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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第四襲 歌衝争儀編
50/85

芸術都市 ――ミュゼ・リア――

 一歩。


 また一歩と進む。


 新しい都市に脚を踏み出す高揚感。

 心のどこかでワクワクしている。 


「おぉう! おぉぉう! おぉぉぉおう! 辺りを見渡せば凄そうな絵画! 軽快に鳴り響く音楽! 芸術都市ミュゼ・リア来たァー!」



 太陽が真上に昇る頃、無事に(キリエ)たちはミュゼ・リアにたどり着けた。

 〈アークレインドラ〉のおかげでたった1陽で着いたのも驚きだが……。

 それよりもこの町、芸術都市ミュゼ・リアは私の目を奪うほど美しかった。


 辺りを見れば、一面真っ白の建物が建っている。マナ・リアと比べて年季が入っていないミュゼ・リアの街はどこか新しく感じられた。


 目に映る景色が、耳から入る軽快な音楽が、全てが目新しい。


「あぁ~、お腹減った~! なぁ飯、行かね?」

「あんだけ昨日肉食べたのに、まだ食べれるかニャ!」

「だってよ、だってよォ! ミュゼ・リアに着いたんだぜ! そりゃあ、興奮して腹が減っちまうだろ! それに、マナ・リアと比べたらスゲェー都会だぜ! だから、どこか飯屋行こうぜー! なぁ? 代表代理(バイスマスター)


 アルムの一言でハイネの雰囲気が変わる。

 まるで、心の¨闇¨を纏ったかのような瘴気(しょうき)

 今のハイネは私が見て正気ではなかった。


 ――ギロリ!


 彼女を傍から見てそんな擬音が聞こえたかもしれない。


「ひィっ」

 アルムがお化けを見たかのような悲鳴を上げる。

 いつも勝気なアルムだが、女々(めめ)しい声を聞いたのは初めて。


「いきなり代表代理(バイスマスター)ってなんなんですかっ!?」

「落ち着けって! 実質、ヴェールと同じラインに立ったみたいなもんじゃねェか!」


 ハイネはさめざめとした目でアルムを見続ける。


 原因は――――今朝、ミュゼ・リアに着く前……。


 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


 朝食を食べ終わる頃――、


「じゃあ……、依頼の作戦会議を始める……」


 ふぁわあぁ……とヴェールが眠気混じりの声で言う。

 まだまだ、陽が昇ったばかり。

 いつもなら、ヴェールは爆睡していてもおかしくない。

 そんな時に作戦会議を始めようとするのだから、目をひたすら擦りながらコー・ヒーにありったけの砂糖を入れていた。


「っと、その前に我の代わりにハイネ! 今回はハイネが代表(マスター)をやってほしい!」


 その一言は朝の静寂を突き破った。


「…………?」


 ハイネを見ればキョトンとしている。


「ほら、ロリニートに呼ばれているぞ!」


 アルムが右ひじでハイネをつつく。


「……えっ……? えぇっ!? 今っ、なんてっ!?」


「昨日、言ってたじゃろ? 『いつかヴェールさんを超える立派な魔術師になりたい』って! じゃから、今回の依頼で代表の代理(バイス)を頼みたい」


「わっ…………、わわわわわぁっわっわったしっが代表(バイス)ま……」


 ハイネが泡吹いて倒れる。

 目がグルグルと回っていた。


「うぅ~ん……、じゃあよ、ヴェールはミュゼ・リアに行かないのかよ」


「我は〈アーク・レインドラ〉のメンテもしないといけない……。それに、少し調べものをしたい……。昔、来た時……、(いな)、昔と今じゃ違うか……。気にしないでくれ……」


 ヴェールは私が置いた『ろろぶミュゼ・リア』を見つめる。


 ミュゼ・リアの昔のことを私は知らない。


記念すべき50話!

いつも読んでくださりありがとうございます!


残り100話ぐらい頑張って最後まで書ききります!

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