15:ステータス
――女神が見つめる。
俺の気まずさなんて知りもせず、早く早くとはやし立てる。
一応、俺にも罪悪感というものがある。
精神が擦り切れる寸前だったとはいえ、相手が諸悪の根源だったとはいえ……女に手を上げたんだ。
こっちの世界は知らないが、地球じゃ女を殴るなんてモラルに反する蛮行だ。少なからず胸が痛む。
確かに、殴った感触・リアクション・鼻血に塗れた表情……。
それらが暗く淀んだ気分に、スーっと心地よい風をもたらしたのは事実だ。
心が洗われたと言っても過言ではない。
だが、それも一瞬だった。
すぐに虚無感と罪悪感に襲われた。
俺の中の良心が、こんな悪党にも同情してしまう。
まあ、女神の登場に安心したのか、情けないことに気絶してしまった俺は、そんな被害者の膝枕で目覚めたのだった。
俺の内心などなんのその。殴られた痕跡を残すことなく元通りの女神は、意識を取り戻した俺を覗き混んで、平然と用件を伝えてきたのが現状である。
その用件というのが――これだ。
「ステータス・オープン!」
「そうですそうです! すごい! よくできましたね! 今の呪文が、自身の細かな状態を確認することができる魔法――【ステータス】です!」
ぽんっと目の前に現れたのはペラ紙一枚。触ると不思議な感触で、厚みがないのに、ふかふかと柔らかい。
幼子を褒めちぎるような口調に、羞恥心と、どことないまんざらでもなさを覚えつつ、それに目を通す。
――――
本名:大鰐 顎斗
種族︰人間
称号:八龍の勇者
レベル:2
HP:5/5
MP:1/1
こうげき:3
ぼうぎょ:3
とくこう:1
とくぼう:1
すばやさ:6
残高:40
【ユニークスキル】
・沈まぬ太陽
・不死王眼
・???
・???
・???
・???
・???
・???
【スキル】
・ステータス
【備考】
最弱の勇者。おそらく女児にも競り負ける。
――――
うん。基準はわからんが、殆どの数値が一桁だしもの凄く弱いのは分かる。
称号も何だか、どことない間抜け感が半端ない。実際に生で呼ばれてみればまた違うのだろうか。
コマンダーとか言われたくなさ過ぎるけど。
「なあ、ユニークスキルってたしか八つ貰ったんだよな? これ二つしか開示されてないぞ。ゴミスキルの上にアンロックが必要とかおちょくってんのか」
少しでも使い道がありそうなスキルなら効果のほどを見極めて、少しでも生き残る可能性を見出したい。先ほどのように、焼け付くほどの熱と閃光を生み出せる副次効果があったりするスキルが他にもあるはずだ。
そのためにはさっさと残りのスキルを露わにしてもらって、各々の効果を吟味しなければならない。
そんな苦悩を知ってか知らずか、女神は微笑み顔で意地悪く言うのだ。
「うふふ。スキルは一回でも使用しないと見ることが出来ないようにしたんです。だって……そっちのほうが楽しくないですか?」
おちょくられてた。
無意識に手が上がる。
すぐに我に返ると、固く握られた拳を今にも振り下ろさんとする己の意志を、必死でなだめた。
ダメだ。男が女を殴るなんて紳士的じゃない。
それに、恐れ多くも神だぞ。さっきのは紛れもなく奴の落ち度だったし致し方なかったとしても、二度目とあれば流石に怒りを買って天罰が下るなんて十分に考えられる。
……ん? 待て待て。
そもそもこの状況って、明らかに天罰よりも重い実刑を食らったようなものだよな。
なら今更天罰なんて、恐れる必要はない?
いやいや! そうだとしても相手は女だ。華奢で色白なか弱い乙女だ。そんな女性に手を上げるなんてモラルが許さない。
……モラルに許されなかったとして、この状況よりも悪い事態に陥るのかって話になってくるわけだが。
女神の暴言からこの間、0.01秒。
俺の拳は女神の脳天に直撃した。
「んラァっ!」
「あぎゃ!」
低音を孕んだ衝撃が腕全体にビリビリ響く。
殴打の威力に耐えきれずに女神の頭が瞬時に下方へと追いやられたことにより、相反して金色の髪がふわりと優雅に中空を漂う光景が、なんとも芸術的に思えた。
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