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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第五襲 魔具争迅編
84/85

時は進み、時に巻き戻る ――タイム・リフレイン――


 かち、――。


 かち、――――。


 かち、――――――。


 と、時の流れる音が空気を支配し、心地よく包んでくれる。ちょびちょびとアイス・ミルクティーを飲みながら改めて店内を見渡した。

 しかし、それにしても〈リンカネーション〉は時計の数が多すぎる。

 おばあちゃん家でよく見た数字で書かれたものからなんの言語か分からないもの、一定の時間になると小鳥が出てくるものまでが辺り一面の壁に掛けられていた。


「私の趣味ですよ~! いいでしょう?」


 彼女はにっこり。〈リンカネーション〉の偉い人が片眼鏡を光らせて、(キリエ)の目の前の席に座って凝視していた。いつの間にか相席にされて迷惑極まりないし、別に私を見続けたところでなにが面白いか全くもって分からないと思うが……。

 ――邪魔だ。ゆっくりとアイス・ミルクティーを独りで飲みたい。素直に業務に戻ってほしい。


「このカフェは偶然、異世界転生者が来ても満足してもらえるように作りました。ほら、マナ・リアって異世界が最初に流行った都市でもありますから!」


 ヴェールのおかげで彼女が話さなくとも大体分かっている。心底うんざりした顔で話を聞いているのを彼女は分かっていないのかと思う。


「異世界ブームに乗ろうとしたわけですが、事実、異世界転生者はこの世界に食べる物には困ると思います! だったら、私が異世界料理を再現しようではありませんかとこのカフェには転生者が喜ぶメニューを用意したのです! 味はどうだったでしょうか?」

「そっくりそのまんまだったと思う」

 彼女の熱量に圧されながら答える。

「よかったです!」


 残念だが、ここに来て飲み物とケーキしか食べていない。が、味は元いた世界と一緒だと思う。どうりでメニュー表を見ればおばあちゃん家や学校の給食で食べた物の名前があるわけだ。ハンバーグ定食にからあげ定食、ラーメンに味噌汁。異世界にあるのにはだいぶ違和感はあるが、異世界から来た人達は似ている味があって嬉しいと思う。

 私なんか、幼い頃からマロニーメイト1本で空腹をしのぐ時もあったから。


「ずいぶん、異世界に拘るんだな」

「ふふっ、そうですね! 憧れていますから!」

「そんなに憧れるもんなのか?」

 アイス・ミルクティーの底が近づいたから飲むのを止め、そろそろ目の前のケーキをフォークで割ろうとする。

「えぇ、憧れますよ! 向こうの世界では動く箱がたくさんあって、素晴らしく高い建物があちらこちらにあって、美味しそうな食べ物ばかりで――」


 かち、――。


 かち、――――。


 かち、――――――。


 と、時の流れる音が空気を支配し、心地よく包んでくれる。ちょびちょびとアイス・ミルクティーを飲みながら改めて店内を見渡した。

 しかし、それにしても〈リンカネーション〉は時計の数が多すぎる。

 おばあちゃん家でよく見た数字で書かれたものからなんの言語か分からないもの、一定の時間になると小鳥が出てくるものまでが辺り一面の壁に掛けられていた。


「ふふふっ、いいでしょう!」


 彼女はにっこり。〈リンカネーション〉の偉い人が片眼鏡を光らせて、(キリエ)の目の前の席に座って凝視していた。いつの間にか相席にされて迷惑極まりないし、別に私を見続けたところでなにが面白いか全くもって分からないと思うが……。

 ――ん……? 私はついさっきこの手でケーキを割ろうとしていた。なのに、アイス・ミルクティーを飲んでいる。それに、量がいっぱい……。

 これ、デジャブか……? 私はケーキが楽しみすぎて、そう感じてしまっただけか……?


「実はこのケーキ、アフォガートでして」


 彼女がいつの間にか持っていたコップから黒い液体が注ぎ込まれる。


「アフォガート……? 聞いたことないな」

「おっと、お客様には知らない()()で流行った料理でしたかね……?」


 真っ白いケーキが漆黒に染まっていく。


「この染まりよう、まるでこの世界のようですね。いつの日にか異世界からやってくるお客様で無茶苦茶にされてしまいそう」


 ふふふっと笑いながら私をじっくりと見つめてくる。今度は視線で釘でも刺すかのように。


時女(ときおんな)、何者だ……?」

「私はトキノ。トキノ・クロノシス。以後、お見知りおきを」


 ゴーン、ゴーンと大きな鐘の音が〈リンカネーション〉に鳴り響く。


「では、仕事に戻りますね! また、お待ちしております。()()()()()()()




 ドアから鈴の音が鳴り響く。外は夕闇。星が広がっていた。

 アフォガートは美味しくいただけたが、しかし、あの時女が気になって仕方なくてしょうがなかった。何かをもう一度繰り返した感覚は確かにしたはず……。


「アイツのこと怒っていたら腹が減ったわ! 行くわよっ!」


 荒々しい口の女が黒い鎧を着た騎士の姿をした人を連れて〈リンカネーション〉に入っていく。

 気のせいだったかもしれない。何か変なことがあったなら、客は入ってこないだろう。きっと、私が見た白昼夢に違いないと思っておこう。


 よし、帰る。ヴェールたちが待っているだろうから。

 私は〈リンカネーション〉を後にし、ギルド〈デイ・ブレイク〉目指して月明かりに照らされた道を走った。


前話を投稿初日に見てくれた兄貴すまん!

お店の名前〈リンカネーション〉でした(涙)

めんご!


(2025/03/23)

重複して変な文章も直しています!

めんごぉお!!

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