえばきっと、俺は女神を許してしまいそうだから。


 ぽたりと俺の頬に落ちた熱い雫。

 泣いて許しを請う女に本気で冷たくできるほど、俺は感情を捨てきってはいない。

 それでもばつが悪くてふて寝するのだが……。

 そんな俺の横顔に、女神は必死に言葉を並べた。


「勇者様……このような事態を招いた私を、如何様に罰しても構いません。ですがお願いします。どうか、このダンジョンに挑んでください。どうか世界を、お救いください……! 弱さを受け入れ、自らを犠牲にしてまで私のためにこんなダンジョンに身を投じた――他の誰でもない、貴方なら、きっと攻略できるはずです」


 いやお前のためじゃねーし、そもそも強制的に連れられたんだけど。

 熱い雫が何度も頬を打つので、そんな言葉を飲み込んだ。

 女神の話に呆れ果てて、盛大なため息が漏れた。


 よっこいしょと上体を起こす。

 湿った頬を拭い、女神に向き直る。うつむく女神の脳天に、俺はそのまま話しかける。


「……なあ。【貴方】とか【勇者様】とか勝手に呼んでるけど、俺には【大鰐おおわに 顎斗あぎと】って名前があるから。面倒くさがらないでそう呼べよ。……これから、長い付き合いになるんだからな」

「えっ……では!?」


 瞬時に顔を上げる女神は目をまん丸に見開いて、俺の言葉の真意を問うた。

 俺はもう一度深いため息を吐くことにした。


「一日二日で攻略できるダンジョンじゃねえだろ? すぐに死ぬつもりもねえ。その代わり、しっかりとサポートしろよ。お前にはその義務があるんだからな」


 ……いい場面だ。

 我ながら思う。いい場面だ。

 だからこれは――不問にしよう。


 女神の眼球がカラッカラに乾いてるのは、見なかったことにしよう。

 ……え? じゃあ俺の頬に垂れてきたあの水滴はなに?

 

「……じゅる」


 女神が袖でよだれを拭いている。

 は? キレそう。


「お前、人の横顔覗き込みながらよだれ垂らしてたの? おいしそうだったの?」


 女神は頬を染めて「てへっ」と恥ずかしげに笑うのみだった。

 否定して?

お読みいただき感謝でございます。

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