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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第五襲 魔具争迅編
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商売都市 ――ヘパイス・リア――

 私たちが生きる時代よりも大いなる昔――一対の不思議な隕石が大地に降り注ぎました。


 衝突した不思議な石は割れて降り注ぎ、今のヒノモトの大地を作ったのです。


 それから1000年後――地震、噴火、台風といった自然災害に人々は悩まされます。


 どうにかして、自然災害から身を守る方法がないのかと絶望していた時に、独りの旅の魔女が現れました。

 旅の魔女が大地に魔力を放出すると、不思議なことが起こります。


 大地が虹色に輝きだし、やさしくてあたたかい虹色の光りで包み込むと、やがて緩やかに自然の大災害は収まっていきました。


 感謝する人々たち。

 その中でヘパイス・リアのある鍛冶師は彼女がまるで大地を武器のように扱っているように見えたことから、彼女がいた場所をピッケルで掘ろうとします。


 すると、魔力を通すことで不思議に輝く鉄鉱石が掘れました。


 これを鍛冶師は魔鉄と呼ぶようになり、唯一掘れる鉱山をマジアン・マインと名づけられました。


                      ――るるべ『ヘパイス・リア観光』――





 燦々と晴れた日差しに、じわりと肌に滲む汗。

 マジアン・マインと呼ばれる魔鉄鉱山の近くだから、この町は余計に暑いと感じられる。

 熱が反射してじわじわと焼いてくる。


 町のありとあらゆる場所からはカンカンカンとひたすら魔鉄を打ちつける音と商人たちが元気に物を売る声が無尽蔵に聞こえてくる。


 商売都市――ヘパイス・リア。


 この町の特徴はレインドラに出て5秒もすれば、しかと分からせられた。


 こうして私たちは無事に着いたわけだが、

「あつーい! ちょ~あつ~い! チンチンじゃ! チンチン!」

「そうですねぇ……。流石に蒸し暑いです……」

「アルムンとマーリンは今頃、涼しい部屋で……はぁ……、うらやまぁ……」

「アルムさんは怪我しているからしょうがないじゃないですか! ニヤさんのおかげですよ!」


 町にヴェールの声が大きく響き渡る。

 幼い子供のように文句を吐き散らすのだから、町人たちや旅人が振り返っては青ざめて引いていく。

 それはもう、彼女に怒っているハイネが恥ずかしくなるぐらいに……。

 あぁ、たしかに外は暑い。邪魔だと思うぐらいの汗がひたりと滴り落ちて、どこかで水分を取らないと熱中症になってしまう。

 叶うのであれば、レインドラに戻って、陽が落ちるまでるるべの『ヘパイス・リア観光』のを見たい。


「あっ! HEAVEN(ヘヴン)じゃ! HEAVEN(ヘヴン)!」

「へぇ~! 異世界文化がこんなところにもあるんですね~!」

「アイス! こんな日こそアイスじゃ! コンビニ行くぞ~!」

「それよりも、セーレさんのところに行くんじゃなかったのですか?」

「うっ……、うぅ~ん……、あっ、アイスはハイネンのおごりね! よろしくっ!」

「えぇぇぇえ~~! 私のおごりって……こらぁ~~! 話を変えるんじゃありません!」


 あははと満面の笑みでコンビニに走っていくヴェールと汗だらだらで走るハイネ。

 突然、コンビニに向かって走ってしまったから私は彼女たちについていけなかった。


 行ってしまった。と、後悔してももう遅い。

 それはそうと、珍しくヴェールの言葉が詰まって聞こえた。

 そんなに学校時代の友と会うのが嫌なのかと考えながら歩く。


「ちょ~っと! そこっ! どいてっ!」


 痛い衝撃が身体に駆け巡る。

 声が聞こえてくる頃には既に遅く、背後から勢いよく走ってきた人に思いっきりぶつかった。

 

「いたたたたぁ……」


 ぶつかってきた人を見ると、赤に青、緑といった様々な色が散りばめられたマントを羽織った黒髪ショートカットの女性。私と同い年ぐらいか、それとも、少し年齢が上か。

 彼女は膝を擦りむいたようで痛がっていた。


「あぁ、お姉さんごめんね……大丈夫?」


 たかがぶつかってきた程度だから、そこまで痛くない。

 ――――お姉さん……!? 私が……!?

 動揺――私はもうお姉さんと言われる年頃になった……!?


