表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第四襲 歌衝争儀編
48/85

虹の光線 ――ハロ・アーク――


 綺麗な青空に大地を明るく照らし出す太陽。

 今日は快晴。絶好の旅日和。


「おぉう、凄いぜ! ワイバーンと一緒に飛んでいるみたいだ!」

「こんなにも間近で見るの初めてです!」

「ワイバーンの肉は上質ニャ! 食えるなら今度、焼肉にして食ってみるかニャ?」


 〈アーク・レインドラ〉は馬車では比べられないほどのスピードで整備されていない道を軽々と進んでいく。


 芸術都市ミュゼ・リアを目指して入り組んだ森林地帯を抜けて、砂漠地帯を走っていた。


 そんな(キリエ)は、


「糖分」

「はいっ!」



「糖分ッ!」

「……はいっ!」



「糖分ッツ!」

「…………はい……っ!」


 ヴェールにただひたすらマロリーメイトの袋を開けては口に渡し、無くなったらまた開けては渡し、また無くなったらまた開けては渡し……。


 ただひたすら同じことを繰り返し、虚無になっていた。

 かく言う私もマロリーメイトをかじりながら、操縦席の窓を見ている。


「いくらマロリーメイトとはいえ食いすぎは糖尿病になるニャ! もっと控えるニャ!」

「……本当に……本当にマロリーメイトを控えてもいいんじゃな……?」

「ヴェールの健康を心配してニャ!」

「我の魔力が尽きる」


「「「……ハっ……!?」」」「……ニャっ……!?」


 私の聞き間違えでなければ今、ヴェールは『魔力が尽きる』と言った。

 それはつまり……、

「そしたら、〈アーク・レインドラ〉は止まるじゃろう。我は魔力を尽きてしまっているから……ジ……エンド……」


 ヴェールが右手の親指で首を切るようなジェスチャーをする。

 迫真――この二文字がよく似合っていた。


「いいから食えッ……! 」


「あぁ、これをどこかで見ている観劇者の諸君にありがとう……。話はこれでおしまいじゃ……。あっ、これからエンドロールが流れるぞ! 最後までよろしくっ!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


脚本  ヴェール・クリスタ


コンテ  ヴェール・クリスタ


演出  ヴェール・クリスタ



CAST


ヴェール・クリスタ  ヴェール・クリスタ


アルム・エーデ  ヴェール・クリスタ

ハイネ・ディスト  ヴェール・クリスタ

ニヤ・マーリン  ヴェール・クリスタ


アヤメ・キリエ  ヴェール・クリスタ



総作画監督  ヴェール・クリスタ


作画監督  ヴェール・クリスタ


作画監督補佐  ヴェール・クリスタ



原画  ヴェール・クリスタ


第二原画  ヴェール・クリスタ



〈デイ・ブレイク〉作画部


動画検査  ヴェール・クリスタ


動画  ヴェール・クリスタ



〈デイ・ブレイク〉仕上げ部


色指定・仕上げ検査  ヴェール・クリスタ


マネージャー  ヴェール・クリスタ



〈デイ・ブレイク〉美術部


背景  ヴェール・クリスタ


マネージャー  ヴェール・クリスタ



〈デイ・ブレイク〉撮影部


撮影  ヴェール・クリスタ


マネージャー  ヴェール・クリスタ



編集スタジオ  〈デイ・ブレイク〉


録音調整  ヴェール・クリスタ


録音助手  ヴェール・クリスタ


音響効果  ヴェール・クリスタ


音響制作  〈デイ・ブレイク〉



エンディングテーマ

『wheare await ――夢に気づく――』

ヴェール・クリスタ

作詞・作曲  ヴェール・クリスタ(〈デイ・ブレイク〉)



〈デイ・ブレイク〉スタジオ


スタジオマネージャー  ハイネ・ディスト


システム管理  ハイネ・ディスト


制作担当  ハイネ・ディスト


動画・仕上げマネージャー  ハイネ・ディスト


製作進行  アヤメ・キリエ



プロデュース  〈デイ・ブレイク〉



アニメーション制作  〈デイ・ブレイク〉




                  『チート魔女の虹色キラキラスローライフ』/fin


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「――――待て待て待て! ちょっと待てェィッ!」

「なんじゃ……、人が気持ちよく終わらせようとしたのに……」


 突如、脳に流れ出した()()のエンディング。

 アルムが突っ込んでくれなければずっと私の脳内で流れたままだっただろう。


「ほぼほぼお()ェじゃねェーか!」

「我、クリエイティブなことしかできないし……まっ、分身できるからいっかなぁ……って……」

「なんでキャストまでお前ェなんだよッ! タイトルもほぼほぼお前ェじゃねェか!」

「……うむ……、じゃあ『チート魔女の虹色キラキラスローライフ ――愉快な仲間たちを添えて――』」

「なんで、高級料理みたいになってるんだよッ!」

「そんな高級料理あるのかニャ!」

「ねェーよ! あってたまるかよッ!」

「じゃあ、作ってみるニャ!」

「そうじゃ、それでコラボカフェなんかしたらガッポガッポじゃな!」


 豪快に笑うヴェールとツッコミに回るアルム。

 胃に穴が開きそうなアルムを見ていて可愛いそうな気もした。


「そもそもだ……! そもそも……ッ! 俺たちのマナ・リアに向かう旅は始まったばかりだろッ! なに、勝手に終わらせてんだよッ! 俺たちの人生(オープニング)、始まったばかりだろッ!」

