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異世界転移ノ魔術師々  作者: 両翼視前
第一襲 独捨仲入編
2/85

ギルド管理協会の受付嬢 ――ゼネ・コントル――


「ありがとうございます! ありがとうございます! このお礼をどうしたらいいか……!」

「これが(キリエ)の仕事です。そんなに謝らないでください」

「ねぇ、おかあさん? なんであやまってんの~?」

 被害にあった少女を魔術王都(まじゅつおうと)マナ・リアのギルド管理協会(かんりきょうかい)に連れて来る。

 無事(ぶじ)に少女のママに引き渡せてよかったが……、さっきから心臓がぞわぞわとした。


 理由は一つ――朝のギルド管理協会は思っていた以上に人がいた。


 私は大勢の人たちを見ると、この世界に来る前の……嫌な記憶が蘇ってしまう。

 それはもう嫌な記憶だ。キリエが人の形であることに疑問を持つくらいに。

 異世界転移してムシャノ村の人たちと出会って人格が明るくなったと思った。


 しかし、依頼で初めて見る人たちと関わることに極度のストレスを感じていた。

 まともに顔が見れないのだ。


 だから、私は人間が嫌いだ。例え、この世界が元いた世界と違うのだとしても――私は……独りでいることが何よりも楽だった。


「お礼は管理協会の方に渡しました。本当にありがとうございました!」

「おねぇちゃん、またね~!」


 もしかすると、もしかしなくても、キリエは引きつった作り笑いをしているかもしれない。


 あぁ、未だに心は空っぽだ。人の平和は守りたいけど笑顔なんて――。

「依頼お疲れ様です。こんな明るい朝に珍しいですね」


 いつの間にか私の隣に満面の笑みを浮かべて少女に手を降っているギルド管理協会の受付嬢ゼネ・コントルがいた。


 ゼネ・コントル――ギルド管理協会の中でも黒三ツ星クラスでとにかく偉い役職の人。どういうわけか私の実力を買ってでて、専属の依頼紹介人となった。


「少女のためだ。真夜中に帰すのは悪い」

「なんだかんだ言ってキリエさんはやさしいですよね~! どうして、いつもぶっきらぼうなんですか~!」

 ゼネはそう言いながらほっぺをツンツンしてくる。やめてほしかった。

「嫌いだ、ゼネなんて」

「またまた~! 私の妹にしたいぐらい好きなんですからもっと仲良くしましょ? ね……?」

「――嫌だ! 断る!」

「え~!」

 ゼネの艶やかな金髪が揺れるに揺れる。私にも髪の毛が当たって迷惑だと言いたいが……、言葉にするとまためんどくさい。

 「はぁ……」っと深いため息を吐いた。

「どうでした? 暗殺任務は?」

 ゼネは曇りのない笑顔で聞いてくる。


魔術書(アルバ)……」

 何を話せばいいか考え、咄嗟の判断で魔術書を出現させる。

「生首……みたいか……?」

 私が男の生首を取り出した瞬間、――ブオンッと空間が消し飛んだかのような音がした。


 気がつけば私が持っていた生首が消えていた。


「また人がいない時に伺いますね! ちょっとグロッキーなので」

 ゼネはにっこりと笑顔で言う。彼女のことだから消えた生首は依頼完了(いらいかんりょう)証拠として瞬時に回収したのだろう。


「それにしても凄いですね! これまでいろんな暗殺者に依頼してきましたが、生首を持って帰ってくる人たちは初めてですよ!」

「殺した相手はしっかり首を切り取って依頼者には見せるとムシャノ村から習った」

「わぁ~、凄い! 凄すぎます! そんな村があるんですね! やっば~!」


 ゼネの大袈裟な身振り手振りを見て、ため息を吐く。


「生き残りは私、独り……しかいないからな……」

 私は懐かしむように口で吐いた。そうさせた犯人を憎むように。


 するとゼネが、

「そんな、キリエさんは独りじゃないです! 私がいるじゃないですかっ! カッコ可愛い女性だぁ~い好き! さぁ、友達になりましょう? ね~!」

 思いっきり抱きついてくる。


「離れてくれ! 暑苦しい!」

「嫌です! ちゃんとキリエさんのことをもっともっ~と知りたいですから!」

「知らなくていいっ!」


 ふと、思い出す。

 あの眼鏡が初めてギルドの手伝いをしに行って来い! っと言ってきた。


 生きるために金が欲しいからしょうがなく引き受けたが、私はどういうギルドか知らない。

 事前調査(したしらべ)をしようとゼネに名前を聞こうとすると、笑顔で眼鏡を光らせて『当日まで秘密ですよ!』と言ってはぐらかされてしまう。

 別の日に地図を持ってギルドの場所を教えてくれと聞いても、彼女は紙喰いヤギを召喚して地図を奪い『行先の地図は紙喰いヤギに全部食べられてしまいました! てへっ!』と言って食べられてしまった。


 ――明らかに最後の『てへっ』は余分だ。絶対に。

 もう絶対に朝、行くのはやめようと心に誓おうと思う。


「そうそう、今日こそ行きますよ!」

 突然、ゼネが話を切り替えてくると手を繋がられる。

「何処に?」

 私がそう尋ねると、眼鏡をくいっと右人差し指で動かせて、

「以前、キリエさんに依頼したギルド〈デイ・ブレイク〉にですよ!|魔術書!」

 魔術書を出現させた。


転移(てんい)魔術! 対象(たいしょう)〈デイ・ブレイク〉へ!」


 彼女が転移魔術を発動すると、星々が輝く夜空のような深く暗い空間が創り出された。


「手を離さずについてきてくださいね! じゃないと、星の藻屑(スターダスト)になってしまいますから!」


 先も分からない空間へゼネに引っ張られるように私は走った。



【プロフィール】


ゼネ・コントル


性別:女性

年齢:28歳

血液型:B型

身長:172cm

体重:56kg

誕生日:9月12日

(※現実世界計算)

所属:ギルド管理協会

階級:黒三ツ星級受付嬢

使える魔術:転移魔術(てんいまじゅつ)天魔術(あまつまじゅつ)

好きなもの:女性(特にヴェール・クリスタ)、お姉ちゃんと呼ばれること、眼鏡、ラァメン(現実世界で言うラーメンみたいなもの)

嫌いなもの:男性(過去に裏切られたから)


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