「待てェーー! 今日こそ出して貰うからな!」


 声がした方へ振り返れば、身なりをしっかりと整えた身長が高そうな男性が2人。

 息を切らして彼女を死ぬ気で追いかけているようだ。


「うわぁぁぁぁぁあああああ、悪徳業者に追いつかれるよ!」


 さて、――私はどうする……?

 ヴェールを待つか……?

 目の前の半べその女性を助けるか……?


「ドジ、あの人から逃げている……?」

「えっ、うん」

「分かった」


 すまない、ヴェール、ハイネ。私は困っている人がいたら身体が勝手に動いてしまうようだ。


「ひゃぁあ!? 僕をお姫様抱っこ!?」

「魔術書!」


 彼女の腰をやさしく勢いよく抱き抱え、魔術書を出現させる。身体の魔力を足に集中させる。

 眼を瞑り、どうやって逃げるか考える。


「すっ、すごい! 風が吹き始めた!」


 追手たちの足音が聴こえる。


 ――一歩。


 ――――また、一歩。


 ――――――更なる、一歩。


「俺たちだって明日がある! 家族もいる! だから――」


 徐々に徐々に近づいてくる足音は私たちを捕まえようと手までも伸ばしてくる。


「お願い! 僕を助けてっ!」

「風魔術! 【(ウインデ)】!」


 彼女の願いに答え――地面に垂直に風魔術をぶつけ、勢いよく空へ飛んだ。


 最後の追っ手の悲痛な叫びから何か申し訳ないことをした気がする。でも、追っ手の代わりに私がどうして逃げたのか知ろうと思う。

 もし、罪人となれば、ジャンヌに連絡魔術を送れば解決してもらえるだろう。

 ヴェールたちには申し訳ないが後で連絡魔術で事情を伝える。すまない。


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


【ハイネ視点】


 コンビニから出て、ヴェールさんはアイスを一口、


「うまぁ~~! 身体が若返るわぁ~~!」


 私の財布はヴェールさんのせいでゆるゆるです……。

 勢い余って私までアイスを買ってしまいました……。


「というか、もうとっくに若返っているじゃないですかっ!?」

「これは……持病ってヤツじゃ……!」


 えっへんとない胸を張っても無駄です。私は本来のヴェールを知っています。


「はぁ……とため息をつきおって! 幸せが逃げてしまうのではないかっ!」

「そのアイス、私のお金で買ったアイスですからっ! 私のっ! おっ・かっ・ねっ!」


 わざと聞こえるようにため息をついてやりますからっ! 耳にっ!

 はぁ~~!


「風みたいに消えたッ……!?」

「シグレウキ先生はどこに行った!?」


 コンビニの目の前で二人組の男性が声を荒げています。どうしたのでしょう……?


「シグレウキ先生……? どっかで聞いたことある……」

「人の会話に興味持つなんて珍しいですね!」


 確かに私もシグレウキ先生の名前を存じ上げております。

 ヘパイス・リア在住の著名な魔具デザイナー。

 シグレウキ先生のデザインする特注の魔具は現在、注文すると十年はかかると小耳に挟んでおります。

 そんな方ががたいの大変いい男性に追いかけられている……?

 (わたくし)、嫌な予感がします。


「待てよ……! キリエンはどこに行ったっ!?」


 そうです……! キリエさんがいない……!

 って、

「ヴェールさんがアイス買いたい欲に忠実すぎて、キリエさんを置き去りにしてしまったからはぐれたんですよっ!」

「ゲっ、我のせいっ!?」


 ゲって言いましたね。だから、アルムさんからロリニートって言われるんですよ!

 アルムさんが隣にいたら酷くしばき倒されています。この場にいないのが救いですね!


 「うむ」と呟くと成人男性を睨むヴェール。

 しばらくして、

「まぁ、大丈夫じゃろう! キリエンだし!」

 心配して……って――コラっ! ほかりっぱ!


「我たちは先に泊まる場所を見つけるぞ! 見つけたら連絡魔術じゃ! それで大丈夫だったら全てよしじゃろう!」

 アハハと笑うヴェール。私はこの先が心配です……。

 キリエさん……、何事もなく帰ってきてくださいね……。無事を祈ります……。

投稿が遅れてすみません!

私生活忙しくて遅れてしまいました!

書き貯めを二か月ぶりに放出するぜぇ……!

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