ミュゼ・リア依頼考察〈前〉
【ヴェール目線】
ひんやりとした空気の中、
ゆっくり、
またゆっくりと、
我は階段を下っていく。
暗くじめっとした空気が気持ち悪く、早いとこ駆け抜けて仕舞いたかったが、如何せん視界が悪い。
一つだけ気になったことがあった。じゃから、こうしてミュゼ・リアの地下街に繋がる階段を下っているのじゃが、流石、大都市。
――クソ長い。
ちょ~、か弱い脚に酷じゃ! 酷っ!
自分の家に秘密基地感覚で作るならまだしも、他人が作った階段なんてウザったらしくてたまらん。
誰じゃよ、こんなクソ階段設計したやつ。出てこい。
我のほうがまだましな階段を設計できるぞ。
はぁ……、歩くのめんどくさぁ……。
気を取り直して、我なりに今回の依頼の考察をしよう。
何故、ミュゼ・リアにアイドルが来てライブをしだすのか?
一つは誰かが行う儀式のため――そう考える。
本来ミュゼ・リアという街はこの世界で一番最初に隕石が落ちた場所。
太古の昔、あくる日もあくる日も戦争が終わらなかったのは、ここが異世界に繋がるための起点と考える人がいた。だから、全力で奪いたかった。なんとしてでも。
民たちは隕石が落ちた場所で異世界転生者が来ることを願い続けた。
――――詩い。
――――踊り。
――――願い。
女神に平和な祈りが届きますようにと……。
もしライブするアイドルの中に美音壊《ミューズ》の使い手がいるならば、歌った瞬間、耳に届いた者は確実に死ぬ。
魂はやがて美音壊《ミューズ》の使い手に溜まり、そして――――異世界への道が開かれる。
ゼネは確か“叫んで声が枯れたかのような死体”が増えて来ていると言っておった。下手したらもう十分に溜まっているはず。
それが出来る人物、この世界で考えられるのは、
――――“ミュゼ・サーリア”でも蘇ったというのか……?
蘇るはずがない。家の書斎で読んだミュゼ・リアの歴史書によれば、ミューゼ・サーリアは【美音壊】を使いすぎた挙句、
――心が、
――身体が、
――魂が、
ボロボロに砕けて滅びてしまったと書かれていた。
誰かが蘇生系の魔術を使ってミュゼ・サーリアを甦らせる……。
否、絶対に不可能はず……。
一つ、もしかしたらありえることを考えれば、――ミュゼ・サーリアがどこかの別世界に転生して、また、ミュゼ・リアの世界に転移してきた――なら考えられる。
が、本には魂が滅んでいるって書かれているから矛盾している……。
そういえば今朝、アルムは〈ムジカ・アクセント〉のアイドルを見ていたな……。
特に注目していたのはアリア。アリアという名前だったはず。不確か。
彼女にはどこか懐かしき世界の空気感があった。キリエと同じ感覚じゃが、どこか我の感は違うと訴えている。
キリエよりも陰を感じるというか悪い空気に包まれているというか……。
なんか悪い過去でもなければ暗いオーラなんて滅多に出ないぞ。
まぁ、〈ムジカ・アクセント〉の防衛はあやつ達に任せるとしよう。我よりも幾分も真面目じゃからな。
さて――――階段下りながらあれこれ考えていると光が見えてきた。
どうやら出口が近いらしい。
あぁ……、長かった……。虚無。
ここまで階段下るのクッソ疲れた。
荒みきった光、どうやらここが我の目的地。
ふわぁぁあ……とあくびをしながら光が照らし出す先へ歩きだす。
依頼が終わったらキリエに脚を揉んでもらおう。肩もおまけで。
ミュゼ・リアが現代で隠されている地下労働施設にようやく着いた。
さて、――――生贄を“作る”準備を始めるとしよう……!
美音壊の願神の完全復活を止めるために!
投稿頻度が遅れてすみません……!
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次回も近いうちに投稿します! ありがとうございました!




