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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第四襲 歌衝争儀編
53/85

宴会場にて ――ビットリヤル――


 (キリエ)は考えていた。


 確かあのタロット女は私のことを¨世界(ザ・ワールド)の反対¨と言った。

 世界(ザ・ワールド)――完成されたを意味するタロットカードのはず……。


 それと、ゼネが言っていた¨叫んで声が枯れたかのような死体¨について……。

 今朝は歩きながらミュゼ・リアの街並みを見ていた。


 色彩が豊かで美しい絵画。

 精密で細かい彫刻。

 耳にすんなりと流れてくるほどの規則正しく心地のいいリズム。


 流石、芸術の町。きっと歩けば演劇が見れる場所だってあるかもしれない。

 ただ、作り手だけはどこにも見当たらなかった。


 そんな物騒なこと起きるような町では……。

 いや、酒場で起きようとしていた。

 あの弱弱しい男……首に〈デイ・ブレイク〉に出会う前に遭遇した太った男と一緒の首輪を身につけていた……。


 ――あの男はミュゼ・リア出身ってことなのか……?


「戻ってきましたよ~!」

「俺たちの分は取ってきた!」


 アルムとハイネが戻ってくる。


「って皿の上、唐揚げばっかニャ!」

「アァん? いいだろォ別に。そう言われるだろうと思ったからブロッコ・リーもちゃんと取ってきたんだぜ!」

「それでも栄養バランス悪すぎニャ!」

「うるせェ! 強くなりたきゃ肉食らうんだよォ!」


 アルムの皿にはこれでもかというぐらいのからあげと気持ち少し程度のブロッコ・リーを盛り合わせている。

 まるで、背後が爆発して奇跡的に残った森林地帯のようだった。


「ハイネもハイネニャっ! 流石にお酒持ってきすぎニャっ!」

「ようやく酒が飲めるのですよ! 酒っ! 飲まずにはいられないっ!」

「アル・コール量摂り過ぎるニャっ! 絶対に20gあるニャっ!」


 ニヤケた表情で両手に瓶を持っているハイネを見て、ニヤがツッコむ。

 ¨龍殺し¨と書かれたラベルが貼ってあるから間違いなく酒だろう。

 おそらくは……度数が高いはず……。

 私はハイネを信じてツッコまない……、ツッコまない…………。


「それにしても(すげ)ェよ! 凄ェ! あっちには幻獣殺しの獣頭武闘家ギルド〈トラブリュー〉のリーダー! タイガー・ジレッタがいる!」


 アルムが指さす先には筋肉質でがたいのいいトラ頭の男が他のギルドに挨拶している。

 頭はトラの頭の顔だろうか


「そんなに凄いのか……?」

「言ってもわたしたちと同じ人ですよ。変わりませんよっ!」

「凄ェんだよ! 本当に凄ェ! タイガー・ジレッタは特にッ! 西のビズェ・リアに行っては伝説の白虎を背負い投げをし、東の」

「――あのトラ頭、実は作りものですよっ!」

「うるせェ! タイガー・ジレッタはタイガー・ジレッタだ! 夢を壊すんじゃねェ!」


 アルムがハイネに怒って言う。


「アヤメ、行くニャ」

「あぁ」


 ニヤがそう言うと、共に立ち上がる。

 晩御飯を求めて、歩き始めた。



 宴会場の中はとても広い。

 人もそれなりに……いる。

 もし、幼い頃の私がここにいたならば、はぐれてしまうだろう……。


 いや、――気を抜くとはぐれる。確実に。

 絶対に一瞬の油断が命取りになる。

 今からでもニヤに手を繋ぐことをお願いするべきだ――

「こんにちは! お嬢ちゃんたち2人?」


 私がありとあらゆる思考をめぐらせている頃、目の前に若そうな男が現れる。

 鳥頭のような髪が跳ねた男――鳥頭男。

 上品とは言えない金髪混じりの茶髪に青眼。

 希少価値の高い鳥の羽根を贅沢につかったマントを着用しているからそれなりに力をもっているのだろう。


「んニャ? ミャ―たちは早くご飯が食べたいニャ! アヤメ、行くニャ!」


 ニヤがそう言って、鳥頭男を通り過ぎようとする。


 しかし、鳥頭男はまるで私たちを通さんとばかりに進路を塞いできた。


「おっと、足がすべってしまった……みたいだ」

「邪魔ニャ! さっさとどくニャ!」

 鳥頭男はニヤリ。邪魔をして楽しんでいるかのような微笑みだった。

 なんだか仲間を……友達を……バカにされているようで、いても立ってもいられない。


 深く息を吐いて、

「私はお腹が減った。これ以上、邪魔するのを止めて貰えないか……?」

 私は男を睨みながらそう言った。

「おっと、気が強い。だが、僕は凛々しい女性も好きだよ」


 ――こりてない。退こうとしない。

 こういう(タイプ)は厄介だ。


「ねぇ、黒髪のそこの君。可愛いね。よかったら僕と一緒にご飯を食べないかい?」

「誘う前に自分から名を名乗ったらどうニャ?」

「こりゃあ、失敬。わたくしの名は」

 わざとらしく髪をふぁさりと振り上げる。

 鼻孔をくすぐる花の匂いがキツい……。


「今のうちに行く……」

「そうニャ」


 私がニヤに耳打ちするように言う。

 鳥頭男がカッコつけているうちにならその場を去れるだろう。

 隣の机にはハンバーグが配膳されているが……、男から逃げるために我慢するしかない……。

 恨んでやる。


「イグルン・ラッシュ。ギルド〈フワンダリィーズ〉の2番隊隊長のイグルン・ラッシュさ!」


 抜き足……差し足……。


「――――って、人の自己紹介を聞けェ!」


 忍びあ……、鳥頭男に気づかれる。

 目にも止まらない速さで回り込まれてしまった。


「トリ頭男の自己紹介なんか聞きたくもない……、邪魔、退()け……」

「――――なっ、なんとっ!?」


 私がそう言うと、鳥頭男が酷くショックを受ける。

 まるで、心がガラスみたいで……。


「ふふっ……、ふふふふふふ…………」


 おっと、心は鉄のようだ。


「……黒髪の君…………、特に気に入ったよ! 生まれて初めてつけられた名前(ニック・ネーム)だ!」

「やっと、見つけたわ!」


 鳥頭男の声よりも金髪女の声が耳に目立つように響く。

 突然、私の左手を彼女の右手に力強く繋がれて、

「ニヤ、キリエを借りていくわっ! 話が終わったらすぐに(かえ)す! ハイネたちには言ってあるからよろしくね!」

「ジャンヌがそう言うなら仕方がないニャ!」

 

 金髪女は宴会場の出口に向かって全身全力で走った。

 この脚――私のことを考えていない。

 ニヤ……、鳥頭男から無事に逃げてくれ。



「――――僕のことは無視かっ!」


年内投稿これでラストになるかもしれません!

クリスマス頃に歌衝争儀編が終わるとか書いてたような気がしますが、終わりませんでした(涙)

暖かく頃までお付き合いしていただけると嬉しいです……。


告知してなかったですが、pixivにて新作短編『可愛い美少女は魔女の夢を見るっ!』(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18887933)が公開されてます!

こちらも読んで頂けると嬉しいです!


2022年読んで頂いてありがとうございました!

(来年から戦闘シーンが始まるよ! ヤツがついに牙をむく!)

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