妖眼の私と壁と金髪の女 ――ゼアーズ・ウォール――
「着いたわ」
ふぅ……と金髪女が流れるようにため息を吐く。
彼女に連れられて部屋にきた。
ふと、視線をベッドに移せば、私が買った同じミュゼ・リアを案内する本がベッドに転がっている。
ここはホワブロ女が率いる〈おるなんたら部隊〉が泊まる部屋のようだ……。
「金髪女、どうして連れ出した……? 私は腹が減って仕方がない……」
ぐぅ~とお腹から音が出る。
腹が減った、もうもたないと私に知らせている。
その状況を見ていたホワブロ女は、
「カップラー・メンならあるわよ!」
「どうも……」
私に向かってカップ・ラーメンを投げた。
「ワタシ、飽きたのよ。ビュッフェスタイルのディナー。だから、付き合って欲しいしもっとあなたと話がしてみたい……。だから、一生のお願い! お話しましょう!」
ホワブロ女は私の顔の前で「お願い!」と言って手を合わせる。
「うむ……」
彼女の顔は真剣だ。
別に話があるならかしこまらなくていいのに……。
はぁ……と私はため息を吐く。
「分かった……」
「やったー!」
ホワブロ女に負けた。根負けした……。
というよりかはもし、ここで金髪女を無視して宴会場に戻ったとする。
すると、鳥頭男がしつこくまた来るだろう……。
なにより、私のことを連れ出してくれた金髪女の気持ちはどうなる。
悲しくて泣いてしまうのではないか……?
しばらく、ホワブロ女と付き合ってみたがねちゃねちゃと粘着するタイプ……。
――――めんどくさい。
諦めて彼女に付き合うことにした……。
ホワブロ女は水道からコップに水を入れると、手に魔力を込める。
すると、瞬く間にお湯を沸騰させた。
ホワブロ女は私のカップラー・メンにお湯を入れる。
思えば――私から話をしたことがない。
人が嫌いだったからこれまで極力避けてきた。
会話の始まりもゼネからだったし、〈デイ・ブレイク〉に来て仲間たちとならようやく話せるようになった。
私のことを彼女たちなら任せられる、背中を預けられると思うからかもしれないが、それでも以前よりも会話は増えた気がする。
しかし……、
ホワブロ女は私よりも明るい。ヴェールとはまた違った明るさがある。
まるで、太陽のように包み込むかのような明るさ……。
だから、私は彼女のことが苦手だった。
「ありがとう」
「えぇ、どういたしまして」
私は彼女にお礼を言うと、隣に座ってくる。
「3分、3分待つだけですぐできるなんて素晴らしい発明よね~!」
「うむ……」
私は誰かに作ってもらった料理のほうが美味しいと思う。
私のことを大切に育ててくれたおばあちゃんやムシャノ村のみんなは心を込めて作ってくれていた。
カップラー・メンを知ったのはギルド管理協会から仕事をもらえるようになってからだ。
依頼を遂行していると食が疎かになる。
「カップラー・メンは異世界の食文化。昔、マナ・リアに異世界転生した伝説の勇者が伝えたと『魔勇伝~異世界からやってきた俺がなんでもできて最強だった件~』にも書かれているわ」
ふと、思い出す。
ホワブロ女が口にした本の名前。あれは確かホムラ姉ェも言っていたはず……。
「その本は有名なのか……?」
私は金髪女に問う。
「えぇ、もちろん!」
「どうしたらそれは読める」
「今じゃ禁書よ。国の図書館行っても読めないわ」
「うむ…………」
――予想通り。
とはいえ、少し味気なさすぎる答えでがっかりする。
3分経っただろうか……?
そろそろ、フタを開けると湯気が出てくる。
充分、温まったのだろう。
麺をズルズルとすすっていると、
「読めないなんて言ってないわよ! ガッカリしないで!」
金髪女は私に希望を持たせようとしてきた。
「ねェ、アナタは異世界から来たでしょ?」
ゴホゴホっと麺が喉につまる。
突然、何を言い出すかと思ったら急に私のことを異世界から来たというか。
「ふ~ん、やっぱりそうなのね~」
「突……然……、何を言い出すかと思ったら……」
ゴホっゴホっ。
麺が喉につまってとてつもなく苦しい。
「魔術書が出現させる時は魔力オーラが出る……。でも、異世界から来た人たちの魔力量は尋常じゃないの! ねっ! 【いせかいのとびら】現象からやってきた異世界人でしょ?」
金髪女は「大丈夫?」と私の背中をやさしく叩いてくれる。
ふぅ……と私は息を吐く。
「ありがとう……」
「フフっ、どういたしまして!」
彼女が背中をやさしく叩いてくれたおかげでようやく落ち着くことができた。
今度はゆっくりと喉に負担にならないように食べよう。
「話を戻すわ! ワタシ、異世界転生者の子孫なの! 私は祖先が見た異世界の景色が見てみたい! 力を貸して?」
ホワブロ女が話を戻してくる。
突然、何を言い出すかと思ったら彼女自身のカミングアウトだった。
あけましておめでとうございます!
今年から伏線回収し始めます!
頑張るぞ~!




