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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第五襲 魔具争迅編
83/85

ひとまずのお休み ――ピース・タイム――


 答え――今すぐ直しに行くのは難しいらしい。


 (キリエ)たちギルド〈デイ・ブレイク〉は無事にマナ・リアまで帰ってこれた。

 本当だったらマナ・リアによらずにヴェールの旧友のもとへ行きたかったが……。

 しかし、旧友と連絡魔術が繋がらない。どうやら彼女は拒否しているようだった。

 ゼネに聞けば、「えっ、セーレさんですか? 今は個人の魔具専門の鍛冶師としてちょーちょー有名ですから繋がるわけないじゃないですか!」とひと蹴り。

 さらには、「学生時代セーレさんにウザがらみしてましたよね? だったら、嫌われているんじゃないですか?」と追い打ちでふた蹴りをくらわす。


 こうしてヴェールは日頃の行いに後悔しながらどうやって行くか模索し、ヴェール以外のみんなはようやく出来た休日だった。

 しかし、アルムは先日の依頼で重症だから当分はベッド生活。

 ニヤはアルムの面倒。

 ハイネはヴェールが出したゴミの掃除、洗濯、次の依頼に向けて灰の調合。


 そして、私は晩飯のための買い出しに出かけ、帰りに本屋で買ったろろべのヘパイス・リア旅行本をカフェ〈リンカネーション〉でアイス・ミルクティーを飲みながら読んでいた。


 ミュゼ・リアとは真反対の場所――――商売都市ヘパイス・リア。この国の三大都市の一つらしい。

 魔鉄工業が盛んで『スプーンから魔具まで』がこの都市で作られては各地に送られている。

 名物グルメと言えば、海洋危険生物を小麦粉で揚げた地獄焼きというもの。それを香辛料をかけて口に含めば、地獄の火から逃げた解放感に満たされるという……。

 うむ……――絶対に食べたい、行くなら絶対に……!


 ページを捲ると、セーレという女性が一際目立っていた。

 ゼネが連絡魔術で言ったとおりのことがろろべにも書かれていた。彼女は一線級の魔具のデザイナーであり、鍛冶師であると。作る魔具はとても個性的で今の若者に人気を集めているらしい。

 スパスパ・ドラゴンの尻尾を丸ごと使った鋭利な大剣に、

 杖? というよりかは小学生が拾ってそうな木の枝そのもの。

 トツゲキ・マ・グロの生首をそのまま使ったグロッキーなハンマー。

 ヴェールが言ってた名前は確かセーレと言っていたはず……。

 ――待てっ! これでは旋風刃が彼女の奇抜なインスピレーションの巻き添えになってしまうではないかっ!?

 風から連想されたら旋風刃の刃は草原の草そのものになってしまうだろうし、ぐるぐるの台風を連想して、刃すらもぐるぐるの渦を巻くことになるのかもしれない。


 ――嫌だっ! 私の形見がこうなるなら絶対にっ!


 そういえば、注文した私のケーキが来てなかった。

 定員も忙しいだろうから急かすようなマネをしたくないのだが……、

「お待たせしました~! ご注文のアンティーク特製ケーキでぇ~す!」

 と思ってたところ丁度よくケーキが来た。

 振り返って持ってきた定員の顔を見れば、

「よろしかったらお客様の感想を伺いたいのですが?」

 にっこり。なんというかこの人、あざとい。

 銀髪で慧眼の女性が立っていた。接客している定員と比べるとエプロンもしてない。執事服? 多分、なんかの正装だろうが違う。なんだかこの世界と雰囲気があわない服を彼女は着ていた。

 おそらく――〈リンカネーション〉の偉い人なのか?

 それはそうと、私は独りでこのケーキを食べたい。だから、席を立つ。

「ごめんなさい! ほんとに! お店をより良くしたいの! 私、このお店のオーナー!

偉い人! 分かる?」

 分からないことにしてその場を離れ……

「分かった! 次回から使える割引券も付けるから! 旅人は無料では仕事を受けない。そうでしょ?」

「これで美味しいものは食えるのか?」

「えぇ、自信を持って! お客様の“舌”に合うのであれば」


 この人――笑顔が怖い。


(わたくし)、トキノと申します。以後、お見知りおきを」


 慧眼の瞳が私が元いた世界の姿になったのをこの“眼”は見逃さなかった。


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