背中合わせのこれからの友 ――ウィル・フレンド――
――身体がゾワっとする。
それは突然のこと……。
オルレアン部隊が泊まる部屋に私は招かれて……、どういう訳かホワブロ女の出生のことを聞きながらカップラー・メンをずるずるとすすっている時だった。
気持ちが悪い……。
まるで、耳の奥から心臓に囁かれるかのようなおぞましい感覚。
今、目の前にいるホワブロ女からは何も感じない。
彼女はただ、己の得意げに話すだけ……。
「ねぇ? どうしたの? 神妙な顔なんかして?」
彼女の平和ボケ加減……気のせいだったか……。
どうやら考えすぎ……だったのかもしれない。
「ねぇ! 今、ワタシのことをバカにしたでしょ!」
それどころか¨音¨が壁から響き渡る感じ。
この部屋の向こう……音の正体は宴会場からか……。
華やかな音に鮮やかな声
テレヴィで見たアイドルの声……そっくり……。
ふと、辺りを見渡すと壁から邪な魔術オーラが溢れ出た。
何者かでもいいが、¨特定の誰か¨を襲い殺さんとするほどの殺気……。
――嫌な予感がする。
次の瞬間――。
壁が邪悪な何かに作り代えられていった。
「キリエ、アナタも感じているのね」
金髪女もこの感覚を感じている。だから、私の感覚は合っているようだ。
これじゃあ、おちおちとカップラー・メンなんか食ってられない……。
スープを飲み干した時――目の前の壁からうにょりうにょりと私を襲おうと触手が生えてくる。
「魔術書……!」「魔術書っ!」
私は魔術書を出現させる。
そして、
「魔具召喚魔術【旋風刃】」
「魔具召喚魔術【光布の撃槍《ライトニング・フォース》】」
部屋が眩い光に包まれる。
閃光のような一点を貫く光。
ボトリっと鈍い音が部屋に響き渡ると、光は落ち着いていた。
やがて、眩い光が落ち着いて、視線を下に逸らせば触手は切り落とされていた。
切り落とされた触手は瞬く間に砂となる。
素の……土に戻ったということだろうか……?
召喚した旋風刃を握りしめて目の前の触手を切り落とした。
同時にホワブロ女も魔具を召喚して触手を切り落としたらしい。
「やっぱアナタ結構やるようね! ワタシが見込んだだけあるわ!」
背後でホワブロ女が言う。
どうやら今、私たちは壁から無数に生えている触手に囲まれている。
壁から無数に生えてくるこげ茶色の触手は私たちをいまかいまかと襲わんとばかりにうねうねとしていて……、こんな下衆な魔術、気持ちが悪い……。
一刻も早く発動者を探して切らなければいけない……。
「もっとアナタと話がしたかったけれど……一旦、これでおしまい。行ける? アヤメ・キリエ!」
私はホワブロ女のことが嫌いだ。
何故なら、私よりも明るくて……人懐っこいように見えるから……。
だから、私は嫌いだ……。
「言われなくても……」
でも、心は綺麗だ。
私のことを友達になろうなろうと接してくれる。
そんな人……、私が元居た世界には誰一人いなかった。
「名前はホワブロ……いや、ジャンヌという名前か……?」
「名前がホワブロって酷い名前ね。私の名前はジャンヌ。ジャンヌ・ロメルよ! 今度は覚えて置きなさいよね!」
ふと、目の前を見れば、部屋の入口の扉だけは触手が生えてない。
そうか!
私は旋風刃を構え直して、身体の魔力を整える。
鋭利に心を尖らせるように。
そして、
「ジャンヌ! 背後を任せる!」「キリエ! 背中は任せたわよ!」
ジャンヌと共に、目の前の入口に向かって私は走り出した。
一周年たったようです!
ありがとうございます!
最近、私生活がごっちゃになっています!
更新頻度遅くてすみません!
早くなれます!




