扉の向こうへ ――ブレイク・スルー――
一瞬――身体から旋風刃に魔力を流し通す!
「行けっ! 【旋風の舞】!」
私は旋風刃を風に溶かして、目で視た情報で位置と間合いを捉え、見えない8本の刃として触手に向かわせる。
――1本は右から頭を狙いに来てたから前右上へ。
――もう1本は左足首を狙ってきたから前左下へ。
――もう1本は右胸を狙ってきたから前右真ん中へ。
風となった刀たちは触手を切り裂いた。
が、切ったらまた次の触手が私たちを襲おうと来る。
想像以上に触手の量があまりにも多い。多すぎる。
私の両手合わせて百本欲しいと思うほどにだ……。
1本、1本確実に切ろうと考えていたら絶対に魔力が足りない。
これじゃあ、ジリ貧。いつかは数で追い詰められてしまう。
「ちょっと多すぎじゃないのっ!」
背後でジャンヌが槍のような魔具を手に取り応戦している。
耳からは触手が切り落とされる音……というよりかは光熱で焼いているに近いか……。
なら!
「私にいい考えがある! 協力してくれないか……?」
「ふ~ん、何するの?」
ジャンヌが私の背中にぴったりとつく。
声色から察するに興味津々のようで、だったら話が早い。
「一瞬。チャンスは一瞬」
「そんなに危ないことするの!?」
「あぁ……、危ない……かもしれない……ミスったら触手で滅茶苦茶だな……!」
「嫌よ! 絶対にっ!」
旋風刃に切られても尚、目の前で触手は元気にうねうねとしている。
絶望するほど魔力がないという訳ではないが、この数、まともに戦えばキリがない。
彼女も自身で戦っていて現状をどう切り抜けるか模索しているはず。
「でも、どうあがいたって……このままじゃあ滅茶苦茶よね? 乗るわっ! その賭け! 友達の頼みなら賭けられる! 後悔したくないですものっ!」
「よし……!」
私はジャンヌの背中を引っ張る。
「ちょっ、ちょっとっ!」
「私の魔力を流して一気にドアに向かいたい。その槍で突き破ってくれないか?」
「いきなり無茶な注文ね! どうなっても知らないわよっ!」
ジャンヌは槍をドアに突き刺すように構える。
狙いすまして、貫き通すため、
「風魔術――」「光魔術――」
私は彼女の背中に魔力を流し始めると、辺りに強い風と光が放出される。
襲い掛かる触手は私たちに近づこうとすると、風に切りつけられ圧倒的な光量によって焼けるように溶けていく。
これがムシャノ村の書物に書かれてぴた魔力の共鳴――
「行くわよっ!」
「了解……!」
私たちはそう叫ぶと、風に溶かしていた刃を背後に移動させる。
「猪突猛進!」「リックレス・ラッシュ!」
私たちはそう叫ぶと、ジャンヌの足はドアに目掛けて走り出した。
より光の魔力は強大になっていく。
その証拠に私たちが近づくだけで触手は光で溶けてしまっていたから。
だから、負けじと私も彼女に魔力を送り続ける。
背後で廻る風の刃は強風となり、私たちを浮かせ、勢いを与えてくれていた。
ドアに達した時、
「貫けェ!」「貫いてェ!」
私たちがそう言う。
すると、ドアは木っ端微塵になり、外の廊下へ脱出することが出来た。
「このまま術者を探す。力を貸してくれ!」
「言われなくても、アナタの注文だからラストまで付き合うわよ!」
このまま、触手を発生させた術者を探し出す!
そして、仲間がいる宴会場へ向かう!