「なんじゃ、エンディングの歌詞どうしようか考えてたのに……。ダークで不穏な感じでアウトロでちょっと希望持たせる感じで明るく……」

「意見具申! わたしの仕事、管理ばっか! なんで、短気女に任せないんですかっ!」

「我、管理とか面倒じゃし……、アルムは短気だから我の管理されたくないし……」

「飲食店経営スキルなら調理師学校時代に学んだからニヤにお任せなのニャ!」

「流石じゃな! ニヤ!」

「ヴェァアッ……! このロリニートッ! 帰ったら覚え――」


 アルムが叫んだ時――ぐらりと〈アーク・レインドラ〉が揺れる。


 あまりにも自信のように勢いよく揺れたものだから。

 まるで、大地が崩れたかのようで……。


「ついに……頭の火山¨噴火¨でも大地が揺れるようになったんか……」

「んなわけねェだろ! 俺は人間のはずだぞ!」


 ――おかしい。


 さっきまで平衡を保っていたマロリーメイトの段ボールが斜めにすべっていく。


「皆さん……! 前方を見てください!」


 ハイネが叫ぶと、私たちは前方を見た。

 窓には尋常ではないほどの土煙。

 なにがどうなっているのかまったくもって分からない。


「確かアレは……、コンピューターチェック!」

『チェックします』

 ヴェールがそういうとモニターが緑色に光る。

 どこか生きた人の声じゃないような作られた声が艦内に響き渡っていく。

『名前、ヘルホルロス。種別、蟻地獄獣(ありじごくじゅう)。身長、64m。重さ、8万5000トン。能力、蟻地獄を作る』

「ニヤ! コヤツ、調理できるか?」

「ニャっ! 体を覆う岩みたいな硬さの皮膚をどうにかすれば、ほどよい弾力の肉が待っているはずニャ!」

「よし!」


 ヴェールは左右の操縦レバーを勢いよく前に2回押し倒す。

 すると、操縦レバーの間のカバーが変形し、赤く光る大きいボタンが現れた。


「ギジャァァァアゥ!」


 ヘルホルロスと呼ばれる怪獣が私たちを獲物だと歓喜するように鳴き叫ぶ。


 砂煙のせいで姿が分からない。

 だが、鳴き声を聞いて身体が危険を訴える。


「変形承認! ドラゴンフォーム!」


 ヴェールはそう言うと、同時にボタンを押す。

 刹那――〈アーク・レインドラ〉の後ろが揺れだした。


「ボタン押してからさっき以上に揺れてませんかっ!?」

「なんだっ!? なにが起きているんだっ!?」

「この揺れ……まるで、漁船みたいニャっ!」


 ガシャンガシャンと魔鉄と魔鉄がぶつかり、空気を断ち切るような音が艦内に鳴り響く。


「ギジャァアゥ!」


 〈アーク・レインドラ〉は瞬く間に弧を描くように天に登ると、音が鳴り止んだ。

 しばらくして、見下ろすようにして砂煙を起こす怪獣のほうを見る。


「変形完了! 〈アーク・レインドラ〉ドラゴンフォーム!」


 操縦席の窓から怪獣の全体像が映る。


 いかつくごついワイバーンのような顔、

 岩みたいないかにも硬そうな皮膚、

 地面を掘るのに適したスコップのような前爪、

 そして、なによりでかい。


 いくら強い魔術師でもここまで攻撃的で硬そうな怪獣を倒すのに10人、100人、いや、1000人は必要か……?

 1000人でも知識があって、対策が出来てようやく撃退ができるかどうかだろう。


「ギジャアゥ?」


「よし! 今日の夜はバーベキューじゃな! 発射準備じゃァァァァァアアアアアア!」


 ヴェールはそういいながらレバーのボタンを押す。

 魔鉄と魔鉄がかすれる音が聞こえると、彼女の魔力オーラが〈アーク・レインドラ〉に吸い込まれていく。


対象(ターゲット)……ロック!」


 今、――――〈アーク・レインドラ〉はヘルホルロスと呼ばれる怪獣を見る。


 ガチャンと龍の口部分を開け、溜まったオーラをこれから吐きだそうとして――

「喰らえ! 特大ゲロビ! 〈ハロ・アーク〉!」


 次の瞬間、大地が削れるかのような音がする。

 窓は虹の光に包まれて、周りがどうなっているか分からない。


 ただ一つだけ……。


「ギジャァァァアァァァアアア!」


 怪獣が苦しんでいるのが体感として分かる。


 きっと今、――――光に焼かれ、もがき苦しんでいるのだろう。



「凄ェ……。なにが起きたんだよ……」

 アルムの肩が震えている。

 目で見て戦慄するかのようにして……。


「……異世界の文明の力…………、ちょっと最強(チート)すぎたか…………」


 虹の光が消滅した時、怪獣はほどよく焼けて息絶えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