16:尊い犠牲
……チクリと心を刺すこの感情こそ、モラルと呼ばれるものなのだろう。
些細な復讐を果たした今。いくばくかの鬱憤晴らしにはなったが、頭を押さえてしゃがみ込む女神を見下すも「ざまあみろ」と思う心情には到底なりえなかった。
それよりも、だ。
テッテレー。
なんだこのへなちょこなファンファーレは。
女神を殴って間もなく、頭の中に直接響いてきたこの不快音に眉根を潜めずにはいられない。
どこかで聞いたことがある。それもつい最近……昨日か一昨日だったか?
いや、違う思い出した。
このダンジョンで、気を失う直前だ。
――レベルアップ。
そうだ俺はあの時、確かに感じ取った。
レベルアップの手応え――。
即座に手元の紙切れにに目を落とす。
俺という人間の【強さ】なんて曖昧なものが記されているステータス用紙の、本名・種族・称号と並んだ一行空けてその下。
――――
本名:大鰐 顎斗
種族:人間
称号:八龍の勇者
レベル:3 ←new!
HP:5/5
MP:1/1
こうげき:3
ぼうぎょ:3
とくこう:1
とくぼう:1
すばやさ:6
残高:60 ←new!
【ユニークスキル】
・沈まぬ太陽
・不死王眼
・???
・???
・???
・???
・???
・???
【スキル】
・ステータス
【備考】
最弱の勇者。レベルは上がったがまだ女児の方が強い。
――――
レベル:3と書いてある。
さっきまでは確かにレベル:2だった。
今しがたの記憶が抜け落ちてるんじゃないかと疑いたくなるほど、女神はケロリと話し出す。
「あれ? おかしいですね。敵を倒さないと経験値が手に入らない仕組みなはずですが……女神を殴るなんて貴重な経験が反映されたんですかねえ」
「むしろレベルが1上がる程度の経験にしかならねえのかよお前ショボいな」
あと仕組みって言うな。
まあ閑話休題。今はユニークスキルだ。
「あ、スキルの詳細を知りたい場合は、スキル名をタッチすれば情報が頭に浮かびますよ」
「あ、はい」
心を読むなと言うに。まあ指示通りにしてみる。
――――
【沈まぬ太陽】
・自身の周囲を照らす。光量は調節可能だが、完全に消すことはできない。
――――
なにこれゴミすぎない?
一瞬でも期待した俺がやはり馬鹿だったか……はっ!? 女神がめちゃくちゃ嬉しそうに口元を押さえている!
こっ殺してえー!
いや、まだだ!
こっちにはあと一つ、しかもかなり有用そうな鑑定スキルがある!
未だ毒キノコしか鑑定できてはいないが、条件さえわかればいくらでも応用が利く。異世界チートのテンプレのようなスキルだ!
いざ!
――――
【不死王眼】
・毒物を見分けることができる。
――――
……ん?
あれ、目が霞んで……。
気のせい、だよな? うん、気のせいだ。
そそ、そんなこっことが……、あるはずがない。
そうだ、もう一度調べてみよう。そしたら――。
――――
【不死王眼】
・毒物を見分けることができる。
――――
「……ぐふっ」
な、ばかな! こんな……!
畜生! ――微妙すぎる! 使え……るか!? いやギリッギリでこれ、ゴミスキル!?
ぐっぉおおお! 微妙だ!
――いや勇者だけに許されたユニークスキルとしたら確実にゴミだわ!
どうしろって言うんだ!
これでどう戦えと!? なあ! 女神よ!
奴を睨む。
恍惚とした表情で、頰を上気させて……ぽつりと呟く。
「はぁ……。尊い……」
「あああああああああ! あああああああああ! っらぁ! おらっ、おらぁっ! 死ねえ!」
何度も何度も殴りつけた。
細い腕を弾き飛ばす。柔らかい腹部に拳がめり込む。胸を踏みつける。顔面も踏みつける。蹴り飛ばす。
――二分もすれば、そこには血ダルマが転がっていた。
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