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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第一襲 独捨仲入編
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第1章幕間 ゼネの【報告書】


 昨日、私が元気に仕事を依頼している時です。


 黒髪ショートが綺麗なキリエさんが疲れた顔で少女を引き連れて帰ってきました。

 無事に暗殺依頼を完了して戻ってこられたので安心しましたが、引きつった顔が気になりました。

 きっと人が沢山いたからなのでしょう。

 何故ならキリエさんは人が嫌いだから。

 私の対応を見て、心底人のことが嫌いだと思いました。

 特に私が「友達になりましょうよ!」と言った時です。

 キリエさんはとてつもなく顔が引いていました。

 それはもうドン引きを超えてです。

 私は悲しくて悲しくてたまりませんでした。


 おっと、話を本題にします。


 一つは、催眠魔術を使うレイプ魔の暗殺依頼の成功。


 被疑者レイ・パドリックは催眠魔術を使って女性を拉致してレイプ、その後、殺害する極めて悪質な犯罪者です。

 ここで私が注目したいのは、¨なぜ、被疑者は殺すのか¨です。


 私は彼も異世界転生教の一人だったからだと考察しています。


 理由として、

 (Ⅰ)生首に異世界転生教の首輪がある。

 (Ⅱ)脳が正常の値ではない。おそらく薬でやられてしまっている。

 この2つを上げたいです。


 異世界転生教が異世界に行くための条件は、¨自分が死ぬ¨もしくは、¨多くの命が集まる¨です。


 このことは現在、指名手配中のエンド・ディケイドが掲げていた条件ですから、私は早急に犯罪現場を調査する必要があると考えます。


 また、被疑者の生首からもデータは取れると思われます。大至急、解析を行ってください。


 次にキリエをギルド〈デイ・ブレイク〉に強制的に入れた理由です。


 彼女は暗殺者として優秀です。これまでも幾度も暗殺依頼をこなしてギルド管理協会に帰ってきてくれました。

 とても優秀な暗殺者です。


 しかし、まだ成長できる。


 彼女は尊敬できる人とあまりにも出会ってないから、人を見ただけで逃げる性格をどうにかしたかったのです。


 だから、私はギルド〈デイ・ブレイク〉に入れました。


 賛否両論があると思います。

 もっと真面目に働くギルドがあるじゃないか? と。


 一つはギルド〈デイ・ブレイク〉が¨なんでもや¨ギルドであること。

 もう一つはギルド〈デイ・ブレイク〉は単純にギルドの人数が足りなかったからです。


 ギルド管理条約2条『ギルドはギルドマスターを代表で1名、団員を最低3名いて認める』に則りです。

 現在はギルドマスター1名、団員2名である以上は継続が不可解です。ですので、彼女を入れました。


 最後に非公認ギルド〈アレス・テルレギオン〉の処分依頼です。

 ギルド〈デイ・ブレイク〉に依頼をしましたが、今日、無事に全員捕獲してきました。

 現在、こちらで団員たちを確保して明日より事情聴取です。

 気になったのがボスであるエンデ・ディケイドがその場にいなかったこと。

 マナ・リア近郊には異世界転生教として活動するものが少なくなっている分、特定しやすくなっています。

 しかし、彼は異世界転生者です。十分に気を付けて引き続き警備隊の派遣をお願いします。


 以上が私の報告になります。


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


【ヴェール視点】


 我が転移されて拘置書類の署名を書き終わった後、ゼネの報告を後ろから見ていた。


「見ていたのですか?」

「暇! 捕まえたヤツ代表だからサインしに来いで呼び出すなんて、我、シャワー浴びたかったのに!」

「濡れてるヴェールんも素敵ですよ!」

「お世辞言っても無駄じゃよ!」


 はぁ……とため息を吐く。

 我はすぐに帰ってシャワーを浴びたかった。


 不満げな顔で外を見る。

 ゼネに後ろからタオルを差し出されると顔から頭を念頭に吹き始める。


「用意周到じゃな」

「ヴェールんのことなんだって分かりますから」


 ゼネは昔のようにヴェールに変わらない笑顔で微笑む。

 昔はよかったと嘆いても今は戻れない。

 我はギルドマスター、ゼネはギルド協会の受付嬢、そして――


「エンデ・ディケイドはその場にいなかった」

「でしょうね」


 エンデは指名手配犯の道に進んだ。


「今、どこにいると思う?」

「――見つけたらあなたたちに依頼して殺してこい! って言ってますよ!」

「ゼネが殺さなくていいのか?」

「――野郎はもう嫌いです! 女性しか信用できません! そのために私、黒三ツ星になったのですから」

 食い入るようにゼネが話す。覚悟を決めてギルドの受付嬢になったのだから、我は内心尊敬していた。


「大人じゃな――我は大人になれない」

「過去を受け入れられたら大人になれますよ」

「なら、我はずっと子供の姿でいい」


 複雑な気持ちになる我。エンデはゼネの幼馴染だったから。きっと――


「我たちじゃアイツの心を救ってやれなかったか……」

「優秀すぎるからですよ。子供の時から優秀だってもてはやされて、一人のお姫様救えなかっただけでやさぐれてしまう」

「チートでも守れないものがあるか……」


 ゼネは泣いていた。目尻から静かに液体がにじみ出るようにして。


「それよりも、キリエさんはどうですか? ギルドになじめそうですか?」


 ゼネは話を急転換してくる。


「そうじゃなぁ……」


 我は天井をむく。今日のことを思い出していた。


 急に聞かれても困る。

 だが、キリエンからはどうも人のことが嫌いで、――でも、悲しげな少女のような気がした。


 ゼネから渡された資料も見通した。


 異世界転移者――目にしたくない言葉だったが、今日の彼女を見ると、よくここまで生きてこられたと思う。


「キリエンはこれからが楽しみじゃよ!」


 我は喜びを頬に浮かべた表情で言う。


 今日の夕焼けは明るく滲み照らし出していて綺麗だった。


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