芸術都市 ――ミュゼ・リア――
一歩。
また一歩と進む。
新しい都市に脚を踏み出す高揚感。
心のどこかでワクワクしている。
「おぉう! おぉぉう! おぉぉぉおう! 辺りを見渡せば凄そうな絵画! 軽快に鳴り響く音楽! 芸術都市ミュゼ・リア来たァー!」
太陽が真上に昇る頃、無事に私たちはミュゼ・リアにたどり着けた。
〈アークレインドラ〉のおかげでたった1陽で着いたのも驚きだが……。
それよりもこの町、芸術都市ミュゼ・リアは私の目を奪うほど美しかった。
辺りを見れば、一面真っ白の建物が建っている。マナ・リアと比べて年季が入っていないミュゼ・リアの街はどこか新しく感じられた。
目に映る景色が、耳から入る軽快な音楽が、全てが目新しい。
「あぁ~、お腹減った~! なぁ飯、行かね?」
「あんだけ昨日肉食べたのに、まだ食べれるかニャ!」
「だってよ、だってよォ! ミュゼ・リアに着いたんだぜ! そりゃあ、興奮して腹が減っちまうだろ! それに、マナ・リアと比べたらスゲェー都会だぜ! だから、どこか飯屋行こうぜー! なぁ? 代表代理」
アルムの一言でハイネの雰囲気が変わる。
まるで、心の¨闇¨を纏ったかのような瘴気。
今のハイネは私が見て正気ではなかった。
――ギロリ!
彼女を傍から見てそんな擬音が聞こえたかもしれない。
「ひィっ」
アルムがお化けを見たかのような悲鳴を上げる。
いつも勝気なアルムだが、女々しい声を聞いたのは初めて。
「いきなり代表代理ってなんなんですかっ!?」
「落ち着けって! 実質、ヴェールと同じラインに立ったみたいなもんじゃねェか!」
ハイネはさめざめとした目でアルムを見続ける。
原因は――――今朝、ミュゼ・リアに着く前……。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
朝食を食べ終わる頃――、
「じゃあ……、依頼の作戦会議を始める……」
ふぁわあぁ……とヴェールが眠気混じりの声で言う。
まだまだ、陽が昇ったばかり。
いつもなら、ヴェールは爆睡していてもおかしくない。
そんな時に作戦会議を始めようとするのだから、目をひたすら擦りながらコー・ヒーにありったけの砂糖を入れていた。
「っと、その前に我の代わりにハイネ! 今回はハイネが代表をやってほしい!」
その一言は朝の静寂を突き破った。
「…………?」
ハイネを見ればキョトンとしている。
「ほら、ロリニートに呼ばれているぞ!」
アルムが右ひじでハイネをつつく。
「……えっ……? えぇっ!? 今っ、なんてっ!?」
「昨日、言ってたじゃろ? 『いつかヴェールさんを超える立派な魔術師になりたい』って! じゃから、今回の依頼で代表の代理を頼みたい」
「わっ…………、わわわわわぁっわっわったしっが代表ま……」
ハイネが泡吹いて倒れる。
目がグルグルと回っていた。
「うぅ~ん……、じゃあよ、ヴェールはミュゼ・リアに行かないのかよ」
「我は〈アーク・レインドラ〉のメンテもしないといけない……。それに、少し調べものをしたい……。昔、来た時……、否、昔と今じゃ違うか……。気にしないでくれ……」
ヴェールは私が置いた『ろろぶミュゼ・リア』を見つめる。
ミュゼ・リアの昔のことを私は知らない。
記念すべき50話!
いつも読んでくださりありがとうございます!
残り100話ぐらい頑張って最後まで書ききります!




