叫んで声が枯れたかのような死体 ――アンダー・ライトハウス――
邪悪な魔力オーラの元へ辿り着いたが、信じられないものを見ていた。
「死んでいる……」
血の匂いがする。
広がる血だまりはついさっき死んだかのような鮮やかさがある……。
今、私の目には喉から生気が吸い取られ、身体全身しわくちゃとなって横たわっていた死体が写っていた。
「死んでいるわ……。まるで、¨叫んで声が枯れたかのような死体¨……」
断定――目の前の死体は、恐らく……触手魔術使いだろう……。
「こんな不可解な死に方って……」
それはもう訳が分からなかった。
私たちが着いた頃には既に遅く、死んでいたのもある。
それに¨叫んで声が枯れたかのような死体¨なんて生まれて初めて見たのだから。
オルレアン部隊が止まる部屋で襲って来た時に感じたオーラが、ここが一番強く消え始めている。
確かに、触手魔術使いはここで死んだようだった。
――じゃあ、どうして?
私に疑問ばかりが残る。
ふと、思い出す。
ゼネが言っていた、ミュゼ・リアで発生する叫んで声が枯れたかのような死体が出てくる事件を解決してくれと。
「ねェ、アナタ大丈夫?」
「誰か助けてよ~! あぁ~、触手最悪っ!」
ふと、横目でジャンヌの声がしたほうへ見ると、すぐ近くの壁で人がもがき苦しむように動いていた。
――まるで死にかけの虫さんのようにじたばたと。
もう触手は発生してないのに……、素直に怖い……。
「アナタ、落ち着いた?」
「落ち着いたよ……。ありがとうね……」
ジャンヌは携帯していた水を桃色髪の彼女に飲ませて背中をさすると、しばらくして落ち着いた。
どうやら触手魔術使いの影響でじたばたとしていたらしい。
よかった。怖い人なんていなかった。
「はぁ……、はぁ……、もう! 今日はなんなのよぉ~!」
「ねェ、ここで何かあったの?」
「分かんない。気がついたら触手に縛られていたから分かんないよ~!」
それにしても、この顔どこかで見たことがある。
初対面なのに初対面じゃない顔。
「そういえば、お前はアルムが言っていた……」
「えっ? もしかしてあなたは私のファ――」
「名前、忘れた」
ずてーんとその場で転ぶ桃色髪の女性。
すぐ立ち上がると、私に、
「名前忘れたはないでしょー!」
私に向かって声を大きく叫んできた。
一歩、間違えば私の鼓膜が破れる程の大きさ。
どうやら怒っているようだ。
「すまない。名前を覚えるの苦手で……」
「絶好のいい機会ね! 私はギルド〈ムジカ・アクセント〉所属の――」
「アリア。この子の名前よ」
桃色髪の女性はもう一度、ずてーんとその場で転ぶ。
すぐ立ち上がると、ジャンヌに、
「ねぇ? 私、名前を言おうとしてたよね? ねぇ!」
「知らないわよ。言われたくなければすぐにでも言えばいいのに!」
今度はジャンヌに向かって声を高く叫んできた。
どうやらジャンヌにも怒っているようだった。
「アナタ、アイドルだからって声がデカすぎるわ! ワタシの鼓膜絶対に破れてしまったわ!」
「えぇ、アイドルで悪かったですよ! 減らず口でも叩けないように¨声¨を奪おうかしら!」
ジャンヌと桃色髪の彼女が喧嘩している。
こんなところで喧嘩なんてしてほしくないのだが……。
目の前で釣り針が魚のように飛び跳ねる。
なにごとかと両手で掴むと、
(もしもし! アヤメニャ?)
「もしかして、ニヤか!」
この声はニヤの声。
釣り針からニヤの声が伝わってくる。
(よかった~! アヤメニャ!)
「宴会場は大丈夫か……?」
(大丈夫! アルムたちがやってくれたニャ!)
「あぁ、アルムの叫び声――勝ったんだって届いた」
(それはよかったんだけどニャ……、絶賛、アルムが興奮してうるさくて……ニャ……)
ニヤがそう言うと、宴会場の音を出す。
(スゲェよ! スゲェ! なんか龍の鱗みてェに皮膚が硬ェ! なんか知らねェけど翼に尻尾、生えてるし!)
(落ち着いてください! 素直にうるさいです!)
(俺、最強にカッケェー! 最強に! カッケェェエー!)
(誰かガム・テープを……)
(はいっス……)
(ちょっ、待てよ! ハイネ! ちょっ、本当に待てって、ハイネェェェーー!)
宴会場でハイネとアルムがただじゃれ合っているように聞こえる。
随分とにぎやかのようだった
(ニャ……?)
あぁ、なんだか安心した。
「ニヤ、安心した。私たちも今、終わった……」
これで謎の襲撃事件は解決したかのように思える。
ただ……、触手魔術使いの死体を見ると、どこかで見落としがあるような気がしてならなかった。
一周年何かできないかと考えた結果、作品ロゴが出来ました!
デザイナーは両翼視前先生(https://www.pixiv.net/artworks/107225675)です!
TOPページの下辺りに見られるはずです!
そして、次回から4章後半戦!
遂に……、¨ライブ¨が始まります!
次回も、これからも面白くなる「異世界転移ノ魔術師々」をよろしくお願いします!




