雑談 ――トリップ・トーキング――
「扉の奥、やけに長いな。いつ、着く……?」
「キリエン! キリエン! じゃーん! シャッキーン!」
ヴェールが自己を主張するようなポーズを取る。
すると、身体全身が虹色に眩しく光った。
先が暗くて分からないから、極光の力を持つ魔力で道を照らそうとしてくれたのだろう。
しかし、
「眩しい、やめてくれ」
強烈。凄まじい極光。
全身が虹色に輝きすぎて目がチカチカするどころか、このままだと失明してしまう。
「なんじゃ、暗いところでしか出来ない我、渾身のジョークなのに……」
しゅん。彼女はテンションを落としながらそう言うと、身体全身に集中させた魔力を左手に移す。
「ありがとう。これで安心して下りられる。階段を踏み外して落ちて死ぬのは嫌だからな」
「そりゃあそうじゃ! 我だって階段から転げ落ちて死にとうない! あっ、我、その気になれば浮けるわ!」
あっはっはっと豪快に笑うヴェール。
いつ階段下りが終わるかも分からない中、彼女との会話だけが私の気を紛らわしていた。
「ヴェールの極光魔術、出逢うまで聞いたことも見たこともなかった」
この機会に聞いてみる。
私はムシャノ村で魔術教科書なるものを熱心に見ていたが、光魔術はあっても極光魔術があることは書いてなかった。
だから、初めて極光魔術を見た時に興奮したし、興味を持った。
「そもそも、この世界で我しか持たない魔力じゃからな!」
ヴェールが元気よく笑顔で答えた。
「光魔術の上なのか?」
「う~ん……分かんない! いつの間にかこうなっていたから!」
「それは、異世界に転移したことがあるから……? 前、風呂場でキリエに異世界転移者だと告げた」
私がそう言った時、ヴェールの顔が曇った。どうやら、今の質問は地雷だったらしい。
「すまない、今の質問はなかっ――」
「――もしかすると、我はキリエの世界に行ったことがある」
「えっ……?」
驚いた。私が生まれた前の世界のことなんて忘れようと思っていたのに、ヴェールは行ったことがあるなんて。
「母の研究ではこの世界を一次世界、キリエがいた世界を四次世界と言ってたのかな?」
「凄いな、呼び名まであるのか」
「当てにならない記憶。まだ、幼い頃じゃからなぁ……」
ヴェールは遠い空を見るように上を見上げる。何かを懐かし気に思い出しているようで、――――見ていて心が悲しかった。
「キリエンは元の世界に戻りたいと思うか……?」
ヴェールの口から思ったこともない質問が飛んできた。
元の世界に戻りたいと思ったことは一度もないが、またおばあちゃんに会いたいと思うし、空気を思いっきり吸って風と触れ合いたいと思う。
でも、
「分からない。ちゃんと亡くなったムシャノ村のみんなの分までエンデに復讐しないと、今は考えられない」
ヴェールに悪いが私にはこの一言しか浮かばなかった。
「なら、尚更、強くならないとな!」
彼女が笑顔でそう言うと、目の前に人が丁度入れるくらいの扉が現れて思いっきり開けた。
「眩しい!」
目に光が入ってくる。あまりにも突然だったから目を守るようにして右手で顔を覆う。
少しずつ目に光を慣れさせるため、少しずつ右手をどかすと、
「さて、着いたぞ! ここが修行場! |四次世界〈フォルト・〉|図書室〈ライブラリー〉!」
無数のこの世界の言語ではない本がずらりと並ぶ。
1000冊……? 10000冊……? 100000冊? ――――これよりもきっと多い。数えるだけ無駄だ。
「全部で約3000万冊じゃろうか……? よく、ここまで集めたな」
よく見ると、『ももざぶろう』、『きんじろう』、『うらいちろう』のタイトルが並んで見えた。
懐かしい。キリエが幼い頃、よく楽しんで読んでいた。
――ん……?
疑問に思うが、何故、私いた世界の本がある。
この世界の本屋に行くことは何度もあった。
しかし、私の世界の本が置いてあるところを一度も見たことがなかった。
――まさか、この場所で修行をするというのか……?
「四次世界の本を集めたこの世界にとって禁書の図書室……――今からキリエンの中の虚無粒子をこの空間で目覚めさせる!」
平成30年時点で国会国立図書館の蔵書数って4418万平成30年時点で国会国立図書館の蔵書数って4418万7016点あるんですね……。
スゲー! 一生、かかっても読めねェじゃん!




