14:女神降臨
あれからしばらく目を閉じて最後の時を待った。
痛みはない。
殺されたことにも気付かないほどあっという間に死んだのか?
だとしたら、いやあ……怖かった。
けど、殺されてしまえばもう、案外いい思い出話だな。痛くなかったし。
つーか、あんまり異世界要素なかったな……。
骸骨に食べられるとか、ファンタジーってよりホラーだわ。むちゃくちゃ怖かった。しばらくは夢に見る。
……俺、ホントに死んだのか?
試しに、本当に様子見程度に、すこーしだけ……顔を上げてみる。
スケルトンと目があった。
目というか顔というか、鼻先三寸の位置でじっと俺を見ているのだ。
景色いっぱいの骸骨フェイス。
観察されてた。まだ死んでなかった。
いやもうひと思いに殺してくれ。生への希望が、執着がでてきてしまう。すると今度は恐怖心がふつふつと沸き起こってくるんだ。
再び顔を伏せて、ネガティブな思考を続けて自らの死を願う。できる限り楽な死を望む。
……だがさっきと同様に、いくら待てども、すぐそこまで迫っている死は一向に訪れない。
代わりに、聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。
「うふふふ。ごめんなさい、びっくりしちゃいました? 私ですよ、顔を上げてください」
鈴が鳴るような笑い声。おしとやかな口調。
その内面にドス黒い邪悪を溜め込んだ――女神!?
すぐに顔を上げる。
白く透き通った布で体を覆うのみの格好だが、決して恥部が目に映ることはない。布の折り目とか、髪の毛とか、あとよく分からない煙なんかで見事に隠しきっている。
そしてその御尊顔には、夏祭りのお面のように、スケルトンのしゃれこうべがあてがわれていた。
「ばあっ! なーんて、うふふ。よくぞあの局面を抜け出せましたね。見守っていて手に汗を握りましたよ!」
「なんで、女神様が……いや、そんなことより」
どうして女神がここにいるのかわからないが、こいつ……。口ぶりからして、俺がスケルトンに食われそうになっているのを、ただ傍観していたようだ。
そして、今度は俺を驚かせるためにこの曲がり角でじっと待っていたというのか。
こちとら、絶望的な状況を強いられて、それでも必死に生き延びるために抗っていたのに。
そんな事態を招いた元凶は、のんきにケラケラと笑っていたのか。
――気づいたら、拳を振り上げていた。
「死ね!」
「んでゅっ!?」
人生で初めて、女を殴った。
女神も、まさか殴られるなんて思ってもなかったようで、驚きの表情を鼻血に染め上げてぶっ飛んで、地面に倒れ伏した。
ちょっと、スッキリした。
同時に、急激な眠気に抗えず俺は意識を闇に落とした。
脳内で、こんな状況とは不釣り合いなほど愉快なファンファーレが鳴り響くのを聞きながら……。
なぜか俺は、レベルアップというものを自覚した。




