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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第三襲 虚幻相体編
39/85

電光の一重奏 ――ギターラ・サンダー――

「さぁ、中にいる一般人はどこから来るか……。来なければさっさと魂を回収出来ちまうンだがよォ……」


「――――切る!」

 (キリエ)は背後から不法侵入者(ぶれいもの)を切りかかる。


「アぁン……!?」


 紫髪が少し混じる金髪パーマの男は楽器の弦を小さいチップみたいなものでこする。

 すると、聴きたくもないけたたましい音と共に楽器の四方八方から雷光が放たれた。


 私の魔力を集中させた旋風刃との楽器の魔力がぶつかる。


「やっぱ俺っち様のセンサーはビンビンだった訳だァー!」


 ――雷光が切れない。


 手始めに首を狙いに行ったはいいが、どうやらキリエの魔力と金髪男の魔力の量が互角だ。――なら、もっと魔力を旋風刃に送りこめたら切れるか……?


「アンクォォォォォル!」

 金髪男は叫びながらもう一度、もう一度、もう一度……、目にも止まらぬ指さばきで弦をかきならす。

 けたたましい音がリズムを作り音楽となる。――同時に、共鳴するように雷光が拡散されていく。

 このままでは旋風刃が雷光に押し殺される。


 なら、――――最小限のダメージで立て直す!


 そう思うと、今まで旋風刃に流し込んでいた魔力を止め、キリエの身体全身に送り返す。

 右腕、左腕、右脚、左脚が雷光が当たる。

 身体よ、持ってくれよと願いながらビリっとする痛みをこらえる。

 とっさの判断で身体に魔力を送ったおかげだ。流さなければ炭化して、なんらかの衝撃波で砕け散ってしまうだろう。


 壁にぶつかる前に着地すると、バランスを崩さないように脚を踏ん張る。


 耳から金髪男が響かせていた音楽が止まる。――顔を上げると金髪男は楽器の演奏を止めて、気持ちのよさげな顔で汗をかいていた。


「結構、ヤンじゃねェエ~かァ! オーディィイ~! じゃァ、ピックチェ~ンジ!」

 金髪男は歌うようにそう言うと、持っていたピックというものをポケットに入れ、何やら探り始める。

 私のことをオーディって呼んできたのが気になる。オーディって名前じゃないのに。

 そう思っていると、金髪男はポケットから何かを取り出す。

 見た目はさっきのピックとそれ程変わらない。ただ、さっきのものよりかは重厚そうな重みのある色に変わっている。


「聴いてくれ……シビれてくれッ! 【電弦琴(エレギターラ)()三雷撃(トライアングラー)】!」

 音が太くなった……!?

 そう思った時には既に遅く――一筋の雷光がギザリと鋸刃を描くように私に向かってくる。


「どうだ……? これを食らえば、流石に出来るオーディでも一溜まりもなァ~いィ~」


 見渡せばニヤが綺麗にしただろう〈ニヤの尻尾〉の内装が雷光のせいで、壁や床が黒焦げてしまっている。

 出来るならば、魔力を無力化させた上でここから外に出したい。

 出来るだけ〈ニヤの尻尾〉を無傷な状態にしたい。

 そう思うと、私の心の奥の底から魔力が溢れ出てくる。


 これはエンデと対峙した時と似た魔力。

 ニヤリ。自然と頬がゆるむ。

 この魔力なら()()に行ける!


「残念だがオーディという名前じゃないし、まだ、全力を出していない!」

「なら、最初っから全力を見せろよ」


 金髪男の煽りなんて気にしない。意識を集中させてキリエから溢れ出る魔力を心臓に送り込む。

 気持ちを落ち着けて、目をつぶる。

 肩の力を抜き、旋風刃を鞘に収める。


 雷光に当たる寸前で、

 「――――発動! 風よ! 身に纏え!」

 目を見開き、心臓から魔力を爆発させるように身体に送る。すると、魔力が身体から放出され、荒れ狂う風となって雷光をかき消した。


「なっ、ナニィィイ~!」


 ヴェールは確かに言っていた。『瞬間的な魔力は凄まじく出ると思った』と。

 私はこの金髪男と戦いながらも修行を思い出していた。

 どうしたら、安定して魔力を出していられるか考えながら戦っていたが、その考えが私の動きを鈍らせていたようだ。


 また、ヴェールと共に特訓して出来るようになればいい。

 私が出来ることを活かして今を守り抜く!


 そう思えば、右手を旋風刃に添える。

 息を深く吐いて、刃区(はまち)に魔力を集中させて、一気に圧縮させる。

「【旋風――――空風(からかぜ)斬り】!」


 鞘から旋風刃を抜刀――――投げ飛ばすイメージで真横に斬りさく!


「なっ、何が起きた……!? 一瞬過ぎて分からねェ……」


 私は旋風刃を鞘に納刀すると、金髪男の楽器型魔具6本の弦が斬れる。

 成功――今まで魔力そのものを飛ばしたことがなかったが、やってみたら案外出来ることに驚く。


「これで魔術が発動できないな!」

 私は勝ちを確信した。

 後はこの金髪男を〈ニヤの尻尾〉から離すだけ。


 金髪男に向かって走りに行く。


「オーディ! まだ、終わっちゃいねェ! クラウン! 雨を降らせろ!」

『合点承知の助! 水魔じゅ……ヴォエッ!』


 もう1人の声が金髪男の魔術書(アルバ)超しに聞こえるが、最後、まるで溺れるかのような声。


「おいッ! どうしたッ! クラウン! 応答しろッ!」

「――お前の相手はキリエだ!」

 金髪男の背後に回ると、右脚に魔力を集中させる。


「発動! 【旋風刃脚(せんぷうじんきゃく)】!」

「ゲフゥ!」

 風を身に纏った右脚で思いっきり金髪男を外へ蹴り飛ばした。


〈キャラプロフィール〉

・エレトロ・サンドラ

歳:18歳

身長:184cm

魔具:【電弦琴エレギターラ】

将来の夢:日本に異世界転移してロックミュージシャンというものになること。


〈雑記〉

更新三日前、誕生日でした!

いつもありがとう……! 俺の身体……(涙)

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